誰もが口ずさみたくなる主題歌は社会を楽しくする
気が付くとジャニーズが歌うドラマの主題歌を口ずさんでいることは少なくない。エンディングを聴いて、こらえていた涙があふれてきたり、さぁ明日もガンバロウという気持ちになったり、前を向ける歌詞や歌いやすいメロディーは誰にとっても心地いいものだ。彼らが歌う主題歌はなぜみんなに愛されるのだろう。
まず彼らがエンターテインメントをプロとして理解しているところに、その理由がありそうだ。「みんなを楽しませたい」「みんなに届けたい」と言うことは簡単だが、パフォーマーとしての自分スタイルとみんなのニーズが合致しないこともあり、広い視野と柔軟性は必要だ。みんなの「聴きたい」に応える彼らは、楽曲を確実に自分のものにしながら作品を昇華させるプロとしてのスキルも高いのだろう。『青春アミーゴ』はおじさんたちも歌って楽しそうだった。
主題歌にはドラマで表現される世界との融合性が求められるが、演じることが多い彼らが歌うと、主題歌がドラマの世界にうまく溶け込む。主題歌とドラマを結ぶことも彼らは非常にうまいのだ。主題歌だけでも楽しいが、ドラマの世界があってさらに輝いているようだ。
歌は心ということばがあるが、彼らは小手先の「うまく聴こえる技術」を駆使しない。少し粗削りになったとしても、等身大で心をこめて歌う。先走りせず、ひとと歌をシンプルにつなぎ「みんなで歌う」を実現している。
関ジャニ∞の『友よ』に5人の新しい可能性が∞に広がる
関ジャニ∞が歌う『俺の話は長い』の主題歌『友よ』は熱い。大切な誰かのために歌う歌詞は泣けるし、5人のド直球の歌唱も気持ちいい。しかし力任せに振り絞るばかりではない。熱量に圧倒されながらも粗削りではなくていねいで、だからいつまでも聴いていたくなる。楽器が奏でる音の厚さに頼ることなく、それぞれの歌唱を前面に出しているところにも彼らの姿勢と実力がうかがえ心に響く。
全身全霊で歌い上げる歌は数多いが、自分だけが気持ちよくなってしまっては主題歌となり得ない。その匙加減を彼らは知っている。それは30代後半となかった彼らの深みであり強みだ。『俺の話は長い』の主人公・岸辺満(生田斗真)の生き方を映した『友よ』は5人のこれからをも予感させる名曲となった。
V6のメロウなハーモニーが時代を超えて心に響く
2006年にスタートした『警視庁捜査一課9係』と続編となる2018年スタートの『特捜9』の主題歌を担当しているV6だが、どの曲も口ずさみやすいメロディだ。事件の背景にある切ない人間ドラマをつつみこむ6人の優しいハーモニーがドラマの余韻に浸らせる。
ドラマや映画ではオリジナルのサウンドトラックのほかクラシックやジャズのナンバーを織り込んで世界観をつくりあげるが、V6の歌はどんなジャンルとも違和感なくまじり合うから不思議だ。たとえば『SP 警視庁警備部警護課第四係』では菅野祐悟の楽曲が生む躍動感と緊張感に満ちた予告編から、V6が歌うエンディング『way of life』に流れる美しさに感動したことを覚えている。メロディアスなバラードもアップテンポで爽快なナンバーも、V6らしいハーモニーで魅せ作品を彩ってきた。
KinKi Kidsだけが持つグルーヴ感と透明感に酔いしれる
研ぎ澄まされた感性が印象的なKinki Kidsはアイドルらしからぬ印象があるが、決して尖がった感覚が先行しているわけではない。一人でも多くの人に楽しんでほしいというエンタメへの想いと自分らしくの自然体のバランスが、ほかのグループとは違うカタチで浮かび上がる。だから愛されるのだろう。
久しぶりに『33分探偵』の『Secret Code』を聴きながら、もう何年も前からKinKi Kidsのグルーヴ感は生まれていたのだと改めて思った。『元カレ』の主題歌『薄荷キャンディー』の透明感もKinKi Kidsならではで素敵だが、このビート感もたまらない。ホーンセクションとの相性がいい。吐息までも音楽にしてしまうところも彼ららしい。その感性を過剰にすることなく聴き手を置き去りにしないからこそ、主題歌としても光るのだろう。
自然体で進化し続ける嵐に、心はいつも晴れていく
常に自然体で私たちを楽しませてくれるのが嵐だ。肩の力が抜けているように見えるが、エンターテインメントへの想いは骨太で、だからこそ第一線で活躍し続けているのだろう。
二宮和也と櫻井翔が高校生を演じた『山田太郎ものがたり』の『Happiness』や松本潤が主演した『花より男子』シリーズの『WISH』『Love so Sweet』『One Love』などで私たちを夢の世界へ誘ってくれた嵐が、今や『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ球児の野望~』や『先に生まれただけの僕』といった作品で教師を演じていることは感慨深いし、変わることなく『GUTS!』『Doors~勇気の軌跡~』と魅力あふれる主題歌を聴かせてくれることもすごいことだ。彼らのもつハツラツとはじける空気はそのままに、男子や中高年の人生も応援してくれる存在へと成長していることにも感動がある。彼らには学園ドラマがよく似合う。それは誰もが経験した青春を通して、乗り越えて前を向くこと、あきらめないこと、いろんな個性を受け入れて愛すことの大切さを大人として歌っているからだろう。
嵐ファンではない私が「クール!」と新鮮に感じ、毎日口ずさんだのは『貴族探偵』の主題歌『I'll be there』だ。スリリングで危うさを秘めた探偵の世界観が洗練をまとった主題歌は想い出の一曲となった。
思えば、主題歌は人生はまだまだ大丈夫だと自分に言いきかせるように口ずさむことが多い。そして口ずさむだけで心が晴れる。ジャニーズはやっぱり深いのである。