こんなはずじゃなかった「教育費」…
わが子が中学受験に取り組み、見事合格を勝ち取ったDさん一家。息子とともに喜びながらも、早速お金の問題に直面しています。実は中学受験を考えていなかったため、教育費の蓄えがなかったのです。私立中のお金、どうやって用意しておくべきなのでしょうか。
普通の家庭の家計が急に苦しくなった
生活用品メーカーに勤めるDさんは45歳。地方の公立高校を卒業して上京し、大学卒業後に同社に入社しました。所属する商品開発課では、自分のアイディアがダメ出しされることも多々あるそうです。しかし、それを乗り越えて世に出せたときの達成感は何ものにも代えがたいといいます。
Dさんは30歳のときに結婚。2つ下の妻もDさん同様、地方の公立高校を出てから都内に住むようになり、ある大企業の事務を担当していました。結婚を機に妻は退職し、男の子を出産。日中パートに出ながら、子どもの世話をしています。
まるで絵にかいたような普通の家族ですが、実は急に家計が苦しくなったため、相談に来られました。Dさんの年収は600万円、妻も年100万円ほどの収入があります。いったい、何があったのでしょうか。
あっという間に100万円が飛んでいった!
「お父さん、僕も中学校を受験したい」
Dさんが息子にそう言われたのは3年前のこと。なんでも、有名大の付属中を目指す友達に誘われて受験した塾のテストの結果が、その友達よりもよかったのだといいます。
気をよくした息子は、その塾に通いだしました。そして、第1志望としていた中学校に見事合格したのです。その学校はいわゆる挑戦校で倍率も高く、正直厳しいと思われていただけに、喜びもひとしおでした。
しかし、頼もしい息子の成長に目を細めてばかりではいられません。すぐにやってきたのがお金の問題です。
入学手続きだけで約35万円、設備費や制服・教材などの諸経費で約65万円、合計100万円があっという間に飛んでいきました。さらにこれとは別に毎月4万円ほどの授業料を納入しなければなりません。
そのうえ、臨時で何かと費用の集金があったり寄付金のお願い(任意とはいいますが…)があったりするため、自転車操業状態になってしまったのです。
Dさん曰く、「息子の合格はうれしいのですが、お金は正直、ぜんぜん足りないですね。住宅ローンも残っているし、老後に向けた貯蓄もできないし、火の車です」
教訓…教育費は「早めの準備」がやっぱり大事
文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校まですべて公立だった場合の学習費の総額は約540万円。これに対して、小学校だけ公立だった場合は約1046万円とほぼ倍増しています。さらに、すべて私立だと約1769万円にもなるといいます。
それだけのお金が工面できないならば受験しなければいいと思われるかもしれませんが、Dさんのようなケースも起こりえるのです。
こんなときの負担を少しでも軽減する方法を考えてみましょう。
① 国の制度や補助を利用する
私立小中学校等修学支援実証事業費補助金という制度を使うと、年間10万円の補助が受けられます。先に挙げた私立中の費用を考えると決して多くはないのですが、それでも負担はある程度減らせます。
ただし、対象が年収400万円未満の世帯なので、この補助金を受けられる人は少ないのではないかと思います。Dさんもこの制度は利用できません。
② 奨学金を利用する
各私立中では、家計が苦しい生徒を対象にした奨学金を用意しているケースがあります。これを利用すれば、必要な費用を無利子で貸付してくれたり、給付(返済の必要なし)してくれたりすることがあります。ただしこちらは、子どもの成績がかなり優秀でないと受けられません。
③ 早めに貯めておく
お金に詳しくないのであれば、学資保険を利用するのが手っ取り早いでしょう。子どもが生まれる前から加入でき、毎月天引きでお金を貯められます。基本的に大学までの費用をカバーしますが、中には中学・高校への進学時に一時金が出るものもありますので、検討してもいいでしょう。
また、お金の運用に自信があるならば、金利の高い銀行に預けたり、預金の一部を投資信託で運用したりするなど、増やすことを積極的に考えてみてもいいでしょう。ただし、全額で投資してしまうと、損失のリスクも高まるので注意してください。
このほかに教育ローンなどもありますが、金利も高く、後の支払いも大変になりますので、あくまで最後の手段になるでしょう。積極的にはおすすめできません。
Dさんの場合の対処法は「可能な範囲で家計を圧縮」
お気づきかもしれませんが、Dさんは、収入が高いため①や②は使うことができず、③にしても手遅れになっていました。しかし、唯一の救いは世帯収入が年700万円あること。確かに私立中の費用を出すのは大変かもしれませんが、決してできないという収入ではありません。
この3年間は老後資金などの捻出はあきらめて教育費に集中することと、可能な範囲で家計を圧縮することをアドバイスしました。高校に進学すれば、都道府県ごとに行っている私立高等学校等授業料軽減助成金などの補助金が受けられるため、多少は余裕ができるでしょう。老後資金などの貯蓄は、そこからまた再開すればいいのです。
将来のことは誰にもわかりませんが、どうなっても大丈夫なように準備しておくことはとても大切です。次代を担う子どもたちの教育費となればなおさらのこと。前もって、早めに準備しておきたいですね。