間もなく『半沢直樹』をスタートさせる「日曜劇場」。「東芝日曜劇場」として1956年に放送を開始し、様相を変えながら2020年の現在も大人世代を含め幅広い世代に支持されている。日曜日の夜ということもあって、家族をテーマに濃厚な人間ドラマをコミカルに描く作品が印象深いが、最近は、謎解きあり、歴史あり、青春ありと幅を広げ、どれも見ごたえのある作品となっている。
ドラマの歴史は長くても、実力ある若いチームの活躍や、マンガ作品を実写化するしなやかさなど、蓄積されたノウハウを生かしながら、常に新しいことに挑戦できるTBSの環境が日曜劇場の強みと感じる。では、具体的に大人世代にとって日曜劇場の何が魅力なのだろう。
1:総合力で大人を巻き込む池井戸作品
リーダーシップ、成長、闘い、チーム力……。社会経験を積んだ大人世代を引きつける要素が満載と言えるのが池井戸作品だ。
『下町ロケット』『陸王』では会社を懸命に守りながらも、信念を曲げないリーダーが映る。挫け、奮起し、人間味豊かに前に進んでいく姿はたくましく、勇気をもらえる。商品の開発現場が鮮明に描かれることも興味深い。アイデアに頷き、商品化までの紆余曲折にも共感できる。一緒に闘っている気持ちにさせてくれるのだ。
チームがひとつになるという点では、社会人スポーツを絡めた『ルーズヴェルトゲーム』や『ノーサイド・ゲーム』もみごとだった。こちらも一緒に、泣いて泣いて歓喜する素晴らしさがある。躍動感ある試合風景のリアリティも含め、日曜劇場らしい作品だ。
2:大人世代が想いをはせる、原作が生きる壮大な物語
歴史が好きである。とりわけ江戸時代は人気である。江戸時代へのタイムスリップという壮大なテーマを豪華キャストで描いた『JIN-仁ー』も大人世代を引きつけた。教科書で見た歴史上の人物が登場し胸が踊るし、先人たちの医療への熱い想いに心が震える。同じくタイムスリップを描いた『テセウスの船』も堪能できた。誰もが犯人に見える謎解きの面白さと、なつかしい昭和の小学校や家族の風景は心惹かれた。
東野圭吾原作の『新参者』は、犯罪に至る動機を鮮明に描き、主人公の阿部寛演じる加賀恭一郎はもちろん、登場人物に寄り添うことができる濃厚な人間ドラマ。大人だからこそ楽しめる作品だ。
3:現代のポップな感覚と、大人の遊び心がクロスする気持ちよさ
大人世代は遊び心を感じるドラマびいきである。さじ加減を間違えると野暮ったくなる遊び心だが、うまく描けば洗練される。日曜劇場はここがうまい。
松本潤演じる、型破りな弁護士が刑事事件に挑む『99.9 刑事専門弁護士』では、実験を重ねる楽しさと逆転のスカッと感に、おやじギャグの微妙な空気がプラス。法廷ドラマを開放的に描く気持ちよさが支持されたようだ。
4:青春カムバックを思い出させる名作の数々
空と飛行機、それだけでドラマは魅力にあふれる。木村拓哉主演であることはもちろん、緊張感漂うプロの現場の空気をベテラン俳優陣がみごとに生み出した『GOOD LUCK!!』。山下達郎の主題歌で大人のハートをキャッチした憎さもある。
大学4年生というだけで甘酸っぱさがプンと香る『オレンジデイズ』は、大きな世界に放り出される前の不安定さに青春特有の強さとピュアさが絡まって、大人世代の胸をキュンとさせた傑作だ。宮藤官九郎脚本の『ごめんね青春!』といい、青春ドラマの名作が日曜劇場に多いことも忘れてはいけない。
夏には阿部寛主演の『ドラゴン桜』が日曜劇場で帰ってくる。大いに笑える青春ドラマに期待したい。