右肩上がりで増加している日本のキャンプ人口。2018年には約850万人がオートキャンプ(車で乗り入れることができるキャンプサイトでのキャンプ)を楽しんだとされ、今年はコロナ禍の影響があるにもかかわらず、週末・夏休みは予約の埋まっているキャンプ場が多く見られます。
今回は、初めて出掛けたキャンプの場で、思わぬ失態をさらしてしまったというママのお話をお届け。はてさて、どんな“事件”が起こったのでしょうか。
男児ふたりを連れて、家族で山間のキャンプ場へ
「恥ずかしながら私は昔からアウトドアが得意ではなくて……息子たちにどうしてもとせがまれて、今年、初めてキャンプに行ったんです」
お話を聞かせてくださったのは、神奈川県在住の尾田万有美さん(仮名・37歳)。小学校6年生と2年生の、やんちゃ盛りのふたりの男の子を持つママです。長く続いたコロナ自粛生活の中で、子どもたちが「自粛が終わったらキャンプに行きたい!」と言い出し、ご主人もそれに賛成。6月中旬の土日を使い、キャンプに行くことになったのだとか。
「夫が選んだ、山梨県内にあるキャンプ場に行ったのですが、到着するなり子どもたちは大喜び。狂ったように叫びながら走り回っていました。さすがにこれはうるさいのでは?と思い、最初のうちは静かにするよう何度も言い聞かせていたのですが、子どもたちはヒートアップするばかり。夫がまったく気にしていないようだったので、アウトドアだし、これくらいなら問題ないのかも?と思い、以後は放っておいたんです」
しかし、それからしばらくして、万有美さんたち家族のテントサイトの隣でキャンプをしていた人から「子どもたちの声がうるさいから、もう少し静かにさせてほしい」との苦情が。子どもたちに改めて注意をしたものの止まらず、ついには反対隣にいた高齢ご夫婦の旦那さんから、「いい加減にしろよ! うるせぇんだよ!」と、大声で怒鳴られてしまったといいます。
「ああ、やっぱりうるさいですよね。そうですよね。アウトドアだからって、ここまではしゃがせちゃダメですよね、でもどうしよう……と、怒鳴られて私がパニックに陥っていると、夫が『うるせぇのはそっちだろーが! こっちは子連れなんだから大目に見ろよ!』と怒鳴り返したんです。それを聞いた瞬間、『え? この人、私たちが悪いのに何言ってるの? 頭おかしいの?』って、不思議なくらい冷静になりました」
隣の人に食ってかかろうとしているご主人を制止しようとした瞬間、先ほど「静かにしてほしい」と言ってきた家族のテントから、万有美さんの息子さんと同じ年くらいの男の子が近寄ってきたといいます。
小さな子供に、自分たちの非常識を指摘されて…
「何をするつもりなのかしら?と思って見ていると、その子はトコトコ走って夫に近づき、こう言ったんです。『あのね、おじさん。僕らくらいの年齢になったら、うるさくして誰かに迷惑をかけているってことくらい簡単に理解できるし、普通に静かにできるんだよ?』って。それを聞いた瞬間、もう、恥ずかしくて恥ずかしくて、その場に穴を掘って、飛び込みたくなりました」
大騒ぎをしていた子どもたちも、その子の言葉にハッとしたのか「うるさくしちゃってごめんなさい」と双方の家族に謝り、その場は事なきを得たといいます。しかし、振り上げた拳の落としどころがつかめなかったのか、ご主人だけは最後までプリプリブツブツ。
「自分たち家族が周囲に迷惑をかけ、それについて批判を受けたのに、謝るよりも前に攻撃的になった夫を見て『ああ、私、ハズレ夫を選んじゃったのかも……』と、夫への愛情が薄れたのを感じました。自分たちの非を素直に認められないなんて、親としてはもちろん、ヒトとして最低だと思うんですよね。
しかも、キャンプから帰ってきてからも、あのときのことについてブツブツネチネチ。なんだかなぁ……って、今は夫の顔を見るのもイヤになってしまっています。もちろん、いくら初めてのキャンプだったからといって、子どもをきちんと管理できなかった自分自身についても反省しました。できれば二度とキャンプには行きたくないのですが、息子たちはとても楽しかったようで、また行きたいと声を揃えておねだりしてくるので困っています」
キャンプ場は多くの人が集まる場所。他人に迷惑をかけないよう、大きな声を出さない、就寝時間は守る、といったマナーの徹底が求められます。そのことに気付けただけでも、万有美さんにとっては良かったことだと思いたいものですが――残念ながら夫婦の絆は、悪化の一途をたどることになってしまったようです。