子どものいない夫婦の場合、不倫したら離婚しやすいのではないかと世間は思うかもしれない。だが、相手に子どもがいるケースもあるし、そもそも恋愛と結婚は違うので、なかなかすぐに離婚というわけにはいかないようだ。
子どもはいない、けれど……
一回り年上の男性と結婚して20年、子どもはいないが夫婦は仲良しというモエコさん(49歳)。夫は65歳になれば定年だが、今はまだ共働きだ。
「夫が年上で穏やかな性格だから、うちは結婚したころからほとんどケンカした記憶がないんです。子どもは自然に任せていました。40歳になったとき、どうやら無理みたいねと言ったら、『僕はきみがいればいい』と。そこで話し合って子犬を飼うことに。もう彼はベタベタです。子どもがいたらいい父親になったんだろうなと思いますね」
だが子どもがいなかったために、平日でもふたりが大好きなジャズクラブへ出かけたり、週末は子犬を連れてドライブしたりと楽しみはたくさんある。
「でも私、5年前から不倫しているんです。相手は4歳年下の独身。知り合ったとき、彼はまだぎりぎり30代だったんですよね。夫とはレスではありません、今も。彼とも会うたびセックスします。夫とのセックスは愛情確認、彼とは情熱のぶつけあいかな」
モエコさんはそう言って笑った。不倫をしている罪悪感は「ない」と言いきる。なぜなら夫への愛情と彼への愛情は違うから。
「彼は最初のころ、よく離婚して一緒になってと言っていました。だけど結婚は日常生活だから、私は夫と日常生活を穏やかに送りたい。彼とは恋愛として激しく情熱的に愛し合いたい。そう伝えました。そうしたら彼も、考えたら自分には結婚生活は向いてないかもと言い出して」
そこで結婚と恋愛が両立したのだそうだ。彼と会うときは、夫には「友だちと会うから遅くなる」と連絡する。夫が詮索してくることはない。
「恵まれた環境にいる。本当にそう思います」
彼の子が成人になるまで
自分に子どもはいないが、不倫相手に子どもがいる場合もある。
「離婚して、なんて言えません。彼はときどき、『子どもが成人したら考える』と言うけど、離婚されたらかえって私が引いちゃうかもしれませんね」
イクエさん(43歳)は、2歳年上の夫と結婚して10年。仕事関係で知り合った3歳年上の彼とは2年のつきあいになる。
「夫とは恋愛時代も含めると15年のつきあい。そう簡単に夫との関係は崩せません」
彼の子は15歳と13歳。あと7年たてば下の子も成人になるが、イクエさんは「彼も本気で言っているわけではない」と感じている。
「不倫の恋の場合、いつか一緒になりたい、一緒になろうというのが本気の愛であることの証明みたいなものなんじゃないですか。でも本気かどうかは自分が決めること。結婚したから本物だというわけではない。私は彼に対して本気で恋愛しています。でも結婚に結びつくことがベストだとは思わない」
逆に言えば、夫に対する「恋愛感情」は、ほとんどないのだという。だが、夫は生活必需品。いなければ彼女の生活が成り立たない。
「よく夫とは家族愛みたいな言い方をするけど、私にとってはそういう感じでもないんですよね。私にとっての家族は、やはり両親やきょうだいなので。ただ、夫は、いて当然の存在。空気や水みたいなもの。なければ生きていけない。だからといって肉親ではない。冷たい意味ではないんですよ。相手の存在に敬意を払っているんです。それもひとつの重要な愛情ではないでしょうか」
多くの妻が、「夫とはもう家族。だから恋愛感情がもてない」と言う中、イクエさんの「夫観」はなかなかレアだ。だがその分、彼女の実感がこもっている。
子どもがいなくても、不倫したからといってそれが結婚に結びつくわけではない。恋愛と結婚はまったく別のものと分けて考えている女性が、今は多くなっているのかもしれない。