浮気、借金、暴力が離婚の三大理由と言われて久しい。今も変わりはないのかもしれないが、それ以外の理由で別れる女性たちも少なくない。では三大理由以外で女性が離婚を決意する理由は何なのか。それを探っていくと、「今どきの夫婦のありよう」や「妻が夫に求めること」などが見えてくるかもしれない。

離婚理由は「イヤになったから」。49歳、ユカリの場合

「なにもかもイヤになって夫から逃げたかった。それが離婚理由だから、私にこらえ性がなかったというだけかもしれませんね」 苦笑しながらそう言うのはユカリさん(49歳)だ。

1年前に家族3人はバラバラになった。 結婚したのは28歳のとき。もうじき20歳になるひとり息子がいる。結婚したのは親戚の紹介だったというから、見合いのようなものだろう。

「バブルが弾けてしばらくたったときで、勤めていた会社をリストラされたんです、私。意気消沈していたら、親戚が『知り合いにいい人がいるよ』と」

5歳年上の彼に会ってみると、有名企業に勤めていて実直なイメージ。結婚するにはいいかもしれないと思ったという。

「実はリストラされる直前、当時つきあっていた彼にフラれていて。3年つきあっていて結婚も考えていたのに、私の友だちとできてしまった。もうね、あのころは地獄でしたよ。恋人にフラれて仕事も失って」

そんなとき実直そうな人に会ったのだから、結婚になびいても不思議はない。3回会って結婚を決め、半年後には式を挙げた。

「最初は社宅住まいでした。でも新婚旅行でも帰ってきてからも、夫はセックスしようとしないんです。私は子どもがほしかったから、3ヶ月くらいたったときに『子どもがほしいんだけど』と言いました。すると夫はわかった、と。でも手を出してこない。夫は悪い人ではないけど、基本的に無口で何を考えているのかよくわからないんです。当然、私もなかなか心を開くことはできない。もしかしたら恋愛経験がなかったのかもしれませんね」

1ヶ月ほどたって我慢ができなくなったユカリさんは、自分から彼の体に触れ、彼の上に乗った。その1度で妊娠。ひとり息子を授かった。

「子どもが生まれてからは、夫もだんだんかわいくなってきたんでしょう。息子が歩けるようになると、よく一緒に遊んでいましたね」 夫との間に埋めようがない溝があることはわかっていたが、表面上は平和な家庭だった。夫は言葉を荒らげることはない。だがそれは感情の起伏がないことも示していた。

「本当は何を考えているのかがわからない。いつでも冷静で感情を出さない。生活していくだけなら何の文句も言わないからいいんですが、家族として話し合ったことはほとんどない」

息子が小学校に入学するのを機にマイホームを買うことになった。ある日、夫は妻と息子を新築マンションのモデルルームに連れていき、「ここでいいよね」と即決した。自分の通勤しやすさと子育てしやすい環境から選んだようだが、妻の意見は聞こうとしなかった。

「結果的に特に文句はありませんが、いつもそうやって淡々と自分だけですべて決めていくんです。私はいてもいなくてもいいんじゃないかと思うくらい」

子どもが生まれてからもセックスの関係はないままだ。「仙人なのかもしれませんね、あの人は」とユカリさんは苦笑する。
 

今後の人生を考えたとき

夫は帰宅して食事をとると、書斎にしている部屋に入ってあまり出てこない。機嫌が悪いわけではない、とにかくひとりが好きらしい。

「放っておいていいので気は楽なんですが、息子が高校へ入ったころ、私、本当にこのままでいいのかなと思い始めたんですよね。息子は小さいときから料理が好きで、高校を出たら専門学校へ行って、いずれは大好きな食の分野で身を立てたいと思っている。夫はたぶん一生変わらない。じゃあ私は? そう思ったらなんだかあまりにも寂しくて」

せめて趣味でもと、いろいろなカルチャースクールの体験教室に通ってみたが、どれも心に響かなかった。自分は何をしたいのか、これから先、どうやって生きていきたいのか。

「そんなとき、とある大学の通信教育を見つけたんです。私は短大を出て保育士をしていたんですが、もう一度、幼児教育を勉強してみたいなという気持ちがあった。通信教育なら費用も安いし、じっくり勉強できそうだし、と思って。早速始めてみたら、これがおもしろくて」

昨年春、息子が専門学校へ行くために家を出ていくと、ユカリさんは毎日、心がざわつくような不穏な気持ちになった。夫と二人だとなぜか心身ともに不調になるのだ。更年期もあるのかもしれない。だが、この結婚生活を解消したいという気持ちが日に日に強くなっていった。

夏前、夫に離婚を切り出した。夫は慌てることなく、「どういうこと?」と聞き返した。 「通信教育では物足りないので大学に編入して勉強したいこと、夫婦関係を解消して家庭という縛りから抜け出したいこと、このままの自分ではどうしてもイヤなことなどを話しました。

夫はたぶん、私の言葉を理解していなかったと思う。本当は『心が通い合わないあなたと一緒にいるのがイヤ』と言いたかったけど、そこまでは言えなかった」

夫はわかった、と言った。ちょうどいい機会だから、打診されていた九州への転勤を承諾する。家は売るからそのお金を折半しよう、と。

「最後まで、夫の性格がよくわからなかったけど、夫もひとりになりたかったのかもしれませんね。この年になると、誰にも邪魔されずに自分の人生を生きてみたいと思うのかもしれない。そういう意味では、最後に夫と意見が一致したんでしょうか」

離婚はイヤだという言葉を少しは期待していたのかもしれないとユカリさんは寂しく笑った。