子どもができたために結婚する「おめでた婚(授かり婚・できちゃった婚)」や、籍を入れるだけの「ナシ婚」、身内だけで行う「家族婚」などで、当初は結婚式はしないと選択したものの、「やっぱり主役になりたかった!」。……というわけで、入籍から数年を経た後に結婚式や披露宴を挙げるカップルが、まだ少数派ながらも増えているといいます。こうした式は「今更婚(いまさらこん)」と呼ばれ、周囲に物議を醸しだす引き金に……
結婚10年目。40代カップルの式に呼ばれたけれど……
会社の同僚(45歳)から、結婚式に出てほしいと打診を受け、回答に迷っているのは東京都在住の麻衣子さん(仮名・38歳)。この同僚は今から10年ほど前に入籍しており、その際、部署にいるみんなでお金を出し合い、お祝いとしてウェッジウッドの食器セットを贈っているとのこと。
「同僚以外はみんな普通に結婚式を挙げていたので、部署内で話し合いをし、同僚に対してしっかりお祝いを出してあげようって話になったんです。同僚に欲しいものを尋ねたら、ずいぶんと高い食器セットの名前を指定してきたので、ひとり1万5000円ずつ集めて購入し、お祝いとして渡しました。それなのに、今更結婚式を挙げるから来てくれって言われても……」
麻衣子さんなど部署内の女性たちが結婚式を挙げた際、その同僚は3万円包んでくれたとのことで、食事代を引いた分は返してもいいよね?というこで、ひとりあたり1万5000円という金額に決めたとのこと。なるほど、式を挙げない人へのお祝いにしてはなかなかに高価です。
「同僚が結婚式を挙げなかった理由は知りませんが、ずっと、ドレスを着たがっているのは知っていました。でもね、10年前の35歳のときならいざ知らず、彼女はもう45歳。冷たいようですが、かなりぽっちゃりしてきているので、果たしてドレスを着たところで……って思ってしまうんです。しかも、彼女に式の内容を聞いたら、ごく普通の結婚式のように、式も披露宴も行うらしくて……そうなると、こちらももういい年齢なので、5万円くらい包まなければなりません。でも、5万円あったら、娘の学費の足しにしたり、息子のスポーツクラブのユニフォームを新調したいぐらい、そう思ってしまうんですよね」
できちゃった末の結婚。悩んだ夫婦が出した答えは……
「恥ずかしながら、大学生のときに同棲していた彼との間に子どもができてしまい、卒業とともに入籍しました。そのとき結婚式はせず、家族の顔合わせ食事会のみを行ったんですけど……」
埼玉県在住の友里さん(仮名・33歳)は、小学生のお子さんを抱えて働く、パート主婦。最近、ご主人からこんなサプライズを受けたといいます。
『そろそろお金も貯まったことだし、結婚式を挙げよう! おまえ、ことあるごとに結婚式がしたかったって言ってたよな? 友達とかみんなを呼んで、盛大な式を挙げようぜ!』
「……サプライズは他人迷惑だっていうの、本当ですよね(笑)。今更結婚式なんて挙げてどうするんだろう?って。思わず夫の頭を叩きたくなりました。本人はすごいやる気モードで、親戚や共通の友人に電話をかけまくってるんです。私の親からは『大丈夫なの?』って電話がかかってくる始末。友人からも『なんかご主人、はっちゃけてる?』って、苦笑されてしまいました。男性はこんなにも結婚式にこだわるものなのでしょうか? それに……今更結婚式を挙げて、迷惑じゃないんでしょうか?」
写真撮影だけで終わらせる。これがスマート
万里子さんの場合も、友里さんの場合も、立場は違えど、同じ「今更婚」についてのお悩み。ところでこの「今更婚」。当事者以外はどのように受け止めているのでしょうか。筆者の近辺でざっとアンケートをとってみたところ、賛成派32%、反対派58%、立場を決めかねている派が10%。
賛成派の意見で上がったのは、
「あとから式がしたかった、ドレスが着たかったと思うくらいならやればいい」
「結婚式大好き! 挙げるならぜひ参列したい♡おしゃれしたい♡」
という意見。これに対して反対派からは、
「それこそ本気で“今更”感しかない」
「今更すぎて、心の底からお祝いできない」
「そこまでしてお金集めたいの?って思ってしまう」
「(式に参列しなきゃならないのであれば)入籍した際にあげたお祝い金を返してほしい」
との意見が。また、立場を決めかねている派は、
「すごく親しい友人や家族であれば賛成する。会社の同僚や、たまに遊ぶ友人程度なら賛成できないし、参列したくない」
という意見が主流でした。
このように意見が様々に分かれる「今更婚」。反対派が多数である状況を考えると、どうしても式をしたいならば、
・呼ぶのは両家家族と親友のみ、または夫婦のみで式を行う
・フォトウェディングを選択する
・参列者がいた場合、ご祝儀は受け取らず、すべて自分たちで持ち出す
・いわゆる披露宴は行わず、食事会のみにする
といった配慮が必要でしょう。
真夏にサンタクロースの砂糖菓子が乗ったケーキを出されたら「えっ⁉」と思ってしまうように、どんなことでも、時期を逃したことを改めて行うのは周囲に違和感を与えてしまうもの。
また、そもそも結婚式というのは、新婦が主役になる場ではなく「まだまだ未熟なふたりですが、よろしくお願いします」という意味を込めて来賓をもてなすための場。目立ちたかった!ドレスが着たかった!という気持ちで結婚式を挙げることは、勘違いによる“しでかし”になりかねないのです。
後悔するくらいなら……というのであれば、やはり、入籍する際に結婚式を挙げるのが正解の模様。結婚する際は、未来のことも含めて考えに考え抜いてから、式の有無などを決めることをおすすめします。