好きな男にすべてを貢いでしまった私
母ひとり子ひとりの家庭に育ち、成人してからはがんばって稼いで親孝行しようと思っていた女性がいる。それなのに、彼女はダメ男につけこまれてすべてを失ってしまった。それを彼女は「自分の弱さ」だと語る。
愛されていると信じ切ってしまった
ユウカさん(40歳)の母は、彼女が3歳のときに夫を亡くした。以来、母と娘は二人三脚で生きてきたという。
「母は本当に必死に働いて私を育ててくれました。高校卒業後、私は働きながら大学の二部に通学、大卒の資格も得ました。職場でも昇進は早いほうだったと思います」
それなのに25歳のとき、悪い男にはまった。少し余裕が出てきて、友だちと夜遊びをするようになった時期だ。
「あるバーで知り合った男性と意気投合して、そこからつきあうようになって。周りは『あの男はやめておいたほうがいい』と言ってくれたんです。でも反対されればされるほど燃え上がっちゃって。それまで私、恋愛なんてしたことがなかったので、男を見る目がまったくなかったんでしょうね。初めてできた恋人の言うなりになってしまった」
彼はいずれメジャーなミュージシャンになると豪語。その夢のためにと、彼女はこつこつためた200万円を1年の間に全部渡した。給料日に会社前で彼が待っていたこともある。
金の切れ目が縁の切れ目。彼女に貯金がなくなったと知ると、彼は行方がわからなくなった。
「私がバカだったんですよね。母にも泣かれて……。もう男には騙されまいと誓いました」
結婚、そして離婚
30歳のとき、今度は「まじめな」男性と知り合い、半年たらずで結婚した。母を安心させたい一心だった。ところがこの彼、社会的には「いい人」で通っていたが、実はユウカさんを精神的に虐待するような男だった。
「最初はやさしかったんですけどね。結婚して数カ月で家事もまったくやらず、先に帰っていても、ひとりでビールを飲んで『早くメシ作れよ』と言うようになった。家賃は彼が払うという約束だったのに、それさえ出さなくなっていったし、週末はひとりで出かけてしまうし。何のための結婚なのか。私は子どもがほしかったんですが、結婚してすぐ夫婦関係もなくなりました」
家賃を払ってほしいというと、彼は「おまえみたいな女が結婚できたのはオレのおかげだ」と言い放った。ユウカさんが離婚を口にすると、離婚届にサインして荷物をまとめて出ていった。結婚して2年がたったころだ。彼はほぼ自分のお金を出すことなく、2年間生活していたのだという。
「私はまたも無一文状態。このときは精神的にもつらくて仕事も休職し、母の住む賃貸マンションに転がり込みました。結局、母親には心配ばかりかけていましたね」
その後、数年は静かに生活していたが、3年前に今度は家庭のある一回り年上の男性と恋愛関係に陥った。どうしてまっとうに生きられないんだろう、と彼女は考え続けている。
「既婚の彼とはうまくいっていますが、関係自体はやはり人に祝福されるようなものではない。それはわかっています。でも、今の私の気持ちをいちばんわかってくれるのは彼。結婚できないし、人に知られてはいけない関係だけど、今の彼とつきあって、ようやく安心できる場ができたというのが本音なんです」
落ち着く先が不倫関係だったというのは皮肉だが、彼女の精神状態は大人になってからの20年で、今がいちばん安定しているという。