FIFAランキング上位の国が敗退…
W杯には魔物が潜む。
国際サッカー連盟(FIFA/フィファ)の最新ランキング1位のドイツが、ロシアW杯のグループリーグで姿を消した。4位のポルトガルと5位のアルゼンチン、それに10位のスペインは、決勝トーナメント1回戦で敗退した。8位のポーランドも、すでにロシアをあとにしている。
ベスト16の内訳は、ヨーロッパが10、南米が4、北中米カリブ海が1、そしてアジアが1である。アフリカ勢は5か国すべてが大会を去った。FIFAランキング61位の日本が世界の16強に名を連ねたのは、改めて評価されるべきだろう。
10人相手に勝つのは難しい?4年前との違いを見せたコロンビア戦
グループリーグの3試合は、驚きの連続だった。コロンビアとの第1戦は、開始早々に相手が退場者を出し、日本にPKが与えられた。開始6分での得点は日本のW杯史上最速で、PKによる得点は初めてだった。
10人の相手に勝つのは、実はそれほど簡単ではない。数的不利に立った相手は、守備を固めてカウンターに活路を見出そうとする。戦い方がはっきりするのだ。
対して人数の多いチームは、勝点3を取り切りたいとの強い思いに駆られる。同点では満足できない気持ちが、時間の経過とともに焦りにつながる。
4年前のブラジルW杯で、日本も苦い思いを味わった。ギリシャとの第2戦は前半途中で11対10になるが、ゴール前に人数をかける相手を崩し切れない。0対0のスコアレスドローに持ち込まれた選手たちは、まるで敗者のような表情を浮かべたものだった。
今回は、違った。前半のうちに追いつかれ、2点目を奪う好機を逃しながらも、焦りの色はない。73分に大迫勇也が決勝ヘッドを突き刺し、W杯で初めて南米勢から勝利をつかんだ。
調整遅れが危惧された選手が結果を残したセネガル戦
続くセネガル戦は、11分に先制される苦しいスタートとなる。それでも34分、乾貴士の得点で同点とする。
第1戦の香川、第2戦の乾と、調整の遅れが危惧された選手が結果を残したのは、コンディショニングの成功だろう。ベースキャンプ地と試合が行われる都市の寒暖差が指摘された4年前の失敗を、教訓とすることができていたのだ。
71分に再びセネガルに突き放されるものの、西野監督の采配が同点弾を呼び込む。失点直後に本田圭佑、岡崎慎司を相次いで投入し、78分のゴールに結びつけた。最終盤には宇佐美貴史も送り出し、3点目を狙いにいった。
西野監督の先発メンバーと交代選手のチョイスは、つねに積極的だ。守備重視の発想はない。相手の良さを消すことを考えつつも、自分たちから仕掛けていく。セネガルとのスリリングな攻防は、各国の関係者やメディアから好評価を受けた。
議論を呼んだポーランド戦…「アジアで唯一の16強入り」という事実
2試合で勝ち点4をつかんだ日本は、ポーランドとの第3戦で引分ければ2位以内を確保できる立場となった。ところが、59分に先制されてしまう。
この時点でグループリーグ突破圏外の3位に転落してしまうが、同時刻開催のコロンビア対セネガル戦で、コロンビアがリードを奪う。日本はセネガルと勝点、得失点差、総得点、直接対決の成績のすべてで並ぶが、警告と退場を数値化したフェアプレーポイントでリードする。グループ2位に浮上した。
西野監督の決断は「このままでいい」だった。負けているが、攻めない。もしセネガルが同点に追いついたら、再び3位に滑り落ちる。危険な賭けだったが、歓喜を爆発させたのは日本だった。2大会ぶり3度目のベスト16入りを、こうして勝ち取ったのである。
自力ではなく他力での決勝トーナメント進出は、国内外で賛否両論を巻き起こしている。様々な解釈が成立するのは間違いないが、重要なのはアジアで唯一の16強入りを果たしたという事実だ。
決勝トーナメントで4年後への道筋が見えてくるか
負ければ終わりの決勝トーナメントでは、グループリーグより明らかにレベルの高い攻防が繰り広げられている。テストマッチでは決して感じることのできない熱が、ピッチ上でぶつかりあっているのだ。
世界のトップ・オブ・トップに対して、日本は何ができるのか。何が通用しないのか。究極の真剣勝負と言っていい決勝トーナメントを戦うことで、4年後への道筋が見えてくる。