高校サッカーを見る際に耳を澄ましてしまうのは、サッカー部の応援団長として各校の応援を自軍に取り入れられないかと意識しながら見ていた筆者だけだろうか。高校サッカーの魅力はプレーだけではないのだ。
応援の1番の魅力は個性からチームや学校の空気を感じ取れるところ。例えば、その年に甲子園にも出場した高校は、迫力がすごい。1度全校応援を経験しているからか、どこか学校全体が応援慣れしているようだ。
オリジナル?プロチームのいいトコ取り?らしさが出る選曲
現在JリーグにはJ3まで含めると54の加盟チームがある。各チームには自分たちの思いを込めたオリジナルソングがあり、高校サッカーではその中から自分たちの色に合っているものを選んで歌われることが多い。
地元のJチームの応援歌(チャント)を中心に歌うこともあれば、各チームの名曲ベストアルバムのようなチームもある。またメロディだけ拝借して自分たちらしい歌詞に変えているのも、聴いている側としては楽しい。
もちろんオリジナルの応援もある。筆者が観戦した東京予選では、新興勢力の大成高校が強豪と対戦する際に、DA PUMPの『U.S.A』の替え歌で「カモンべイビー大成!俺たちの方が強い!!」と選手を強気で後押ししていたのが勢いと自信を感じさせた。
強い気持ちが伝わる男子校の名物応援
少人数でも力強い応援が男子校だ。男子校の応援にはブラスバンドがないところも多く、とにかく野太い。時々聞こえる黄色い声援もほとんどお母さん。今大会にも複数の男子校が出場しているが、中でも部員200名を超える優勝候補、東福岡の応援は迫力がすごい。
そんな男子校の応援で名物になっているのが、飛び跳ねながら歌う「飛ばないやつは共学」コール。Jリーグのアビスパ福岡が、隣県のクラブで絶対負けられない相手であるサガン鳥栖と対戦する際に、「飛ばないやつはサガン鳥栖」と相手をあおるために歌ったのが元ネタだ。これが共学にだけは負けたくない全国の男子校に広まり今では男子校名物のようになっている。
この「共学だけには負けたくない」という気持ちが込められているところがこの応援のポイントなのだが、対戦相手も男子校なのに歌ってしまったチームもあった。2017年のインターハイ栃木県予選での真岡高校だ。対戦相手の栃木高校も同じコールで応戦し、最後には両校の生徒が肩を組んで「飛ばないやつは共学」を歌っていた。男子校同士の謎の仲間意識が生まれており、この模様を収めた動画は話題となった。
楽しいご当地応援
地域色を感じられる応援も楽しい。東京都葛飾区の修徳高校応援団が肩を組んで歌う、こち亀のテーマソング『葛飾ラプソディ』は今や名物だ。
2017年度の高校選手権の青森山田高校対長崎総科大付属では微笑ましい交流があった。長崎総科がゴダイゴの『ビューティフルネーム』のリズムに合わせて「リンゴよりカステラ リンゴよりカステラ」と歌うと、青森山田が「カステラよりリンゴ カステラよりリンゴ」と応戦。その後、青森山田の「カステラ大好き」コール、長崎総科の「青森大好き」コールが続き、会場は温かい雰囲気に包まれた。
このように高校サッカーはピッチ上だけではなく、応援にも青春を感じることができる。是非、高校選手権を見る際は耳でも楽しんでいただきたい。