もう何にも縛られたくない……
結婚の形もいまやさまざま。婚姻届を出すのか式は挙げるのか、同居するのか。自分たち次第で選ぶことができる。40歳、バツイチ女性が選択した、何にもとらわれない『結婚』とは。
「届」に縛られたくない
「前の結婚のときに思ったんですよ。どうして自分が誰かと生活をともにすることを役所に届けなければいけないのか、と。素朴な疑問として」
そう言うのは、ナツキさん(40歳)。29歳のときに最初の結婚をしたが、婚姻届を書きながら妙な気分に襲われたという。名字を変えるのも納得がいかなかった。夫はそういうことをまったく不思議に思わないタイプだったから、しかたなく我慢していたが、やはり我慢は続かない。
「3年後に離婚しました。最後まで仲が悪かったわけではないんですが、どうしても私が納得できなくて。でも離婚してすぐ妊娠に気づいたんです」
元夫は再度、婚姻届を書こうと言ったが彼女は拒絶。シングルマザーとしてひとりで育てていくことを決意した。
「すでに元の名字に戻していたし、結婚に縛られずにひとりで生きていきたかった。幸い、仕事をやめていなかったので生活は苦しくてもなんとかなるかな、と」
夫とは友人関係でいようと話し合った。認知は子どもが大きくなってから本人に任せることも決めた。
「出産はひとりでしました。ひとりで生きていくんだから、ひとりの覚悟をもつためにも誰にも頼りたくなかった。今思えば、すごく突っ張ってますよね(笑)」
産休を経てすぐに仕事に復帰。さすがにこのときは親に助けてもらったという。
現在は「ときどき同居婚」
その後、元夫は再婚したが、ずっと月に2万円を振り込んでくれている。息子の養育費として使ってほしい、と。彼女はずっとそのお金を貯めてきた。
「元夫は月に1、2回は息子に会いにきています。息子が10歳になったので、今は外で一緒に食事をしたりしています」
一方で、ナツキさんも恋をした。35歳のときから、同じくバツイチの同世代の男性とつきあっている。
「彼も私と同じ種類の人間で(笑)。結婚制度に懐疑的なんです。だから近所に住んでいて、お互いに都合がつくときだけ会うという感じ。息子は彼に懐いているんですよ。彼はサッカーがうまいから。ときどき、『ママはあのおじちゃんと結婚しないの?』と聞いてきたりしますが、結婚すると楽しい関係じゃなくなるから、結婚はしないと言っています」
元夫と今のパートナーも仲がいい。さらにナツキさんは、元夫の妻とも交流がある。先日、元夫一家とナツキさん、パートナー、息子でバーベキューをしたという。
「あくまでも今のところですが、こんなにうまくいくとは思わなかった。愛情という名のもとに、いろいろな縛りがかかると人間ってどうしても不自由になるんですよね。私は元夫の子どもを預かったこともありますよ。みんなで仲良くしていけばいいんじゃないのというのが私のスタンス。みんながうまくそれに乗ってくれたような気がします」
世間体や常識に縛られないことで、心から穏やかな日々を過ごすことができたとナツキさんは笑う。