最初から遠距離結婚を選ぶ女性たち
最近、「遠距離結婚」を選ぶ女性たちの話をときどき聞くようになった。結婚してからの単身赴任ではない。最初から遠距離のまま結婚するのだ。「結婚したら一緒に住む」のが当たり前だった時代から、女性たちの意識は、さらに進化してきているのかもしれない。
お互いに仕事を大事にしたいから
帰国子女という立場を活かして、都内の商社でキャリアを積んでいるリサさん(40歳)が、関西で商売をしている彼(41歳)と婚姻届を出したのは1年前。つきあって5年たったころだった。
「私は仕事柄、海外へもよく行くし、何かあったときに彼に身元引受人になってほしいなと思ったんですよ。すでに両親が他界しているので。だけど仕事は辞めるつもりはない。彼にそんな話をしたら、『じゃあ、このままで結婚しようよ』と。休みを合わせてときどき会えばいい、長い休みがとれたら旅行に行けばいい、いつか一緒に住みたくなったら住めばいいと言われて、こんなに自由でいいんだと嬉しくなりました」
彼は親から継いだ商売を広げようとがんばっているところで、ふたりとも今は仕事をしていたいという思いが強い。だったらそのままでいい、愛の証として婚姻届を出そうということになったのだという。
「結婚してからも自由ですよ。私は人間関係も仕事も何も変わってない。彼もそうだと思います。時間がとれそうなときは会いますが、最近はむしろお互いに時間を合わせて作り出して、なるべく月に2日くらいは一緒にいるようにしています」
結婚してから安心感が大きくなって、ますます仕事に集中できるようになったとリサさんは言う。こんな結婚も素敵ではないだろうか。
つきあっているうちに遠距離になってしまった
もうひとりは、つきあっているうちに遠距離になってしまい、そのまま関係が続いて、つい最近、婚姻届を出したというミカさん(43歳)だ。
「5歳年上の彼とは知り合って10年、つきあって6年くらいになります。5年ほど前に彼のおとうさんが倒れて、彼は北海道の実家に帰って向こうで仕事を見つけたんです。私もときどき遊びに行っていました。結婚の話は出たり出なかったりしながら、それでもなんとなくつきあいが続いて」
ただ、ミカさんの両親ももう80歳近い。ひとりっ子だから仕事をしながら、両親の介護を考えていかなければならない。
「会ったときにお互いの環境を報告しながら、なんだか不安だねという話になったんですよ。これからも協力しながら生きていこうと話したとき、それなら結婚しちゃおうかと私が言いました。彼もそれがいい、と。結婚と同時に彼は部署が変わり、月に1回は東京の本社に来るようになりました。これからまた状況が変わるかもしれないので、そのつど一緒に考えていこうということになっています」
遠距離結婚は、しょっちゅう顔を合わせているわけではないからケンカしなくてすむこと、いつ会っても新鮮で恋愛感情を抱いたままでいられることなどをリサさんは挙げた。
「結婚なんてしなくてもいいやと思っていたんですが、この年になるとやはり漠然とした不安が強くなってきて。いつでも味方がいると思うと心強い」
今はスマホで毎日連絡がとれるし、なにより「結婚した」という安心感がリサさんの気持ちを強くしているという。
一緒に住むのも遠距離でも、お互いの合意があれば結婚の形も自由に選択していったほうがいい。いずれも晩婚の範疇に入るのかもしれないが、こういう女性たちが増えていることは心強い気がしてならない。