親の介護をし続けて40代に突入した独身女性たち

ドラマ『黄昏流星群』が話題になっている。家庭のある瀧沢完治(佐々木蔵之介)が社内のごたごたに巻き込まれて左遷され、ひとり旅に出かけた先のスイスで出会った女性が目黒栞(黒木瞳)だ。栞は、親の介護をしているうちに結婚しそこない、いまだ独身という設定。こういう女性、実際にも案外少なくないのである。

ドラマは決して他人事ではなく

ドラマ『黄昏流星群』が話題になっている。家庭のある瀧沢完治(佐々木蔵之介)が社内のごたごたに巻き込まれて左遷され、ひとり旅に出かけた先のスイスで出会った女性が目黒栞(黒木瞳)だ。

栞は、親の介護をしているうちに結婚しそこない、いまだ独身という設定。こういう女性、実際にも案外少なくないのである。
 

仕事も中途半端、結婚もできず

ユウコさん(45歳)も、親の介護に人生のほとんどを捧げてきた。大学を出て第1希望の会社に入って3年で、母が倒れた。


「当時、私が25歳。うちは弟と妹がいて、弟は大学生、妹はまだ高校生だった。父は会社員だから毎日出社するしかない。最初は私が家事もやっていたんですが、母が自宅療養をすることになって状況が変わりました」

脳梗塞で倒れた母の後遺症は案外重く、ひとりでは伝い歩きをするのがやっと。ある日、誰もいない時間帯に母が転び、大腿骨を骨折したとき、ユウコさんは退職を決意した。

「母はまだ51歳だったんです。誰もいない家でトイレに行こうとして転んだ母を思うと、もうひとりにはさせておけないと思って。その後、リハビリも必要でしたから。私が退職して家事と介護をやると宣言しました。父は『悪いな』と言ったけど、家族全員がそれでほっとしているのがわかったから、しかたがないな、と」

それから14年後、母は再度、脳梗塞を起こして逝った。弟はすでに家を出て結婚しており、妹も結婚して遠方に住んでいた。

定年退職した父とふたりでどうやって暮らしていこうと考えているとき、今度はその父が倒れた。ユウコさんが39歳のときだ。母が逝って半年後のことだった。

「それから今に至っています。結局、私の社会人生活はたった3年。それから20年、介護生活をしています。父は入退院を繰り返していて。私の人生、なんだったのかなと最近、つくづく考えます。この20年、恋愛すらしていませんからね」

ユウコさんは震えるような声でそう言った。
 

不倫に走る気持ちはわかる

同様に介護生活19年というカナさん(40歳)。彼女は大学を中退して親の介護にあたってきたため、社会人生活も経験していない。

「父を見送って、今は母とふたり暮らしです。ひとりっ子だし、親のめんどうを見るのは当然だと思ってきたけど、たまには私も外に出たい。最近、母の要介護度が上がったのでヘルパーさんが来てくれるようになり、その時間は私も外に出られるようになりました」

事情を知った高校の同級生たちがある土曜の午後、彼女のために集まってくれた。そこで再会したのが、高校時代つきあっていた彼だった。

「あちらは結婚してますけどね。ただ、私の話を聞いて彼がいたく同情してくれたみたいで、その晩、すぐにLINEで連絡が来て。私も甘えない範囲で友だちとしてまたつきあっていけたらいいなと思ったんです」

時間を見つけて彼と会った。彼は自営業なので、彼女に時間を合わせてくれた。

「もともと嫌いで別れたわけじゃないし、卒業して疎遠になっただけなので恋心が芽生えてしまって。いけないと思いながらも、つきあうようになりました」

それから1年、つきあいは続いている。今では彼がいるから、この介護生活に耐えられると感じるようになった。

「これでいいのかと思うこともありますけど、今は彼がいないと生きていけない。迷惑をかけないように密かに続けていけたらと願っています」

彼女にとっては、彼との関係が唯一の社会との接点なのかもしれない。この恋の火が消えないようにと願う気持ちが手にとるように伝わってきた。

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • 世界を知れば日本が見える

    韓国の戒厳令、尹大統領はなぜ突然「乱心」したのか。野党だけではない、北朝鮮とアメリカからの影響

  • ヒナタカの雑食系映画論

    独断と偏見で「2024年のホラー映画ランキング」を作成してみた。年末に映画館で見るならぜひ第3位を

  • ここがヘンだよ、ニッポン企業

    「あれは全て私がやりました!」 わが社の“承認欲求モンスター”をどう扱うべきか?

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    静岡の名所をぐるり。東海道新幹線と在来線で巡る、「富士山」絶景ビュースポットの旅