格下キルギスに快勝したが……
キルギス戦の先発メンバーには、これまで出場機会の少なかった若手と中堅の選手が並んだ。それでも、キックオフ直後の2分に左サイドバックの山中亮輔が日本代表デビュー戦で初ゴールを奪う。19分にはロシアW杯代表メンバーの原口元気が、直接FKを決めて2点目を奪った。
キルギスとの力関係を考えれば、さらなるゴールラッシュが期待された。実際にチャンスを作り出した。しかし、2対0のまま前半は終了し、後半が15分を過ぎてもスコアは変わらない。
森保 一(もりやす はじめ)監督はロシアW杯メンバーの柴崎岳と大迫勇也、ロシアW杯後の新体制で結果を残している堂安律を途中出場させる。さらに、槙野智章の負傷でキャプテンの吉田麻也がセンターバックに入る。
ヨーロッパのクラブでプレーする4人が登場したことで、ピッチ上の色彩が変わっていく。そして72分、大迫が待望の追加点を奪う。
その直後に中島翔哉と南野拓実が投入されると、すぐに大迫、南野、堂安とパスがつながり、最後は中島がゴールネットを揺らす。森保監督の指揮下で脚光を浴びている攻撃のカルテットが結果を残した一方で、スタメンのチャンスを与えられた選手たちは彼らを上回るインパクトを残せなかった。
現状はタレント不足ではない
こうした状況から、「スタメンと控えの実力に開きがある」との声をあげるメディアもある。
そのとおりではある。ただ、状況はすぐにでも好転する。
というのも、ロシアW杯メンバーのDF昌子源、植田直通、MF香川真司、山口蛍、大島僚太、FW岡崎慎司、乾貴士、武藤嘉紀、宇佐美貴史らが、今回の2試合には招集されていないからだ。ロシアW杯のメンバーからは漏れたが、同アジア最終予選で活躍した久保裕也や浅野拓磨も、ベネズエラ、キルギスと戦ったチームに加わっていない。
彼らが選ばれないのは、所属クラブで十分な出場機会をつかんでいないことや、それに伴ってコンディションが万全ではないことなどが理由だ。久保や浅野と同じく最終予選でチームに勝利をもたらした井手口陽介は、ケガにより長期離脱中だ。10月のウルグアイ戦に出場したベテランの長友佑都は、体調不良により招集を見送られた。
こうした選手が森保監督を納得させるパフォーマンスを取り戻せば、2022年のカタールW杯を見据えた世代交代を実現しつつ、戦力的にも充実したチームを編成することができる。長く代表チームを支えてきた長谷部誠や本田圭佑が退いたいまも、人材不足に陥っているわけではないのだ。
もちろん、すべてのポジションが選択肢豊富なわけではない。来年1月開幕のアジアカップでは、長友が不在の左サイドバックに誰を起用するのかがポイントになるだろう。川島永嗣の後を継ぐGKも不確定だが、だからといってチームの総合力が極端に落ちることはない。
キルギス戦後の記者会見で、森保監督は「国内だけでなく、海外でプレーしている力のある選手もいる」と話した。今週末には監督就任後初の欧州視察に向かい、これまで招集していない選手の状態もチェックする。
来年1月開幕のアジアカップに、森保監督はどんなチームで臨むのか。不安よりも楽しみのほうが大きいのである。