わかっていても観たくなる!2時間ドラマは長寿シリーズの宝庫

2019年3月、『月曜名作劇場』(TBS)の終了をもって2時間ドラマのレギュラー枠が消えた。かつて毎日のように放送されていた2時間ドラマを思うと、時代の移り変わりを意識せざるを得ない。20年以上つづく長寿シリーズも少なくない、2時間ドラマを振り返りたい。

2時間ドラマは長寿シリーズに名作多し

牛尾刑事が活躍する人気作『終着駅シリーズ』/出典:Amazon

1977年、テレビ朝日の『土曜ワイド劇場』でスタートした2時間ドラマが3月、TBSの月曜名作劇場の終了と同時にレギュラー枠を失った。かつて各局がこぞって制作し、毎日のように放送された2時間ドラマには、息の長いシリーズとなったものも多い。

『赤い霊柩車シリーズ』(2018年に第37作を放送)、『法医学教室の事件ファイル』(2018年に第45作)、『終着駅シリーズ』(2019年に第34作)、『税務調査官・窓際太郎の事件簿』(2018年に第34作)などシリーズ化された作品は、名作ばかり。毎回登場する、お決まりのコミカルなシーンに笑ったり、家族の成長を楽しめたり、レギュラーメンバーの異動に胸を痛めたりと、視聴者もひときわ親しみを感じ、長年愛されてきた。

なかでも、複数の局で制作され、何人もの実力派俳優たちが主人公を演じてきたことを考えると『浅見光彦シリーズ』と『十津川省三シリーズ』は特別と言えるだろう。
 

旅と歴史を愛する心優しき青年が謎を解く 浅見光彦シリーズ

名優たちが演じた『浅見光彦』シリーズ/出典:Amazon

内田康夫原作の『浅見光彦シリーズ』は、日本テレビ、TBS、テレビ朝日、フジテレビの各局が制作。フリーのルポライターでありながら、偶然遭遇する数々の難事件を解決している主人公・浅見光彦の名推理はもちろん、各地の伝説や行事といった日本各地の文化や風土を丁寧に見せてくれることも魅力だ。光彦の旅好きな母親を、音羽信子、加藤治子、野際陽子、佐久間良子といった大女優が着物姿で演じてきたことにも注目しておきたい。

恋へと発展することはないものの旅先で知り合うマドンナとのロマンチックな時間、地方刑事との親交、事件の切ない背景など、人間ドラマとしても優れている。
 

どんな巨悪にも怯まない!屈強な十津川班が活躍する 十津川省三シリーズ

今なおシリーズが続く『十津川警部シリーズ』/出典:Amazon

西村京太郎が描く十津川警部シリーズは、刑事が事件を解決する正統派の作品。TBSが渡瀬恒彦主演で全54作、テレビ朝日が三橋達也主演と高橋英樹主演を合わせて全70作を制作している。テレビ東京、テレビ朝日、フジテレビも制作していることからも、その人気がうかがえる。

リーダーの十津川省三と、正義感が強く時折歯止めが効かない彼のよき理解者、亀山刑事を中心に、結束力と強い意志で巨悪に立ち向かう十津川班の活躍が楽しめる、味のある足を使った捜査と日本各地の鉄道や宿泊時のご当地グルメといった癒しが巧みに調和した傑作だ。
 

さようなら2時間ドラマ、この先はどうなる?

今も愛される江戸川乱歩の『美女シリーズ』/出典:Amazon

現在、テレビ朝日の『日曜プライム』(夜9時~)では、骨太な作品が制作され、ドラマファンとしてはうれしいかぎり。5月19日には薬丸岳原作の『死命~刑事のタイムリミット~』が吉田鋼太郎vs.賀来賢人で放送される。死に直面する刑事と連続殺人犯が命を振り絞りながら何を見せてくれるのか、興味深い。

レギュラー枠はなくなったもののもの2時間ドラマはその役割を終えていない。連続ドラマにも、単発60分枠にも向かない物語や、明智小五郎、金田一耕助など、新しい俳優たちに挑戦してほしい主人公の作品があるからだ。予定調和の、わかっているけど見たくなる2時間ドラマらしいスパイスを利かせつつ、新しい時代の新しい2時間ドラマが生まれることを期待したい。

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    『オッペンハイマー』を見る前に知ってほしい6つのこと。2つの用語、時系列、モノクロシーンの意味は?

  • どうする学校?どうなの保護者?

    なぜPTAで子どもの保険を扱うのか? 2024春、東京都Pが“別組織”で保険事業を始める理由

  • AIに負けない子の育て方

    2024年の中学入試は「弱気受験」だったというが…受験者増の人気校に見る、中受親の変化

  • アラサーが考える恋愛とお金

    仕事×子育てを両立できるのは「ごく一部の恵まれている女性」か。女性の社会進出という“風潮”が苦しい