金融機関では、返済期間の延長などの対応が始まっている
新型コロナウイルス感染症の影響がさまざまな場面で出てきています。休業などにより、収入が大幅に減少した世帯は少なくありません。貯蓄を取り崩すにしても数カ月続くとなると、生活自体が立ち行かなくなり、先行きに不安を感じている人も多いことでしょう。
家計費に占める割合でもっとも高いのは、住居費です。特に、住宅ローンの返済中の世帯は、毎月の返済だけではなく、ボーナス時の返済も不安になってきているかもしれません。
各金融機関では、住宅ローンの返済が困難になる利用者に対して、返済期間の延長といった対応を始めています。「フラット35」を利用している場合は、住宅金融支援機構が最長15年の延長に応じると発表していますので、返済に不安を感じたら、すぐに借入金融機関に相談することが、何よりも大事です。
返済期間の延長、返済額の減額、ボーナス返済の見直しなど返済方法の変更を
具体的に、どんな返済方法の見直しができるのか、「フラット35」の場合を見ていきましょう。
返済方法の見直しにあたっては、年収が年間総返済額の4倍以下、収入減少割合が20%以上といった条件があります。
▼返済特例
返済期間を最長15年延長することで、毎月の返済額を減らすことができます。最長3年、元金据置で利息のみ支払うという方法もあります。ただし、最終的な総返済額は増えますので、注意が必要です。延長した場合、完済時の年齢は80歳が上限です。
▼中ゆとり
一定期間の毎月返済額を減らすことができます。減額期間終了後は、毎月返済額が増加し、総返済額も増えます。勤務先にもよりますが、収入減が一時的なもので企業活動が再開されれば収入が元に戻る、というケースでは、期限を決めて返済額の減額という方法がいいでしょう。
▼ボーナス返済の見直し
「ボーナス返済分を減らし、毎月返済分を増やす」「ボーナス返済をやめ、毎月返済のみに組み直す」といったボーナス返済の対応も可能です。ただ、この場合、毎月返済額が増えますので、それに対応できるのか、という点には注意が必要です。
返済方法の見直しは、同時に組み合わせることもできますので、それぞれの家計状況に合わせて、どういう見直しが最適なのか、金融機関と十分相談するようにしてください。
収入が戻った、家計が改善したら、返済方法を再度見直すこと
3000万円を固定金利1.5%、毎月返済のみ(元利均等)、35年返済で借り入れ、2020年5月から返済が開始したケースで試算してみると、もともとの毎月返済額は約9万2000円、総返済額は約3858万円です。これを15年返済延長すると、毎月返済額は約7万1100円に減らすことができます。ただし、総返済額は約4266万円と、当初より、408万円増えることになります。
借入時の年齢にもよりますが、定年退職までには完済したいと考えて、住宅ローンを組む世帯が多く、15年延長となると、定年退職後も住宅ローンの返済が続くことになってしまいます。そうならないためには、家計が改善したら、返済方法を元に戻す、再度見直しをすることも、忘れないでほしいことです。
新型コロナウイルスがいつ終息するのか、収入はいつになれば元に戻るのかはわかりません。金融機関への相談が今後増えてくることも予想されます。審査にも一定の期間がかかりますから、本当に苦しくなってからではなく、早め早めに、相談をするようにしましょう。
【参考】住宅金融支援機構