1月5日に開幕したサッカーアジアカップ。日本代表は格下と目されたトルクメニスタン、オマーンにそれぞれ3-2、1-0と最少得点差で勝利した。どちらも決して手放しで称賛できる内容ではなかったが、日本人に欠けているといわれてきた要素の成長がみえる試合となった。
過去の日本とは違った!攻めの修正力を見せた初戦
トルクメニスタン戦の前半は非常に苦しい内容だった。相手が固めるゴール前を細かいパスできれいに崩そうとして逆にカウンターを食らう。危惧されていた、日本がアジアレベルで陥りやすい状況だ。メンタル面でも、日本は慢心や油断とまではいかないが、どこか一戦必勝という思いが欠けていたようにみえた。
しかし後半、日本代表は主に攻撃面で大きく修正した。両センターバックが、本来ボランチがプレーするエリアまでボールを運んで配給することで全体を押し上げ、両サイドバックが高い位置へ。相手の5バックに対し5人をぶつけるような形で相手の守備網を間延びさせ、さらに後ろからのオーバーラップで時に数的優位を作り攻撃を仕掛けた。
特に原口元気(ハノーファー)、長友佑都(ガラタサライ)とボランチの冨安健洋(シントトロイデン)が有機的に絡んだ左サイドの攻撃は、最後まで相手を翻弄。結果的にそのエリアを徹底して突くことで、逆転勝利を掴んだ。
もちろんリスクはあった。サイドバックの裏には広大なスペースができ、そこにボールが出されていれば大ピンチ。そのリスクと攻撃面のメリットを天秤にかけ、お互いの実力差を冷静に見極めて攻撃に人数を割いたのだ。最後の1失点も精神的な緩みからくるもので大会中に修正できる問題だろう。
プレーにみえたメンタルの成長
今まで、格下相手であれば「いつも通りやれば勝てる」と自分たちのサッカーを貫こうとするのは、日本人の悪癖であり、多くの外国人監督やプレーヤーから「日本人は相手が嫌がることをできない」「日本人は言われたことしかできない」と言われ続けてきた。
しかしこの試合では、『相手の嫌なところを試合の中で引き出し、徹底して突く』また、『個々が自らの判断でそのためのポジション取りをする』というサッカーを体現。新生日本代表のチームとしてのサッカーIQの高さを感じさせた。
意図的に試合を殺してみせた第2戦
第2戦のオマーン戦では攻撃の軸である大迫勇也(ブレーメン)の不在が響いた。代わりにFWで起用されたのは北川航也(清水エスパルス)。大迫のようなポストプレーヤータイプではなく、これまでの森保ジャパンの攻撃パターンは影を潜めた。
それでも奪ってから縦に早いショートカウンターや、マークが曖昧な相手左サイドを徹底してつき、チャンスを作った。日本にPKが与えられた場面とオマーンのPKが見逃された場面、2つの幸運なジャッジに恵まれて前半を折り返す。
後半、相手が守備に修正を施すと、大迫不在も響いて攻撃の糸口を見出せなくなるが、無理に攻めることはせず、ラッキーで生まれた最少得点差で勝ち切るという判断をした日本代表。のらりくらりと相手の攻撃をかわしながら試合を終わらせた。
プレーにメリハリをつけて導いた勝利
イニエスタら大物助っ人にJリーグの欠点をあげてもらうと必ず言われるのが「緩急がない」ということ。しかし、海外組の多い日本代表レベルでは、この欠点も克服できてきているようにみてとれた。
もちろん試合を殺しながらもカウンターでとどめを刺すことが理想であり、それができなかったのは反省点。中東ではかなり珍しいが日本に有利なジャッジが味方したこともある。しかし内容が良くないなりに勝ちを掴み取るのが本当に強いチームの証だ。そこに関しては評価すべきだろう。
日本代表の“勝ち方”の変化
過去の日本代表もアジアレベルでは“ロスタイムの奇跡”といえるような同点劇や逆転劇を見せてきた。しかし今大会の日本の勝ち方は少し違う。相手の穴を引き出し徹底して突いたり、相手をいなしたりと、勝つべくして勝つ必然の勝利だった。
ワールドカップなど短期決戦の大会で優勝する列強国にはハードスケジュールの中で、体力を温存しながらも勝ちきる試合が必ずある。
日本もアジアレベルではそういった試合運びができるようになってきたということだろう。
今後決勝トーナメントで同格の相手と当たった時にどのように戦うのか、またどのような課題が見えてくるのかに注目である。