出産は「人生一発大逆転」になり得るか
歌手の華原朋美さんが44歳での妊娠を発表した。結婚するのかどうかはわからないが、45歳での出産となる。以前から「お騒がせ芸能人」として知られる彼女だが、今回も驚かされた。
出産は女性の人生にとっては一大事である。人生を変えることもありうるだろう。
2度の離婚、そして出産
「私の人生にとっては一発大逆転でしたねえ、出産は」
そう言うのはタカコさん(42歳)だ。23歳で最初の結婚をしたものの夫のDVで5年後に離婚。31歳で再婚したもののケンカが絶えずに2年後に離婚。
「もう結婚なんてこりごりだと思っていました。もちろん子どもをもつことは私の人生にはないだろうと感じていたんです」
昼も夜も働きながらお金をためた。いつか心の底からやりたいことができたらそこにお金をつぎ込もうと考えていた。
「恋愛はそれなりにしていました。特に36歳のときに知り合った10歳年上の人のことは本当に好きだった。ただ相手には家庭があった。3年近くつきあって奥さんにバレて別れました」
別れた直後、妊娠に気づいた。少しあわてたけれど、「産まない」決断はできなかったという。
「彼のことが大好きだったし、密かに産んで密かに育てるという選択肢もあるな、と」
経済的なことを考えた。出産後、しばらくは仕事をしなくても生活はできそうだ。
子どもを通じて人間関係が広がった
「私は大学も出ていないし、ちゃんとした会社に就職したこともない。高校を卒業してすぐ、毒親から逃げたんです。でもひとりで生きていけるだけの根性と生活力はある。両親そろった家庭は無理でも、子どもを愛していくことはできるような気がしたんです」
過酷な過去を生き抜いてきた彼女だが、とても純粋でまっすぐな女性である。彼女は出産ギリギリまで仕事をしたという。
「夜の仕事はスナックだったんですが、ママがいい人でね。産まれたらみんなで育てればいいじゃない、と。住んでいるアパートの大家さんも、『私がめんどう見てあげるよ』って。近所の人たちも楽しみにしてくれているような環境で産んだんです」
3歳になった娘は、いろいろな人の中で育ったせいか人見知りしない明るい子になっている。
「昼は保育園に預け、夕方迎えに行ってそのままスナックに行きます。ママと3人でごはんを食べて娘はママの部屋で寝かせてもらうの。子どもが小学校に入ったら働き方も変えようと思ってはいますけどね」
別れてから、子どもの父親と一度だけ会ったことがある。共通の知り合いが彼に勝手に知らせてしまったのだ。
「彼は娘を抱っこしてくれました。私は何も期待していなかったけれど、彼は毎月3万円養育費を送ると言ってくれて。今もそれは守られています。認知できないし生活費も出してやれない。すまないと彼は涙をこぼした。もうそれでじゅうぶんだなと思った」
脅す気はないけれど、いつか娘に見せてやりたいから抱っこしている写真だけ撮らせてほしいと彼女は頼んだ。その写真は今も手元にある。彼と彼女の間には信頼関係があった。
「彼も苦しいと思いますよ。ただ、オープンにできない気持ちもわかりますから、私は別に不満ではないんです。娘を授けてくれてありがとう、と私は思っている。彼女が来てくれて、私の人生は変わりました。生きていて楽しいことなんて何もないと思っていたけど、娘は天使ですから」
タカコさんはとびきり明るい笑顔を見せてくれた。経済的な意味での「一発逆転」ではない。ただ、生きていく上で大きな「希望」ができた。それこそが何より大きな成功なのかもしれない。