ジャニーズという型を感じさせない演技で見せる
俳優として活躍するジャニーズ事務所所属のタレントは多いが、改めて作品を見てみると山下智久、生田斗真、松岡昌宏は異才を放っていると感じる。俳優としての「型」を持たないというか、個性豊かな人物に自身が持つオリジナリティを押し込むことをしないというか、不思議な心地よさで見せている。
おそらく3人は”内に秘めたるもの”を静かに強く見せることができる俳優で、それは私たちが勝手にイメージしている「アイドル」の様相とかけ離れているために、ハッとすることが多いのだろう。見方を改めないと、いいものを見逃してしまうと感じることも少なくない。さらに言うと「ジャニーズだから見ない」という感覚にとらわれてしまうと、せっかくのいい作品を観ないままになってしまい、それはなんとももったいない。
どんな風景にも溶け込んでしまう山下智久の透明感
今から20年前『池袋ウエストゲートパーク』を観たとき、絵が好きな水野俊司は彼にしか演じられないと感じたことを覚えている。運命に翻弄される役柄なのに、繊細さと大胆さを切なく絡めながらも、肩の力が抜けた自然な演技に驚いた。
あれから、山下智久は変わることなく、今も自然体だ。強い口調、勢い任せにすることもなく、全身全霊で身をよじることもないのに、彼の演技は心にしみる。大切なことはちゃんと届く。『コードブルー』シリーズでも『インハンド』でも『最高の人生の終り方~エンディングプランナー~』でも、それは同じだ。ちょっとすかした感じも、人との距離を縮めすぎないモノ言いも、鼻につかない演技で素敵だ。
どんな風景にあっても不自然さがないことも魅力である。ファンタジー色の強い『プロポーズ大作戦』もクールな『クロサギ』もラブストーリー『SUMMER NUDE』も、どの世界にも溶け込んでいる。黒も白もピンクも似合ってしまう、今なお何色にも染まらない彼は、今なお興味深い俳優である。
生田斗真が演じていることを忘れてしまう超演技
特徴的な声で魅了するということでもなく、独特の動きで印象づけることもしない、だからこそ何ものにでもなれる俳優なのだろう。髭と筋肉の御曹司・三島弥彦を熱演し『いだてん』という作品をグイグイと広げたかと思えば、『俺の話は長い』では、愛されるヘリクツ王・満を演じ、長い話をあきることなく聞かせてくれた。私たちを大いに笑わせてくれる個性派だ。
笑わせようとしているわけでもなく、ハンサムなのにかっこよく見せたい匂いもさせず、演じることに没頭している根っからの俳優なのだと感じている。目を背けたくなるような現実を躊躇なく見せた『脳男』も、やるせない現実をありありと見せた『予告犯』も、そこには鈴木一郎とゲイツがいるだけで、生田斗真を意識したことがない。きっと超演技というスペックを有した俳優なのだろう。次に何が飛び出すか、想像がつかない。
気骨なのに多彩、松岡昌宏だけが持つ表情は唯一無二
『家政夫のミタゾノ』傑作選の予告を観ながら、「傑作選!」の台詞ひとつに主人公の家政夫・三田園薫という人物を凝縮させる松岡昌宏のすごさに驚くばかりである。ちょっとマネをしてみたが、まったくコツがつかめず完敗だった。
『死役所』ではシ役所の職員をシュールに演じ無表情で視聴者を泣かせ、『大恋愛~僕を忘れる君と』では主人公を支える人間愛あふれる精神科医を好演、このところ改めてその演技力を痛感している。
何といっても、テレビドラマにおいて時代劇を見る機会が減っているなか、そのDNAをきちんと継いでいる数少ない俳優のひとりであることも忘れてはいけない。『必殺仕事人』シリーズでの佇まい、立ち回り、時折見せる含み笑い、時代劇の持つ粋といなせを表現できる希少な存在とも言えるだろう。ニヒルあり誠実ありの、松岡昌宏にしかできない表情がいい。寡黙なだけに怖さを感じさせるのも巧い。大いに期待している俳優のひとりである。
いよいよ連続ドラマもはじまる。3人のほかにもジャニーズのすごい俳優たちが活躍してくれるだろう。ぜひ楽しんでほしい。