「一緒に住まない」という選択
大学の同級生と、卒業して3年後に結婚。ひとり娘をもうけ、そこから同居したり別居したりしながら暮らしてきた夫婦がいる。ここ10年はほぼ別居、今では一緒に住むのはやめようという話もしているという。現在結婚16年、娘は高校生になった。
子育ては周りを巻き込んで
「子どもが生まれてから5年くらいはほぼ一緒に住んでいました」
サエさん(41歳)は苦笑しながらそう言う。
「私たちの生活は、いつでも“ほぼ”なんですよ。何年もずっと同居ということがなかったので。子どもが生まれてすぐは同居していました。ただ、その後、彼が2年ほど単身赴任していたから、週末くらいしか一緒にいなかったし。そのころは夫と私のそれぞれの実母が手伝ってくれていました。私もけっこうハードに働いていたので、保育園へのお迎えに間に合わないときは近所の大学生にアルバイトとして頼んだりしていましたね」
隣の部屋のおばあちゃんがごはんを食べさせてくれていたこともあるという。昔ながらの下町で暮らしていたから、まだ人情が残っていた。
「娘が小学校に入ってすぐ、今度は私が単身赴任をしたこともあります。そのころからかな、夫が自宅と会社の間くらいに小さな部屋を借りたんです。今はそこが夫の根城になっていますね」
経済的には折半、週の終わりにお互いのスケジュールを調整しながら時間もやりくりしてきたが、「いつも一緒に生活する家族という形」にはとらわれていない。
ひとり娘は父母の実家に行ったり近所の家にいたり。小学校に入ってからは友だちの家で過ごすこともあった。そして夜は、父か母のどちらかは必ず一緒にいた。
「夕飯を娘ひとりでは食べさせない。どちらかの実家にいるとしても、必ず夫か私がいること。これだけは夫と私の決めごとでした」
娘は独立心が旺盛
子どものころから、自由に育ったせいか娘は独立心が旺盛だという。
「今は娘のスケジュールもありますから、今度は3人でいつ集まるかとか、この日はお父さんとごはん、この日はおかあさんとごはんなどと書き込んでいます」
スマホでスケジュールを共有しているので、サエさんが夫に会えなくても娘は身軽に会っている。
「夫も私も仕事が忙しいけれど、最低、週に1度は3人で会うことにしています。私も忙しいと言いつつ、少し手を抜いてときには夫と長めのランチをしたり」
家族意識があまりないから、世間からみたらヘンな家族かもしれないと彼女は言う。
「夫も私も、結婚したときから仕事を第一にと考えていた。子どもができてからは子どもが第一ではあったし、今も気持ちとしてはそうですが時間配分としてはやはり仕事に比重がかかっている。その代わり、会ったときは仲良しですよ。お互いに話が積もっているので、いつまででもしゃべっていられる。夏と冬は3人で旅行をしますが、夫と私は初日の夜にしゃべり続けて、いつも2日目の朝は寝坊しています」
一緒に暮らさないことで互いの自由を確保できる。そして相手を尊重することもできるとサエさんは言う。相手が浮気しているかもしれないという心配はしていないそうだ。
「夫といえども他人ですから、浮気するかしないかは夫の判断。それを受けて私が離婚したいと思うかもしれないし、大目に見るかもしれない。それは実際、起こってみないとわかりませんよね。だからよけいな心配はしないようにしています」