既婚者なのに「片思い」に沈みこむ私

既婚者だって誰かに恋心を抱くことはある。抑制すればするほど気持ちは燃え上がるかもしれない。だがその「片思い」の気持ちをひきずってしまうとどうなるのだろうか。

既婚者だって誰かに恋心を抱くことはある。抑制すればするほど気持ちは燃え上がるかもしれない。だがその「片思い」の気持ちをひきずってしまうとどうなるのだろうか。
 

リエさん(46歳)は、結婚して13年、12歳のひとり娘がいる。娘の習いごとにかなりお金がかかるため、リエさんは3年前から仕事を再開した。

「昔やっていた金融関係の仕事に復帰したんですが、フルタイムは無理なのでパートで働いています。その職場で知り合ったのが20歳も年下のKさん。若くてかわいくて、それでいてときどき男らしい姿勢も見せてくれる。私には娘しかいないので、こんな息子がいたらいいなあとは思っていたんですが、ふと気づくと恋をしていました」

彼を見るために職場に行き、彼とともに仕事に精進したい。そう思うようになっていた。

「あるとき、パートも交えた飲み会があって、私はKさんとも初めてプライベートなことまで話をしたんです。その後、彼はひどく酔ってしまったので、たまたま帰る方向が同じ私が一緒に電車に乗りました。すると彼、『ひとりで帰れない』と言い出して。甘えた感じがかわいくて、アパートまで送って行ったんです」

玄関のドアを開けて中に入った彼の靴を脱がせ、ベッドまで肩を貸した。すると彼はリエさんをベッドに押したおしたのだ。

「彼の唇が近づいてきて……。キスをしてしまいました。もちろん、私は彼を押しのけて立ち上がり、部屋を出て行きましたけど」
 

彼は覚えていないようだが恋心は募るばかり

翌日、会社に行くと、Kさんが近づいてきた。

「昨日は申し訳ありませんでしたと謝られました。私が送って行ったことも覚えてないようだったので、もちろんキスしたことも記憶にないでしょう。そう思ったとき、ほっとしたような悔しいような複雑な気持ちでした」

その半年後、彼は別の営業所に異動になった。送別会で彼はリエさんにそっとつぶやいた。

「僕、リエさんのことが好きでした」
「大人をからかうもんじゃないわよと笑い飛ばしたけど、そこから私、ますます彼のことが好きになってしまったんです」

好きになってもどうにもならない。どうにもならないとわかっているから、なお気にかかる。恋とはそういうものだろう。

「彼がいなくなった職場で仕事をしていると、ときどき涙が出てきてしまう。家でもぼんやりして娘の話を聞いていなかったりするし。夫には『疲れているんじゃないか』と心配される。いつか片思いから抜けられると思ったけど、あれから2年、まだダメなんです。彼のことを考えると胸が苦しくて。あと1年くらいで彼がまたうちの部署に戻ってくるという噂もあって、そういう話を聞くたび泣けてきてしまって」

彼女は目に涙をためている。苦しい片思いに身を焦がしているのだ。はたから見たら、ばかばかしい話だと思うと彼女はつぶやいた。自分を客観的に見る目も失っていない。だからこそ、よけい苦しいのだろう。恋はときに残酷である。

どうしたらいいかなんて誰にもわからないが、いつかこの苦しさを懐かしいと思う日が来るかもしれない。あるいは戻ってきた彼と、なんらかの進展があるのかもしれない。それは神のみぞ知るということなのだろうか。

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • 世界を知れば日本が見える

    韓国の戒厳令、尹大統領はなぜ突然「乱心」したのか。野党だけではない、北朝鮮とアメリカからの影響

  • ヒナタカの雑食系映画論

    独断と偏見で「2024年のホラー映画ランキング」を作成してみた。年末に映画館で見るならぜひ第3位を

  • ここがヘンだよ、ニッポン企業

    「あれは全て私がやりました!」 わが社の“承認欲求モンスター”をどう扱うべきか?

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    静岡の名所をぐるり。東海道新幹線と在来線で巡る、「富士山」絶景ビュースポットの旅