まだ恋を諦められない?
40代既婚女性の中には、家庭は大事だと言う一方で、どこかで「恋」を求めている人たちが少なくない。
「結婚して17年たつと夫婦間も、もう完全に家族ですよね。子どもがいるから、帰るべき場所が他にないから帰ってくるんだろうなと思うし、私自身もあとは子どもが進学していくだけで責任は終わりだなと感じているし。子どもたちが小さいときのように家族でどこかに行くことも減ってきましたしね」
マヤさん(44歳)はそう言う。高校生の長女は部活の吹奏楽とダンスに夢中、中学生の長男はサッカー三昧。夏休みとはいえ家族で旅行の計画はないという。
「2歳年上の夫は仕事が忙しいし、私もパートをしながら資格をとるための勉強をしています。それぞれが自分の生活に忙しい。家族はもう一体ではないんだなと感じます。風通しは悪くないけど少し寂しい」
鏡を見れば白髪もシワも増えている。以前だったら一食抜けば体重は元に戻ったが、今は脂肪が簡単に蓄積されていく。毎年、前年のスカートがはけなくなると笑う。
「パート先には女性が多いんですが、同世代でもきちんとスタイルをキープしておしゃれしている人もいるんですよね。それを見るとがんばらなくちゃとは思うんだけど……」
自分にも恋が訪れるかも
今さらおしゃれをしても、誰が見ているわけでもない……とあきらめが先に立つという。それでもつい最近、中学校の同窓会に参加してみて、久々に刺激を受けたとか。
「当時の同級生の男子たちと話して、すっかり若返った気分になりました。ふだん男性と話すのはせいぜいパート先の上司くらいなものだけど、男性と話すのって大事だなと思った。同性と話すのとはまた違う楽しさがあって」
マヤさんの顔がほころぶ。男友だちの少ない女性ほど、40代になってから心の隙間に"恋"が入り込んでくるケースは多い。そして40代で気軽に話せる男友だちがいる女性のほうが少ないとも思う。
「同窓会に行ってみて、よく世間で言われているように不倫が起こっても不思議ではないと実感しました。私だって、当時好きだった人に告白されたらちょっとよろめいちゃうかもしれないと思ったもの」
まあ、たぶんそういうことはないけれどとマヤさんは言うが、そんなことはない。恋はどこにでも転がっている。本人がその気になれば、いつでも始まる可能性はあるのだ。
「実はね」
マヤさんは声を潜めた。
「恋をするという選択肢もあるかもしれない、とは感じているんです。同窓会のあとで当時仲良しだった女性たち数人でお茶したんですが、そのうちのひとりが不倫してて。みんな興味津々で根掘り葉掘り尋ねちゃった。そのあと、『家庭を守りながら恋をするような度量が自分にあるかどうかわからないけど、確かに死ぬまでにもう一度、恋してみたいよね』と話が盛り上がって……。みんな今の生活にプラスアルファでときめくことがほしいんですよ、きっと。私もそうですから」
こういう話をするのは、マヤさんだけではない。子どもがある程度大きくなって、自分の老いが確実に見えてきたとき、誰もが「もう一度、恋してみたい」と感じるのかもしれない。人が不倫するかどうかは、そのチャンスが巡ってくるか来ないかだけのことではないだろうか。