40代後半の中絶が増えている、その背景とは
厚生労働省が発表している衛生行政報告例の中に人工妊娠中絶に関する政府統計がある。昨年10月に発表された最新調査によると、全体的に中絶件数は減少しているものの、2つの年代層だけで増えている。20代前半と40代後半だ。
40代後半で微かであるとはいえ中絶が増えているのである。実際、この年代の女性たちには「もう更年期が始まっているから妊娠しない」「この年で妊娠するはずはない」という思い込みがある。
まさか妊娠とは
47歳のクミコさんは、28歳で結婚、大学生と高校生の子どもがいる。夫とは共働きをしながら家庭を築いてきた。そんな彼女が半年ほど前、中絶を経験した。
「夫とはもはや年に数回しかしていなかったし、生理不順にもなっていて更年期症状なのかなと思っていました。でもなんだかおかしいので医者に行ったら妊娠だと。驚きました。正しい判断ができかねたので、産む産まないの結論は出さずにその日は帰りました」
夫に言ったら、今からでももう一度子育てしようと言うに決まっている。だがクミコさんは仕事で重要な局面にも立っていた。社内の大きなプロジェクトのリーダーになったばかりだったのだ。
「数日悩みましたが、これはもう墓場までもっていこうと、誰にも言わずに密かに中絶しました。しかたがなかったと思っています」
連休前に手術し、連休中は風邪をひいたと寝て過ごした。家族はまったく疑っていなかったという。夫は珍しくおかゆをつくってくれたそうだ。
「いいとか悪いとか、そういうことは考えないようにしました。今の生活を守る、自分のキャリアを守る。それがそのときの優先事項だったから」
完全に閉経するまでは可能性がある
その後、クミコさんは医師に言われたそうだ。
「完全に閉経するまでは、妊娠の可能性があるんですよ」と。
「40代後半になって、しかもめったに夫としないという現状があるから、そう簡単に妊娠するはずがないと決めてかかっていたんですよね。でも可能性はゼロではない。その後、夫とする機会はありませんが、もし迫られたら逃げようと思っています。完全に閉経するまであと数年ありますが、ずっと逃げ切れるかどうか……」
本来なら、そのあたりも含めて夫婦で話し合い、新たに子どもをもつつもりがないなら避妊するべきだろう。だがクミコさんは、今さらそういうことを夫に話すのもめんどうだと考えている。
「ただ、私の経験を踏まえて言うなら40代後半での妊娠にはじゅうぶん注意したほうがいいと思います。つい先日、同世代の友人から不倫相手の子を妊娠してしまったという話を聞きました。彼女も、もう妊娠するはずないと思っていたそうです」
40代後半の意外な“落とし穴”かもしれない。