弁護士ドラマが進化している
『グッドワイフ』『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』『イノセンス 冤罪弁護士』と弁護士ドラマが目立つ冬シーズン。前クールの『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』と『SUITS/スーツ』も印象的だ。なぜ弁護士ドラマが多いのか。社会背景や他のジャンルとの比較からその魅力と理由を探ってみたい。
なぜ今弁護士ドラマなのか~弁護士ドラマを探る4つの視点
1.刑事~民事まで!幅広い謎解き案件
弁護士ドラマのおもしろさは謎解きにある。「観たい」「知りたい」という好奇心が視聴につながるのだが、刑事ドラマだと殺人事件が主流。その点、民事もある弁護士ドラマはテーマが豊富だ。リストラ、離婚、遺産相続、尽きない社会問題には身近な内容も多く、興味は高まる。
また、スクールロイヤーや刑事専門、会社の顧問弁護士など専門的な弁護士ドラマや、変装して潜入する探偵ドラマのようなもの、事務所の数字に右往左往する経済ドラマの視点を持っているものなど、切り口は豊富。法廷に終始する作品から、裁判にとらわれない作品まで、弁護士ドラマにボーダーはない。
2.論理と奇策によるスペクタクルな逆転劇
物語のポイントは劣勢からの逆転劇。逆転時の高揚感と達成感はドラマの核であり、最近どの作品にも組み込まれている。この逆転劇を成功させるには2つの要素が必要だ。
1つは「わかりやすさ」。縁遠い司法の内容が、テロップやイラスト、劇中の再現ドラマなどの解説でわかりやすくなることはドラマの強みと言えるだろう。もう1つは、「論理性を維持しながら奇策に出ること」。正論なのか屁理屈なのか、『リーガル・ハイ』の古美門流マシンガントークや、『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』のショーアップされた記者会見も逆転劇を演出している。
3.科学の視点で攻める!大掛かりな実験
論理と奇策で導き出した事実を立証するため、あるいは真犯人を探り当てるための実験にも積極的だ。
以前は小回りの利く小さな事務所が舞台になるケースが多かった弁護士ドラマも今や大手の時代である。相容れない個性的な先生たちが、やがてまとまり、本丸に挑む流れをあの手この手で描いているわけだが、チームあっての実験ドラマ。
イノセンス 冤罪弁護士』の実験は驚くほど大掛かり。実験が始まることで、解決も近いなとなんだか明るい気持ちになれる。『99.9 刑事専門弁護士』も実験が多かった。こちらは被験者も含めワイワイとにぎやか。「新発見」の目撃者になれる楽しさもあった。
4.ファッショナブルでドラマチックな登場人物
最近のドラマはリアル優先。『あぶない刑事』は別として、捜査会議はダークスーツ一色だし、医療ドラマも基本白衣だ。ネクタイをゆるめる、ボタンを外すなど、小さな主張はあるものの、制服仕事の限界がある。
一方弁護士たちは、法廷でない限り、パーカーあり、蝶ネクタイあり、カラフルスーツありで華やか。『グッドワイフ』も『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』もファッションに主張があり、見ていて楽しい。そこに登場する、おしゃれで勝気で凛と働く女性たちへの想いは、いつしか自分へのエールになっていることも少なくない。
広くて深い 弁護士ドラマはまだまだ進化する
ここまで4つのポイントで弁護士ドラマの魅力を紐解き、人気を考察してきたが、伸びしろもある。謎解きにおいて専門性は不可欠だが、事件を起こしているのは専門性のない人間たち。事件解決への道のりは複雑なのに、そもそもの動機や背景がしっかりしていない物語はちょっと残念だ。スペシャリストたちの見事な手腕も色あせてしまう。この点においてもていねいに表現されたドラマが、また新しい時代を築くだろう。
正義とは何かを問う重厚な作品から駆け引きを楽しむポップな作品まで、幅広い弁護士ドラマから、ぜひお気に入りの作品を見つけて楽しんでほしい。