グレード1(最低品質)の肉を食べたら飼い猫が……
先日、ドイツのスーパーで飼い猫用の牛肉を購入する際、急いでいたため、普段は決して手を出さないグレード1(最低品質)の肉を掴んでしまいました。
ドイツでは、その畜産動物が育った飼育環境がパッケージに4段階で表示されているのですが、このグレード1の肉を与えた我が家の愛猫は、なんとすべて嘔吐……! 因果関係は推測の域を出ないものの、この件をSNSに掲載したところ思わぬ反響があったため、これを機にドイツの「食肉認証ラベル」について調査してみることにしました。
ヨーロッパを席巻する「食肉スキャンダル」
文献を読みあさったところ、1919年には既にドイツのハンブルクで、廃棄肉がゼリー肉に加工販売されていた事件が記録されていました。大きなものでは、2009年の「26年物の古肉販売事件」、2013年に発生した、食用禁止の医薬品を投与された競走馬肉が、ヨーロッパ中で牛肉として売買されていた「汚染馬肉偽装事件」、2019年にポーランド産の病気の食肉牛が欧州全体に流通していた「病牛肉事件」などを筆頭に、食肉スキャンダルは枚挙にいとまがない様子です。
飼育レベル表示の始まり
そこで事態を重く見たドイツの大手チェーンスーパー8社が、食肉の透明性を開示し、疑心暗鬼になった消費者の信頼を挽回すべく、2019年より統一規格として導入したのが、“Haltungsformsiegel“(飼育形態認証ラベル)の始まりです。このラベルは牛・豚・鶏・七面鳥などに適用されており、例えば牛肉の規格を一部抜粋すると以下の通り。
例えば、ドイツでもっとも厳しい基準で育てられるオーガニック肉などは、自動的に最高ランクとなりますが、グレード4の条件に加えて、飼料・寝床のワラ・牧草などすべてがオーガニックであることが義務付けられます。そして外の牧草地で歩き回って運動できる理想的な環境で飼育されるためか、このランクの肉は臭みがなくて味わい深いものです。
対するグレード1では、往々にして動物たちが屠殺の瞬間まで狭い檻内につなぎ留められているという過酷なものです。自らの状況を鑑みても、着座姿勢で一日パソコンに向かうだけでも全身が硬直し、蝕まれていく感覚が拭えませんので、生涯身動きもままならない畜産動物たちの辛さや病的な生活環境は、想像を絶するものでしょう。
命を捧げてくれている動物たちには大変申し訳ないですが、消費者側としてはやはり、新鮮な空気と太陽を愉しんで、元気に駆け回っていた動物の肉のほうが安心感があります。
自分が食べたい品質の肉を選べるのは、消費者にとっては大きな安心事項ですし、ドイツの認証ラベルは大変画期的なシステムだと思われます。こうした「目で見てわかる」明確な規格が設けられると、必然的に劣悪環境で育った肉は淘汰されていくでしょうし、消費者である人間のためにも、命を捧げる畜産動物たちのためにも、早く多くの国で導入されることを願います。