「結婚」「出産」「育児」は仕事の辞め時?
結婚して子どもができて、家庭を優先させたいと考えたら仕事を辞めるという選択肢がある。もちろん、仕事を辞めるのは男性でも女性でもかまわない。ただ、どうしても女性が辞めがちなのは、男女の賃金格差があるからだ。
本当は辞めたくなかった
29歳で結婚し、31歳、33歳と出産してふたりの子を育てているナオミさん(42歳)。ずっと働き続けるつもりだったが、下の子が病弱で産まれた直後から入院生活。とても仕事を続けられる状態ではなかった。
「夫のほうが給料がよかったし、当時は私が辞めるのが自然だと思っていました。でも本当は辞めたくなかった。今は、あのときどうにか続けることはできなかったのかと後悔しています」
夫婦ともに地方出身で、頼りになる親戚も近くにはいなかった。ただ、自分が辞めるのが自然だと考えてしまったことには悔いが残ると彼女は言う。
「今になってみると、実際の給与上昇率は私のほうがよかったんじゃないかとか、夫を見ていると私のほうが仕事ができたんじゃないか、出世したんじゃないかと思ってしまう。まあ、どんなにいろいろ考えても意味がないんですが」
下の子が中学に入る3年後を目指して、新たにスキルをつけるべく通信教育で勉強をしている。ただ、独身時代と同じ業種に戻れるかどうかは定かではない。
友人の言葉でダメージを受けて
久しぶりに大学時代の友人に会ったナオミさんは、思いがけない言葉を浴びた。
「なんだかんだ言っても仕事を辞めた女は負け犬だよね」
そう言った友人は、仕事を続けながらふたりの子を育てている。だが、彼女は都内の実家に住み、育児も家事も親が手伝ってくれている身だ。
「親がかりで共働きをしているんでしょって思わず言い返してしまいました。周りは微妙な雰囲気に。考えたら、その仲良しグループ、私以外は正社員の共働きが3人、バツイチ独身、未婚がひとりずつという感じだったんです。みんなそんなにキャリアを追求しているわけではないけど、フルタイムで正社員ばかり。就職が大変だったから、仕事を手放してはいけないというのが暗黙の了解だったんですよね」
だが、人生にはいろいろなことが起こり得る。彼女たちだって、いつ仕事を辞めなければいけない状態に陥るかはわからない。
「そういう想像力はないんだと思います。ただ、仕事を辞めた私が何を言おうと、この人たちには通じないんだなと感じました。仕事を辞めた女は負け犬だ、という考え方が一般的かどうかわかりませんが、私にはショックでしたね」
人生で勝ち負けの意識を持ち込むこと自体が無意味だが、そんなふうに言われたら誰もが傷つくに違いない。
「3年後に仕事に復帰して、負け犬だと言った友人を見返してやりたい。今はそれをバネにがんばろうと思っています」