日本における韓国ドラマの盛り上がりは周知のとおりだが、韓国でも楽しまれている日本のドラマは少なくない。ユーチューバーによる日本ドラマ評を観たり、ツイッターの投稿を読んだり、韓国の知り合いに話を聞くと新しい発見がいくつもあってなかなか興味深い。こういう見方、楽しみ方もあるのだと観る楽しみの広がりを感じる。
みんなで盛り上がれる! わかりやすい勧善懲悪の世界は国境を越える
韓国ドラマというとキュートなラブコメやスリリングなアクションドラマの印象が強いが『梨泰院(イテウォン)クラス』のようにリベンジをテーマにした作品も常に人気がある。『半沢直樹』は韓国でも親しみやすいドラマだったと考えられる。
ドラマの放映時間も放映期間も長い韓国ドラマに比べ、こんなに濃厚かつスピーディーに展開しながら人間ドラマを凝縮されている作品は新鮮なのだろう。集中力が途切れることはなく「次はどうなる」の想いが最高潮のまま見続けられる。
大きい表情や歌舞伎を意識した演出がおもしろいから好きということだけではなく、実力派の俳優陣の演技や物語の展開、vs.巨悪の構図など、ドラマの核心を理解したうえで「おもしろい」と支持されていて、素直にうれしいと感じている。
食への好奇心は万国共通
韓国における『深夜食堂』と『孤独のグルメ』の反響も非常にうれしい。翻訳されたマンガ『深夜食堂』も大ヒットしている。ドラマで紹介されるた料理は、和食というより日本の家庭料理という地位を確立し、料理そのものを作ってみたという視聴者も多いと聞くとなんだか誇らしい。もちろん小林薫演じる主人公の人情味あふれるマスター(店主)と客人たちのやりとりも人気の理由だ。
season7で韓国へ出張した『孤独のグルメ』の韓国ロケは大いに盛り上がったことも記憶に新しいが、韓国でひとりごはん、ひとり酒が広まったことは興味深い。松重豊が演じる主人公の井之頭五郎が食べるときの、料理の深掘り、「おいしい」を表現する豊かなことばも視聴者の心をとらえて、韓国でもほっこりしてもらえたと思うと、こちらも癒される。文化交流の一面を感じて、海外ドラマを観ることの豊かさを感じる。
スパイスが効いたラブコメは海を越えてムズキュン
韓国で俳優として活躍していた大谷亮平の登場もあって『逃げるは恥だが役に立つ』は韓国でも大人気となった。ユーモアあふれる恋愛模様に加え、作品が描く女性の労働環境といった社会問題や韓国にも実在するプロの独身など、共感できるモチーフが明るく描写されたことも魅力だったと言える。
結婚観を模索する気持ちも理解しやすかったようだ。ドキドキワクワクする気持ちは、日本も韓国も同じで、その気持ちを共有できる世の中になったことで、ドラマの新しい価値を改めて感じる。
『最高の離婚』や『のだめカンタービレ』といった韓国でリメイクされた恋物語も大人気だ。どの作品も恋心に振り回されながら、どう生きるかを登場人物たちが自分らしく考え、笑いを交えながらも丁寧に描かれていることも、視聴者に支持される理由と言えそうだ。人生の悩みや迷いもまた、世界共通なのだろう。
日韓リメイクドラマ 見比べる楽しみと発信する楽しみと
韓国で大人気の坂口健太郎が演じた、韓国ドラマの日本版『シグナル 長期未解決事件捜査班』も、韓国で注目された1作。『未満警察 ミッドナイトランナー』『TWO WEEKS』『サイン -法医学者 柚木貴志の事件ー』などサスペンス色の強い作品のリメイクが目立っているが、背中をゾクゾクさせる空気のつくり方が韓国ドラマはうまい。息をのむ結末も、韓国らしく人間の深い部分を鋭く刺してくる。
日本でドラマ化したくなる気持ちも理解できるし、日本でのリメイク版を観たいと思う韓国視聴者の気持ちも理解できる。また、オリジナルとリメイク版を見比べて、Twitterやユーチューブで感想を発信している人も多く、そこで生まれる交流も新鮮だ。
『HOPE~期待ゼロの新入社員~』や『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』『銭の戦争』といった個性的な作品も韓国ドラマと知り、改めてドラマづくりの妙を感じる。
『101回目のプロポーズ』や『白い巨塔』が韓国でリメイクされたことを考えると、ここ最近目立っているわけではないが、視聴者の反応がタイムリーに共有できることで、ドラマの国境はさらになくなってきた。
また、日本のドラマが韓国で人気だと聞くと、その作品をもう一度見て、そのおもしろさを確認したくなるから不思議だ。新しい発見もありそうである。いまや、オリジナル版とリメイク版、両方を楽しめる世の中。この冬が楽しみになってきた。