部室、トイレ、会議室…人はなぜ、イケナイ場所で“して”しまうのか

コロナ禍による自粛も少しずつ緩和され、僕の行きつけのカフェも営業を再開しました。ソーシャルディスタンスを確保するため、ひとつおきに席があけられていますが、隣からは、パッと見いずれも40代の4人組のかまびすしいおしゃべりが聞こえてきます。

コロナ禍による自粛も少しずつ緩和され、僕の行きつけのカフェも営業を再開しました。ソーシャルディスタンスを確保するため、ひとつおきに席があけられていますが、隣からはかまびすしいおしゃべりが聞こえてきます。

昼日中、“パッと見”40代のきわどい話題

マスクを顎にまわして笑いさざめく彼女たちは、パッと見いずれも40代。4人組で、気の置けない友人どうしなのか、まだ陽も高いのにきわどい話をしています(今は飲みに行けないし、Zoom飲みでは家族の耳が気になるとか)。
 

「私、六本木ヒルズのあのトイレ、行ったことあるわよぉ~!」

「私もある!!」
 

どうやら、いまださめやらぬ渡部健さんの“多目的トイレ不倫”を話題にしているようです。
 

「なんであんなとこでって……まぁ、若気の至りならわかるけどね」
 

ひとしきり渡部さんをこきおろしたあと、水色のTシャツを着た女性が切り出しました。なんでも、高校時代吹奏楽部だった彼女は、夏休みの練習中、片付け当番で居残った彼氏とつい部室でむにゃむにゃ……ということでした。
 

換気のためドアが開いているせいか、むんわりとした外気が入ってきます。アイスコーヒーの氷が溶けて、カラン!と音を立てました。
 

水色さんに触発されたのか、女性たちは次々と「実は私もこんな場所で……」と告白を始めました。白いサマーセーターの女性は「大学時代、教授の留守に先輩と研究室で」、黒地に水玉ワンピースの女性は「商談先の会社の会議室で、先方の担当者と」、カーキのオフショルダーブラウスの女性は、「合コンの帰り、公園のだれでもトイレで」、それぞれ愛の交歓をしたことがあるのだそうです(ちなみに、黒ワンピの女性のお相手は、のちに結婚した現在のご主人とのこと)。
 

彼女たちの言い分は、「たしかによくない場所だったけど、まだ若かったし、自分も相手も独身だったし」「無理矢理だったわけじゃないし」「セーフだよね!」ということのよう。ふむ。
 

トイレは“雑に扱われている”に等しい場所、なのか?

渡部さんの件では、「トイレなんかで雑に扱われて、相手の女性の気がしれない」という意見も多くあります。しかしながら、“好きな人とイケナイ場所でイケナイことをする”という背徳感は、性的にどうにも抗いがたい刺激があったのではないでしょうか?
 

いつもいつも“スリリングなこと”を求めてやまない人は、心理学的に“刺激欲求の強いタイプ”といえましょうが、このケースはそうではなく、恋心にブーストをかけられてタガが外れたように見えます。この4人の女性たちも、「私ったら、こんなところで……」という“非日常的な行為をしている自分”に少なからず酔っていたのでは。彼女たちのエピソードは、まぁ“恋人たちのやんちゃプレイ”とくくることもできましょう。
 

ところが不倫関係の場合、特に女性に“私たちって、こんな悪いコトしてる共犯者なんだ”という妙な優越感が芽生えてしまう可能性もありえます。
 

「軽く扱われてるんじゃない。私と彼は“共犯者”だから、奥さんとはわかちあえないスリルも、快感も共有している」のだと。そう思うことは、「もしかして、大事にされてないんじゃ?」という疑心を打ち消し、心を守ることにもつながります。
 

……気がつくと氷がなくなり、アイスコーヒーはすっかりぬるくなっています。くだんの女性たちは、“夫の悪口”へと話題を転換したようです。僕は盛り上がる彼女らをチラリと見て、席を立ちました。
 

それにしても……。
 

当たり前のはずの倫理観を吹っ飛ばすモノ

人は、恋にハマったり性欲におぼれると、“イケナイ場所でイケナイことをする”というダブルコンボをいともたやすくやってのけてしまうことがあります。そのとき、ふだんは当たり前のように持っている倫理観は、麻酔でも打たれたように眠ってしまうもの。恋や性は、それくらいやっかいなものなのだと思います。
 

「あれは若いときのこと」「私だったらあんなことはしない」と思っても、ふいに火がついてしまうことが、ないとは言えません。
 

常識的に見える女性たちにも、部室やトイレや会議室やらで濃密な時を過ごしたことがあったように、もしかしたらあなたにもそういう覚えがあるのではないですか? もし不倫関係で心当たりがある方は、自分の気持ちをごまかしてはいないか、よくたしかめてみるのがいいですよ。
 

あなたの心が大ケガをされないよう、心から祈っています。

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