日本人サッカー選手の海外移籍が激減

毎年6月から8月にかけて、サッカー界は移籍のニュースに沸く。夏開幕のヨーロッパ各国リーグに合わせて、国内でプレーする日本人選手が新天地を求めるのだ。

東京五輪が20年7月開幕予定だった昨夏は、久保建英がレアル・マドリード(スペイン)へ移籍するなど、20歳前後の選手が10人以上もヨーロッパへ旅立った。五輪の男子サッカーは開催時に23歳以下の選手に出場資格があり、東京五輪のメンバー入りをめざす若武者が続々と新たなチャレンジに乗り出した。

また、19年9月開幕のカタールW杯アジア予選を見据えて、日本代表入りや日本代表定着を目ざす中堅層の選手たちも海を渡った。

それがどうだろう。

今シーズン決定した契約は、8月19日時点で5人にとどまっている。

ひとり目は橋本拳人(26歳)だ。J1のFC東京で攻守のつなぎ役となるボランチを務め、日本代表に選ばれている彼は、昨シーズンのロシアリーグ5位のロストフへ移籍した。

橋本と同じFC東京に所属し、日本代表入りしている室屋成(26歳)は、ドイツ・ブンデスリーガ2部のハノーファーと3年契約を結んだ。ハノーファーには日本代表の僚友でもある原口元気(29歳)も在籍しており、日本人選手による共闘が実現する。室屋とともに16年のリオ五輪に出場した鈴木武蔵(26歳)は、ベルギー1部リーグのベールスホットの一員となった。今シーズン1部に昇格したクラブから、ヨーロッパでの第一歩を記す。

今シーズンからブンデスリーガ1部に昇格したウニオン・ベルリン入りには、横浜F・マリノスの遠藤渓太(22歳)が来年6月末までの期限付き移籍で入団した。スピード豊かなドリブルを武器とする彼のドイツ行きで、ブンデスリーガ1部でプレーする日本人選手は長谷部誠、鎌田大地(ともにフランクフルト)、大迫勇也(ブレーメン)、遠藤航(シュツットガルト)と合わせて5人となった。

J2リーグからヨーロッパへ向かった選手もいる。東京ヴェルディの藤本寛也(21歳)が、ポルトガル1部のジル・ヴィセンテへ期限付き移籍したである。19年に行なわれたU-20(20歳以下)W杯に出場した期待のレフティーだ。

新型コロナウイルスの影響がサッカー界にも

ヨーロッパのクラブから関心を寄せられる日本人選手が、減っているわけではない。むしろその逆だ。今シーズンはレアル・マドリードから同じスペインのビジャレアルへ期限付き移籍する久保建英(19歳)、イタリア1部リーグで評価を高めている冨安健洋(21歳、ボローニャ)らに刺激されるように、フレッシュな力がJ1、J2で台頭している。

問題はヨーロッパのクラブ側にある。

新型コロナウイルスの感染拡大により、ヨーロッパ各国リーグは昨シーズン途中での打ち切りや無観客での試合開催を強いられた。収入の大幅減に直面し、経営のスリム化が求められているなかで、新戦力の補強を見送るクラブは多い。

ヨーロッパ各国の有力クラブは、全世界にスカウト網を張り巡らせている。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限により、外国人スカウトが「生の情報」を集められない。国境をまたいだ移動制限が解かれない限りは、選手の移籍を後押しする情報がスムーズに流通しない状況が続くだろう。これもまた、日本人選手のヨーロッパ移籍を難しくする要因だ。

感染再拡大で帰国を選ぶ日本人選手も

経済活動の再開によって、新型コロナウイルスの感染が世界的に再拡大している。サッカー界も例外ではなく、日本人選手が所属するクラブでの感染も報告されている。

家族と一緒に現地で生活をしている選手たちにすれば、妻や子どもを感染から守ることは大きな関心事だ。自分がプレーしている国で感染が広がれば、帰国を選択する選手が出てくるかもしれない。

ヨーロッパ各国の夏の移籍期間は、通常なら8月末で閉じる。しかし今年は、新型コロナウイルスの影響を考慮して10月5日まで延長された。

Jリーグは8月28日で夏の移籍期間を閉じるが、今シーズンは10月2日から30日までを新たな登録機関とした。これにより、昨シーズンまでは8月末が期限だった選手の行き来が、10月まで可能になった。

ヨーロッパへ移籍する選手が増えるとは考えにくいが、ヨーロッパでプレーする選手の国内復帰はあるかもしれない。去就が注目されている選手、所属クラブで出場機会に恵まれていない選手の動向は、10月まで追跡していく必要がありそうだ。