12月9日の天皇杯決勝をもって、2018年シーズンのJリーグ関連の大会はすべて終了した。国内3大タイトルと呼ばれるJ1リーグ、リーグカップ、天皇杯を振り返りながら、日本サッカーのこの1年を総括していく。
攻守にスキなしの川崎フロンターレがJ1を連覇
J1リーグは川崎フロンターレが連覇を飾った。就任2年目の鬼木達監督のもとでリーグ最多得点、同最少失点を記録した。3月下旬から4月中旬にかけて4試合勝利から遠ざかったものの、シーズンを通してみれば安定感のある戦いで勝点を積み上げていった。攻守ともにスキのない戦いぶりは、他チームの一歩先をいっていた。
2位のサンフレッチェ広島と4位の北海道コンサドーレ札幌は、ともに就任1年目の監督のもとで躍進を遂げた。広島はJ1で3度の優勝を誇る名門だが、17年はJ1残留争いに巻き込まれていた。しかし、J1の複数クラブを指揮した経験を持つ城福浩監督のもとで、シーズン終盤まで優勝争いをリードした。
札幌の4位は過去最高成績である。広島と浦和レッズで通算11シーズンにわたって采配をふるってきたミハイロ・ペトロヴィッチ監督に指揮権を託し、大きな飛躍を遂げた。
3位の鹿島アントラーズにも触れるべきだろう。ACLことAFC(アジアサッカー連盟)チャンピオンズリーグで初優勝を飾り、リーグカップ、天皇杯ともにベスト4まで勝ち上がった。過密日程の影響でケガ人が絶えなかったが、J1リーグでも3位に食い込んだ。
そして、12日開幕のクラブW杯にアジア代表として出場する。J1リーグ、リーグカップ、天皇杯の3大タイトルの獲得数が国内最多の名門は、18年も伝統の勝負強さを見せつけたと言っていい。
湘南が24年ぶりのタイトル獲得
リーグカップは新たな王者を生んだ。湘南ベルマーレが94年元旦の天皇杯優勝以来となる3大タイトルを獲得したのである。
曺貴裁(チョウ・キジェ)監督が就任7年目を迎えた湘南は、キックオフから試合終了まで走り続ける“ノンストップ・フットボール”を展開する。親会社を持たない市民クラブゆえに予算に限りがあり、主力選手を他クラブに引き抜かれる現実に直面してきたが、それでもブレないスタイルを確立した。
その成果が、リーグカップの獲得である。J1リーグでも13位で残留も果たし、クラブ創立50周年に花を添えた。
天皇杯を制した浦和レッズ
天皇杯を制したのは浦和レッズだ。
18年はJ1リーグ序盤で大きく躓き、4月に監督交代へ踏み切った。かつて鹿島でJ1リーグ3連覇を果たしたブラジル人のオズワルド・オリヴェイラ監督就任後は徐々に本来の力を取り戻したものの、リーグカップではJ2のヴァンフォーレ甲府に敗れてベスト8入りを逃した。J1リーグでも5位に終わっていただけに、天皇杯は譲れないタイトルだった。
12月9日の決勝では、ベガルタ仙台を1対0で退けた。東京ヴェルディとの4回戦から4試合連続の無失点ゲームは、僅差の攻防を制していくオリベイラ監督のサッカーの浸透を示すものだっただろう。12大会ぶり7度目の優勝により、浦和は19年のACL出場権も獲得した。
2019年、J1リーグを戦うチームは?
J2からJ1へ昇格するのは、J2優勝の松本山雅と同2位の大分トリニータだ。J2の上位によるJ1参入プレーオフを制した6位の東京Vは、J1リーグ16位のジュビロ磐田との参入決定戦(入れ替え戦)に敗れた。
一方、J1からJ2へ降格するのはV・ファーレン長崎と柏レイソルだ。17位の柏は前年なら14位に相当する勝点39あげながら、無念の降格となった。
J3はFC琉球が制し、2位の鹿児島ユナイテッドとともにJ2昇格をつかんだ。どちらのチームも、初のJ2へのチャレンジとなる。
元日本代表の川口能活が引退
最後にもうひとつトピックスを紹介したい。元日本代表のGK川口能活が、18年限りでの現役引退を発表したのだ。
J3のSC相模原で迎えたシーズン最終節で、川口はチームを1対0の勝利に導いた。43歳になった守護神の最後の雄姿を見届けようと、この試合にはクラブ史上最多の1万2千人をこえる観衆が集まった。日本代表でともに一時代を過ごした楢﨑正剛(名古屋グランパス)、現日本代表の中村航輔(柏レイソル)らもスタジアムに駆けつけた。
98年から10年まで4大会連続でワールドカップのメンバーに選ばれ、歴代3位の国際Aマッチ116試合出場を記録した川口は、日本サッカーの歴史に力強い足跡を残した。その功績を改めて讃え、大きな拍手を捧げたい。