感染したら加害者扱い?批判が怖くて息苦しい…「コロナ疲れ」の正体

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に終息の兆しが見えない中、日本でも「不要不急の外出自粛」や「学校の休校」など、未曾有の事態となっています。社会に閉塞感が漂う中、「コロナ疲れ」を訴える人が多くなっています。

漠然とした「疲れ」を感じる人々

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や休校など、これまで経験したことのない生活の変化を強いられ、多くの人が精神的な「疲れ」を感じています。「コロナ疲れ」や「コロナうつ」という言葉もよく聞かれるようになりました。

この、漠然としがちな「コロナ疲れ」を分析して、対処法を探ってみたいと思います。
 

1. 不安疲れ

新型コロナウイルスは感染力が強く、ある時点から急激に重症化するといわれています。ですから、「自分や家族が感染するのではないか」と心配するのは当然のことです。
 

さらに、症状の出ないコロナ感染もあり得るということなので「自分もすでに感染しているかもしれない」「無自覚に周囲に広げているのではないか」という不安を抱えてしまうのも、新型コロナの特徴でしょう。
 

この「自分が感染しているかどうか分らない」という不安は、健康診断後に追加された精密検査の結果を待っている時の心境に似ているように思います。
 

2. 批判疲れ

新型コロナは無症状の人からの感染が問題視されているため、無自覚な感染拡大の「加害者にならないようにしましょう」という言い方を時々目にします。
 

外出時にマスクをするなどして、感染を広げないよう気を配るのは大切なことですが、筆者はこの「加害者」という言い方は不適切だと感じています。感染者を「悪者」だとみなす考えが背後にあるように感じるからです。
 

そのような風潮の中、「自分が誰かにうつしてしまったらどうしよう」「職場に持ち込んでしまったらどうしよう」といった不安には、周りの人の健康を心配する気持ちと同時に「感染したら、自分の感染対策の落ち度について“加害者”として批判されるのではないか」という不安があるように思います。病気になった上に、世間から「悪者」「加害者」と責められてしまうのは、あまりに酷な話です。
 

批判をおそれる気持ちが強い人ほど、他人を批判しがちです。「自分はこれだけ気をつけているのに、自分と同じレベルで警戒していない人はけしからん」というわけです。
 

しかし、テレワークができない職種、満員電車での通勤を続けざるを得ない人もいるでしょうし、食料品などの買い物は生活に必要です。どれだけ気をつけていても、うつるときにはうつる……すべての人が「感染対策を100%徹底」することは不可能です。
 

「ほらみたことか」と言えるのは、その時点で、たまたま自分が感染していないから。誰にとっても「明日はわが身」なのだという想像力を持ち、相手を思いやれる社会にしていきたいものです。
 

一方で、したほうがよい批判もあります。
 

7都府県に緊急事態宣言が出され、休業要請や外出自粛による経済的な打撃を受けている人たちが増えるに伴い、休業補償やマスクの配布などの政策に対する批判が高まっています。こちらは「必要な批判」でしょう。なぜなら、多くの国民の「生きる権利」に関わる問題だからです。このような非常事態に適切に対処するために、私たちが納めてきた税金の使い途については遠慮なく意見を伝えた方がよいと思います。
 

「感染者」という、今、最も弱い立場にある(批判しやすい)人を批判するのではなく、不適切な感染対策を批判し、社会のあり方を変えていく。それが、ひいては自分を救うことにもなるのだと思います。
 

3. 情報疲れ

新型コロナは「未知のウイルス」であるが故に、様々な情報がテレビやネットから飛び込んできます。「○○が効くらしい」「△△すれば感染を防げる」など、枚挙にいとまがありません。
 

しかし、私たちの大半は、感染症の知識はおろか、基礎的な医学知識すら持っていません。情報の取捨選択ができず、トイレットペーパーの買い占めなどネットに溢れる「デマ」に翻弄されてしまうこともあります。不安が満ちている状況下ではパニックが起こりやすくなることを念頭に置き、冷静な行動を心がけたいものです。
 

そのためには、「専門家が発信した情報かどうか」を確認することが必要です。


など、専門機関が発表している一次情報にあたりましょう。
 

匿名の記事はもとより、たとえ著名人であっても感染症などの専門家ではない人が発信している情報は「信用しない」というスタンスでよいと思います。情報の氾濫に疲れたら、ワイドショーやネットニュースから離れましょう。
 

4. 変化疲れ

突然の一斉休校から1ヶ月以上が経ちました。卒業式は簡略化され、都市部では多くの学校で入学式が中止されました。保育園と学童保育はかろうじて継続されていましたが、感染の拡大により学童保育の閉鎖が発表された地域では、多くの保護者が八方塞がりになっています。子どもたちの学習の遅れも気になります。
 

子育て中ではない人たちも、テレワークへの移行など生活の変化を余儀なくされ、それに伴って家族が顔を合わせる時間が増えました。
 

刻一刻と変化する状況の中で、私たちの生活も変化せざるを得ませんが、これにはストレスが伴います。そのため「有事」の際にはDVや虐待が増加・悪化するといわれており、世界各国で対策が検討されています。
 

自治体の相談室が閉鎖されたり、夫が家にいることで相談自体が困難になっている現状もありますが、身の危険を感じたら、DV相談ナビなどを利用して専門家とつながりましょう。
 

虐待や性虐待の被害を受けていたり家庭に居場所のない子どもたちは、家庭が密室になりやすいこの時期、非常に過酷な生活を強いられています。子どもからのS.O.S.に気づいたら、ためらわず「189」にダイヤルしてください。最寄りの児童相談所につながります。
 

いつ終息するかわからない閉塞感の中で、これまで抱えてきた問題点が顕在化するのは国も家庭も同じです。この機会に改善できるものは改善し、見切りをつける判断をするのも大切なことではないでしょうか。
 

5. 自粛疲れ

外出自粛により、「日々の楽しみがなくなった」という声をよく聞きます。ライブにも観劇にも映画館にも美術館にも行けない、友だちと飲みにも行けない、カラオケにも、スポーツジムにも行けない、などなど。
 

筆者もそのひとりです。しかし、緊急事態宣言が発令される前日、食料品を買いに寄ったショッピングモールで腹が据わりました。いつもは賑わっている平日の夕方、多くの店が閉店しており、人影もまばら。閑散とした光景を見て、今、この国が置かれている状況を、「経済的な打撃」を、ひしひしと実感しました。
 

そんな折りにSNSで流れてきたのが「コロナとの戦いは、家で寝ていれば勝てる!」というものです。
 

たしかに!
 

「自粛疲れ」は「孤独疲れ」でもあると思います。オンラインで仲間とつながることも大切ですが、ひとり遊びの方法を見出すことは、たくましさを身につけることでもあると感じます。
 

6. 身体の疲れ

閉塞感に気が滅入り「コロナうつ」のようになっている人も少なくないかもしれません。眠れなくなったり、食べられなくなったり、気分の落ち込みが激しいなど、明らかに「以前の自分と違う」と感じる時は、心療内科を受診しましょう。
 

心と身体はつながっていますが、心を「気合い」で治すより、身体を整える方が、はるかに回復が早くて効率的です。それは「なんだかだるい」と感じている人も同様です。
 

生活リズムを整え、しっかり食べて、しっかり寝る。そして、1日1回は外に出て「太陽の光を浴びる」ことを心がけましょう。外出自粛とはいっても、散歩やジョギングは制限されていません。
 

広い公園や河川敷などで、深呼吸してみませんか。

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