男友だちの妻に不倫を疑われ⁉
「仲良くしている男友だちの妻に突き飛ばされてケガをした」と話してくれたのは、アイコさん(45歳)だ。とはいえ、犯人が妻かどうかは確証がない。いったい何が起こったのだろうか。
同じ野球チームを応援している仲
アイコさんは結婚して15年たつが子どもはいない。同じように子どものいないケンタさん(46歳)とは会社での同期。その後、ケンタさんが転職してからもふたりの友情は続いた。
「同じ野球チームをずっと応援しているんですよ。彼は3年ほど前に再婚したので、ときどき妻も球場に連れてきたり一緒に食事をしたりという仲なんです」
アイコさんの夫は研究職で、ひたすら仕事が好きな人。野球には興味がないため、つきあってはくれない。
「私が球場に行こうがファンの集まりに行こうが、一向に気にせず自由にさせてくれます」
ただ、アイコさんが気になったのはケンタさんの妻だ。16歳年下の妻は、最初からアイコさんに対して敵対心むき出しだった。
「球場で私とケンタが野球の話をしていると、『喉渇いた』と彼に飲み物を買いに行かせたりするんですよ。本当はたいして野球に興味がないんでしょうね。ときどきじっと私を睨んでいることもあった。私も気が引けて、『奥さんがかわいそうだから、一緒に行くのやめたほうがいいんじゃない?』と彼に言ったこともあるんです。彼は『アイちゃんと一緒に行くのが楽しいんだよ。こんなに野球の話ができる人はいないから』と。それでよく一緒に行っていたんですけどね」
昨年のシーズン終了直前、アイコさんは球場の階段から転がり落ちて足首を骨折した。明らかに後ろから誰かに突き飛ばされた感覚があった。
「転がり落ちながらふと上を見たら、ケンタの奥さんが着ていたのと同じ黒いコートが裾を翻して逃げていくのが見えたんです。でもそれだけでは証拠にならない。私はそのまま救急車で運ばれました。誰か一緒に来ている人はと聞かれたけど、ひとりで来たと答えました」
夫が病院に駆けつけてくれたとき、彼女は転んで階段から落ちたと言った。
妻の不審な動き
事態を知ったケンタさんも翌日には病院に来てくれた。ふと気になって、アイコさんは聞いてみた。
「私がいなくなったとき、奥さんは席にいた?」
「そういえばアイちゃんがトイレに行くと言ったあと、妻が何か食べるものを買ってくると言ってたなあ」
やはり奥さんの仕業だろうとアイコさんは確信をもった。
「奥さん、ケンタと私の関係を誤解しているんじゃないかな」
アイコさんがそう言うと、まさかとケンタさんは笑い飛ばした。こんなに野球で盛り上がれる友だちが恋愛関係になるはずがない、と。
「女心がわかってない男なんですよ、ケンタは。だから私は恋愛にはならないけど……。若い奥さんから見たら、自分より野球に夢中な夫にも腹が立つだろうし、まして同じ趣味で盛り上がる女がいるのはおもしろくないでしょう。それとなくケンタには言ったんだけど、彼はそういうところには疎いから」
その後しばらく球場には行かれなかったアイコさんだが、今年もこれから野球シーズンが始まる。シーズンを前に、親しいグループで会合を開いたのだが、そこにケンタさんとともに現れた奥さんは、アイコさんを見るなり顔を背けた。
「もう私が来ないのではないかと思っていたようですね。なのにいたから罪悪感がよぎったのか、うっとうしいと思ったのか。やましいことは何もないけど、もうケンタとは離れて別のファンと行動をともにしようかなと考えています。一緒に野球を見るにはいちばんの友だちなんですけどね」
妻に疑われたら、長年の男女の友情も続けることはできないのだろうか。アイコさんはケンタさんと離れたくない気持ちと、疑惑を持たれ続ける苦しさとの間で揺れ動いている。