自分を好きでいてくれる男……つまり?
以前、「信者がほしい」と叫んでいた女性がいた。絶対に自分を裏切らない、いつでも自分のために駆けつけてくれる存在がほしいのだ、と。彼女は彼と別れたばかりだったのだが、その原因は、彼の浮気によるものだった。
恋人はいるけれど……
「恋人はいるけど信者がほしい、すごくよくわかります」
そう言うのはリナさん(40歳)だ。10年近く同居しているパートナーがいるが、それと「信者」はまったく違う。恋愛感情を露わにせず、だが自分のことを心から愛してくれ、自分のためだけに動いてくれる男性。それが「信者」なのだという。
「その昔、いたんですよね、そういう人が。おそらく彼は私のことを好きでいてくれたと思う。私も彼には好感をもっていたけど、恋愛感情ではなかった。でも彼は仕事の愚痴を聞いてくれたり、私が出張のときは朝早くから車を出して空港への送迎をしてくれました。PCを直してもらったこともあった。とにかく私が生活しやすいようなサポートを惜しまないんです」
だが彼は、実家を継ぐために遠方へと帰っていった。「いつかまた」と言い残して。彼とは今も交流があるが、近場にいないためサポート役としては不適格だ。
「一途な男っていいですよね。当時、友だちは私が彼の恋愛感情を弄んでいるだけだと言ったけど、今思えば、そうではないような気がするんです。彼にとっても、私は"恋人"としては不適格だったのではないかと。でもしゃしゃり出ることなく一途に私を見守り、いつでも手を差し伸べてくれた。そういう存在は必要です。対等な関係は悪くないけど、ときどき疲れます」
リナさんの言葉を聞いていて、ふとこれは「理想の父親像」なのではないかと思った。
ひたすら見守ってくれる
説教はしない、ひたすら見守り、頼めばサポートしてくれる。大人になってから、女性は男性にそんな理想の父親像を求めていないだろうか。
「うち、両親が離婚しているので私は父親像というものが明確にはつかめないんです。ファザコンだという自覚はあるけど、どういうファザコンなのかもよくわかっていない。言われてみれば、"信者"は父親と言い換えることもできるかもしれません」
自分が他の男性とつきあっていることがわかっても、信者には温かい目で見守ってほしい、決して文句は言わずに。そして傷ついたときには慰め、励ましてほしい。それはやはり、ある種の父性への欲求ではないだろうか。
今期のTVドラマでは、『一途な男性』が話題になっているという。ずっと恋心を抱きながらも、それを表に出さずにひたすら彼女の役に立つようがんばる男性たちを、女性たちは潜在的に欲しているのだ。
それだけ女性たちが疲れている時代なのか、はたまたリナさんが言うように「対等でなくてはいけないことにときどき疲れて」しまっているのだろうか。