『半分、青い。』はついツッコみたくなる“SNS 起爆ドラマ”

今月最終回を迎える朝ドラ『半分、青い。』。現代とうまくマッチしたのか、SNSを中心に話題となり、いまだかつてない盛り上がりをみせています。視聴率も軽々20%越えと絶好調で、破天荒なヒロインを中心とした物語の展開に目が離せません。

破天荒なヒロインを描き、視聴率も上々


かつてこんな形で盛り上がりを見せたNHKの朝ドラがあっただろうか。現在オンエア中の『半分、青い。』。幼少時に片耳を失聴したヒロイン・鈴愛(すずめ)を軸に、1970年代から2010年代まで彼女を取り巻く故郷・岐阜の人々と、東京で出会った人たちの半生が描かれている。
 

視聴率も軽々20%越えと絶好調、「漫画家編」で登場した豊川悦司演じる秋風羽織の関連本をはじめ、さまざまなスピンオフ書籍も発売されるなどドラマ周辺もにぎやかだ。
 

ヒロイン・鈴愛(すずめ)を演じる永野芽郁(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)​​

このドラマの主人公・楡野鈴愛(永野芽郁)は健気なヒロインでも無垢に夢を追いかける女性でもない。高校時代の初デートでは男子相手に拷問器具の素晴らしさを延々と語り、大人気漫画家のアシスタントとして上京したものの、じつは食事作り要員だったと知って先生の原稿を窓から捨てると周囲を脅迫。

さらにアシスタントになってからも「そんな性格だから先生には家族も友達もいないんだ!」と師匠を罵り、幼なじみの恋人には「律はわたしのものだ!」と言い放つ……ってコレはまだほんの一部。鈴愛の常軌を逸した行動を書き連ねるだけでコラムが10本は成立すると思う。
 

脚本家のTwitterが各所で話題に

そんな破天荒なヒロインに負けていないのがこのドラマの脚本家、北川悦吏子氏だ。朝ドラの執筆がオープンになった時点でSNSを駆使し、鈴愛の幼なじみ、律が飼うペットの亀の名前やアシスタント仲間の愛称を募集したりとその片鱗はあったのだが、放送が開始されても勢いは増すばかり。

ツイッターでは好意的な視聴者からのコメントを鬼リツイートし、思った通りの演出がなされていない時は自らの思いをバンバンつぶやく。朝ドラの脚本家のSNSへの書き込みがニュースとして各所で激しく取り上げられたのは今回が初めてではないだろうか。
 

現在は通常の「#半分青い」に加え、ドラマへのダメ出しがメインの「#半分白目」、ポジティブな感想専用の「#半分青いプラス」そして北川氏を褒めたたえる「#北川プラス」等、さまざまなハッシュタグが派生し、ツイッター上では毎日各派閥(?)の視聴者たちがそれぞれしのぎを削っているという状況である。
 

違和感を楽しませる魔力

もちろん、私も『半分、青い。』を毎朝録画し視聴しているわけだが(そしてほぼ毎日ツイッターで感想をつぶやいている)、確かにこのドラマは“ひとこと言いたくなる”作品だと思う。ある種の“隙”が多いというか、誰かと感想を分かち合いたいというか。


例えば、主人公・鈴愛の幼なじみ・律がアメリカに転勤となり、鈴愛も娘とともに再上京することが決まった時、ふたりは幼いころ糸電話で遊んだ故郷・岐阜の川べりで別れの言葉をかわし、鈴愛は律に「5秒だけ」と抱きつく。ちなみにこの時点で鈴愛はバツイチ、律は既婚者である。「5秒だけ」のはずが実質1分40秒……おーい、朝からなにしてくれてるんだあ!……そして週をまたいでの律の“ナレ離婚”……おーいっ!


案の定、1分40秒の抱擁やナレ離婚はSNSのトレンドワードとなり、ネットニュースでも取り上げられた。


直近の朝ドラが視聴率的にも世の中の話題としてもいまひとつハネなかったのに対し『半分、青い。』の作品中、作品外での起爆力は相当なものである。これからのドラマは脚本、出演者の魅力に加え“SNS映え”を意識するのもひとつの手法なのかもしれない。


なんとなく違和感を持ちながらもそのクセの強さに引き寄せられ、毎朝視聴し、ついツッコまずにはいられない『半分、青い。』。これはそんな魔力を持つドラマだ。もし、脚本の北川氏がそこまで狙っているとしたら……いやいや、さすがにそれはないと思いたい。
 

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