森保監督の目標は「W杯ベスト8以上」

写真:徳原隆元/アフロ

2018年6月から7月にかけて開催されたロシアW杯で、日本代表はベスト16入りを果たした。大会後に森保一(もりやす はじめ)監督が就任し、チームは新たなスタートを切った。

J1リーグのサンフレッチェ広島を3度のリーグ優勝へ導いた指揮官は、22年のカタールW杯で「過去最高のベスト8以上の成績を目ざす」とし、最初の命題として世代交代を掲げる。長く代表の中軸を担ってきた本田圭佑や香川真司に代わって、ロシアW杯出場を逃した南野拓実や中島翔哉らを積極的に起用し、自身が兼任する東京五輪世代(※下記参照)から堂安律、冨安健洋、久保建英らを吸い上げていく。

11月17日に行なわれたメキシコとのテストマッチの先発メンバーで、ロシアW杯のピッチに立ったのはDF吉田麻也、酒井宏樹、MF柴崎岳、遠藤航、原口元気の5人だった。遠藤はロシアW杯で出場機会がなかったため、2年前から先発が7人入れ替わっていたことになる。世代交代のスピード感は悪くない、と言っていい。

※男子サッカーの五輪競技は、W杯との差別化をはかるために開催時に23歳以下の選手に出場資格がある。東京五輪については20年時の23歳以下が出場できるものとなった。また、出場チームは24歳以上の選手(オーバーエイジ)を3人まで登録することができる。


 

簡単には縮まらない”世界トップとの距離”

その一方で、“世界のトップ・オブ・トップとの距離”は、なかなか詰まっていない。

FIFA(フィファ/国際サッカー連盟)ランキング11位のメキシコとの一戦は、0対2の敗戦に終わった。前半のチャンスを逃して先制できず、後半に押し返されて失点を重ね、そのまま逃げ切られてしまった。

先制できていれば結果は違っていたかもしれない。今回は招集外だったエースFWの大迫勇也がいれば、チャンスを生かせていたかもしれない。

とはいえ、「if」を慰めにしていたら進歩はない。メキシコはワンチャンスを生かしたが、日本は生かせなかった。そこから見えてくるのは、世界のトップ・オブ・トップで通用するFWがいないという現実である。

日本人選手がヨーロッパのクラブでプレーするのは、もはや驚くべき事実ではない。吉田と冨安はイタリア1部で、酒井はフランス1部のチームでレギュラー格の働きをしている。22歳の冨安は、ビッグクラブへの移籍も噂される。それだけ評価されている、ということだ。遠藤は初挑戦のドイツ1部で、チームの中心となっている。
 

5大リーグで結果を残しているFWがいない

攻撃的なポジションの選手はどうか。

ヨーロッパで5大リーグと呼ばれるイングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスのクラブでプレーし、所属クラブで定位置をつかんでいる選手となると、鎌田大地(フランクフルト/ドイツ)ぐらいしかいないのだ。南野はイングランドの名門リバプールで、久保はスペイン1部のビジャレアルに在籍しているが、どちらも途中出場が多い。さらに言えば、鎌田も、南野も、久保も、純粋なストライカーではない。海外でプレーする選手は増えているが、5大リーグで点取り屋として結果を残している選手は、現在の日本代表には見当たらないのだ。

メキシコ戦に出場していない大迫は、ドイツ1部のブレーメンに所属している。ただ、リーグ戦で2ケタ得点をマークしたことは一度もない。「ケガさえなければもっと得点できた」というシーズンもあったが、日本が敗れたメキシコのFWには見劣りしてしまう。

日本戦で先制点をあげたラウル・ヒメネスは、イングランド1部で2ケタ得点を2度記録している。また、日本戦で2点目を記録したイルビング・ロサノは、オランダで結果を残してイタリアの強豪ナポリへステップアップした。

日本が世界のトップ・オブ・トップと伍していくには、ヨーロッパ5大リーグでコンスタントに得点できているFWが欲しい。それもひとりではなく複数人がそのレベルに到達することで、W杯のベスト8入りが見えてくる。日本に決定力の差を見せつけたメキシコでさえも、W杯ではベスト16の壁を長く乗り越えていないのだ。

日本サッカーのここまでの歩みが、間違っているわけではない。現在の日本人選手は、オランダ、ベルギー、ポルトガル、オーストリア、スイスといったリーグで結果を残せるレベルに達している。W杯出場が悲願だった当時に比べれば、それだけでも十分な進歩である。

これまで同様に海外でプレーできるレベルの選手を育て、ヨーロッパへ送り込み、一人ひとりの選手が自分を磨いていく。クラブという日常でいかに選手が鍛えられているのかが、代表チームのパフォーマンスとして映し出されていくのである。