現役最高峰のクローザーもあと5セーブ届かず
8月31日、阪神の藤川球児が今季限りでの現役引退を発表。かつては火の玉ストレートと称された直球を武器に球界最強のクローザーに君臨した豪腕投手も今季は打ち込まれるシーンが目立ち、11試合に登板して1勝3敗2セーブ、防御率7.20という散々な成績に終わりました。
さて、そんな藤川が今季目指していたのが名球会入りの条件である通算250セーブ。今季開幕前の段階で日米通算243セーブを記録し、残り7セーブで大記録達成となるだけに注目されていましたが、結果的には2セーブを上乗せするのが精一杯ということに。藤川の引退により、プロ野球史上最高の世代とも称された松坂世代から名球会入り選手の誕生はお預けとなりました。
さて、藤川でさえも達成できなかった通算250セーブ。そもそもプロ野球史上通算200セーブ以上を達成した投手ですら公式記録で導入された1974年以降でたったの6人だけ。150セーブ以上に広げても15人しかいません。それだけに藤川の通算245セーブは素晴らしい大記録な一方、あと5セーブと考えればややもったいないという声も上がりました。
では、通算250セーブを挙げられた投手とそうでない投手では何が違ったのでしょうか?
積み上げ系の記録ながら、大卒・社会人卒が有利?
調べてみたのは日米通算200セーブ以上を達成した6選手の各データ。藤川球児、サファテは2020年9月27日現在の成績となっています。
▼通算200セーブ以上の選手たち
選手名 | 球団 | 通算セーブ記録 | 球歴 | プロ年数 |
---|---|---|---|---|
岩瀬仁紀 | 中日 | 407 | 愛知大→NTT東海 | 20年 |
高津臣吾 | ヤクルト | 286 | 亜細亜大 | 17年 |
佐々木主浩 | 横浜 | 252 | 東北福祉大 | 16年 |
藤川球児 | 阪神 | 245 | 高知商 | 22年 |
サファテ | ソフトバンク | 234 | 助っ人外国人 | 7年 |
小林雅英 | オリックス | 228 | 日体大→東京ガス | 13年 |
通算250セーブを記録した3選手はもちろん、日本人選手5名中4名が大卒、社会人卒というところに気がつきます。プロのキャリアが長ければ長いほど有利なはずの積み上げ系の記録でありながら、高卒選手よりも4年以上プロ入りが遅い大卒、社会人出身選手が上位に来ているというおもしろいデータが出ています。
ちなみに通算セーブ記録の上位20人中、高卒選手は藤川のほかに江夏豊、赤堀元之、松井祐樹と4選手だけ。大卒の選手が最多8名を占めていますが、プロ入り年数が最も遅くなる大学→社会人経由の選手でさえも5名と高卒選手を上回るところにセーブ記録のおもしろさがあります。
この現象の理由となっているのが、プロ入り時の起用法にあります。
高卒でプロ野球の世界にやってきた投手、それもドラフト上位で指名された投手は未来のエース候補として先発ローテーション入りを期待され、先発として起用されることがほとんど。実際に藤川球児もプロ入り直後は先発投手として期待され、リリーフ固定となる2004年までに14先発の成績が残っています。他にも江夏がリリーフで固定されたのは南海へ移籍後のことでしたし、赤堀もルーキー時代に先発経験があります。
高卒ながら1年目からクローザーとして起用された松井も今季は先発として起用されているように、やはり高卒投手には先発投手を務めて欲しいという想いが球団にはあるようです。ちなみにこの4選手のうち、赤堀以外はすべてドラフト1位指名。未来のエースとして指名された背景があるのがわかります。
一方、大卒、社会人出身の投手たちはプロ入り時点で即戦力として期待されていることがほとんどで1年目から一軍の舞台に立っていました。その中でチームの弱点となっていたブルペンを任されることが多く、中継ぎから実績を残してクローザーに昇格する例がほとんど。中には山崎康晃のようにルーキーイヤーからクローザーとして起用されるケースもあります。
1年目からバリバリ活躍できるかどうかが、セーブを量産するかどうかに密接に絡んでいる様子が伺えます。それだけに高卒選手が上位にランクインしづらい傾向があるのかもしれません。