異例の「一般の部」中止……東京マラソンが開幕
2020年3月1日、いよいよ東京マラソン2020が開催されます。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受け、10kmレースは中止となりました。42.195kmで行われる男女マラソン、車いすマラソンも一般参加ランナーの欠場が決まり、さらに、沿道での応援も自粛要請がある中で、招待選手をはじめとするエリート選手のみが出走するという、異例の実施となりました。
記録に注目? 男子マラソンの見どころ
東京マラソンと3月8日に開催予定の「びわ湖毎日マラソン」は、迫る東京五輪マラソン男子代表の3枠目を争う「MGCファイナルチャレンジ」のレースに指定されています。派遣設定記録である「2時間5分49秒」を突破した最速記録の選手が3枠目に内定します(両レースで突破者がいない場合はMGC3位の大迫傑選手が内定)。
2年前の同大会では設楽悠太選手(Honda)が2時間6分11秒の日本新記録(当時)を樹立するなど、かねてから記録の出やすいコースといわれています。
加えて、昨今の陸上競技長距離界では、男女のハーフマラソンで日本新記録が出るなど、トラックレースでも駅伝でも好記録ラッシュ。一時の短距離種目がそうであったように、長距離種目にも好記録が出る流れや雰囲気が続いています。そうした背景もあり、東京マラソン2020に出場するメンバーたちに大きな注目が集まります。
男子マラソンの顔ぶれは……
厳しいコンディションで行われた東京マラソン2019を2時間4分48秒で制したビルハヌ・レゲセ選手(エチオピア)や、初マラソン世界最高記録となる2時間3分34秒の自己記録を持つゲタネ・モラ選手(エチオピア)は2度目のマラソンの舞台として東京を選びました。日本記録を大きく上回る自己記録を持つ両選手は、優勝争いの中心となるでしょう。
対する日本勢も、新旧日本記録保持者である大迫傑選手(Nike)、設楽悠太選手(Honda)、2018アジア大会でマラソンを制した井上大仁選手(MHPS)といった実力者が参戦。佐藤悠基選手(日清食品グループ)、山本憲二選手(マツダ)、河合代二選手(トーエネック)といったMGC出場組も東京マラソン2020に出場します。
東京五輪だけでなくパリ五輪を見据えて、時代を担いそうな新顔も揃ってきました。2月の丸亀国際ハーフマラソンで日本記録を更新した小椋裕介選手(ヤクルト)。前回の東京マラソン、MGCと厳しいコンディションでしかマラソンを走ったことのない堀尾謙介選手(トヨタ自動車)は記録を大きく更新するチャンスが巡ってきました。学生では國學院大學の主力として出雲駅伝優勝、箱根駅伝3位に大きく貢献し、初マラソンに挑む土方英和選手(4年)。上下動の無い安定したフォームで、今後キャリアを積めば面白いと思わせてしまう藤曲寛人選手(順天堂大学/4年)などにも注目です。
女子マラソンの見どころは?
海外招待選手は前回優勝のルティ・アガ選手(エチオピア)をはじめ、自己記録2時間20分を切っている選手が5名も出場予定。過去2回東京マラソンを制し、本大会と相性の良いベルハネ・ディババ選手(エチオピア)も侮れない存在となりそうです。
また、ロナー・チェムタイ サルピーター選手(イスラエル)は既にイスラエル代表選手として東京五輪出場を内定しており(種目はこれから決めるとのこと)、今回は日本に慣れるためという点も加味して東京マラソンの参加を決めたとのことです。
迫力の「車いすマラソン」にも注目!見どころは?
車いすマラソンの部では、外国人選手の多くが直前で辞退しており、女子は出場者が3名と、少数でのレースとなっています。
一方の男子は、東京パラリンピック車いすマラソン代表内定の鈴木朋樹選手(トヨタ自動車)、日本記録保持者の洞ノ上浩太選手(Yahoo!)などが参加し、世界に挑みます。
パラ代表として東京パラ五輪出場を狙っている選手もいるので、白熱したレースが見られる可能性もあります。主催者側としても男女の大会記録が2016年以降でていないことをうけ、副島正純東京マラソンレースディレクターは次の3点を「仕掛け」として適用したことを説明しています。
①37.1kmからの400m区間で最速タイムを出した男女各選手が「AbobottWMM車いすボーナスポイント」8ポイントを獲得
②37.5km地点を大会記録更新が狙えるペースで通過した選手上位3名に賞金
③優勝賞金のアップ
以上の3点を適用し、今後、「タイムが出ることを東京マラソンのアピールポイントとしたい」とのこと。今回大会でこれらがどう作用するかも注目です。
万全の体制で!沿道応援について
日本陸上競技連盟より、応援自粛について発表がありました。上述のとおり、今回も好メンバーが揃い、記録にも期待が高まります。その瞬間を見たい、というファンも多いでしょう。
しかし、感染症発症・拡大の可能性もあるため、テレビやネット配信でレースを楽しむのが、私たちファンが今できることではないでしょうか。
取材陣にも、感染症予防の徹底が呼びかけられており、マスクの着用はもちろん、こまめな消毒や、発熱や咳が続く場合は参加を控えるよう通達が出ています。
筆者も毎年東京マラソンを楽しみにしていたのですが、今回は自宅でテレビ観戦することにしています(熱や咳といった症状は今のところありません)。
平穏になり、またマラソン・陸上競技を現地で楽しめる日がきたら、そのときは皆さんで世界一の雰囲気を出す大会にしましょう。
取材協力:一般社団法人東京マラソン財団