男が求める愛は「承認欲求」?
誰にでも愛を求める気持ちはある。権利もある。だが、40代独身男性たちが口にする「愛」の根幹がなかなかすとんと腑に落ちずにいた。
唯一無二の存在になりたい
ときどき、興味深い思考回路の男性に会うことがある。たとえば妻が浮気をしても怒らない。その怒らない理由が、「妻にも自由に恋をする権利がある」というなら理解しやすい。だが、「浮気する妻を許す自分が好き」というような考え方をする人がたまにいる。もちろん、本人はそのことに気づいていない。
「愛」がないと結婚できない、「愛」がほしいと心底思っている40代独身男性の中に、「彼女にとって唯一無二の存在になりたいんです」と言った人がいる。トモノリさん(46歳)だ。40歳を過ぎてから、その思いが強くなってきたという。
「自分にとって彼女は唯一無二の存在」というならわかる。恋愛は自分の気持ちが優先されるものだから。だがトモノリさんの理想は、自分が相手にとって唯一無二の存在になること。それは本来、結果論であって、相手に強いることはできないし頼むこともできない。
「わかっています。だけどやっぱり彼女にとって自分が過去も未来も含めて最高の男だと思われたいんです」
気持ちはわからなくはないが、何かがヘンだという気がしてならない。
自分の存在理由ってなに?
人に必要とされる人間になることは、ひとつの崇高な目的のように思われている。だが本当にそうだろうか。それはやはり結果論で、自分が自分らしく生きていたら、いつしか必要としてくれる人が出てきたというほうが本当なのではないだろうか。
「唯一無二の存在」にも同じ匂いを感じるのだ。自分の意志より相手の意志を優先したい、それに見合う自分でなければならないという無理感がある。
「僕、モテ期がなかったんですよ。だからいつも自分の存在理由は何だろうと考えていた。そうしているうちに、女性から唯一無二の存在と言われたいと思うようになったのかもしれません」
たとえ異性に言われなくても、誰もがこの世の中で唯一無二の存在である。彼は女性にそう言われることで、自らの承認欲求を満たせると思っているのだろうか。
この『承認欲求』というのはかなりやっかいなものだ。たとえば虐待された子どもには、ベースとなる自己肯定感がないのでのちに人間関係で苦労することも少なくない。
「自己肯定感はなくはない。だけど自分ではなく他人に、それも女性にきちんと自分を承認してもらいたいという気持ちは強いですね。それが愛の根本だと思うんです。僕はやっぱり、自分が彼女にとって唯一無二の存在だと確証を得られないと結婚できないような気がします」
うーん、人はそこまで考えて結婚していくものなのだろうか。もう少し気楽に考えてつきあってみて、相性が合えば結婚することも可能なのではないだろうか。彼にそう言ってみたが反応は薄かった。