なぜか繰り返される歴史…
ワールドカップにはジンクスがある。論理的な根拠は見つけにくいものの、なぜか繰り返される歴史があるのだ。大会を違った角度から楽しめる不思議な法則を紹介していこう。
1:バロンドールの呪い
フランスのサッカー専門誌フランス・フットボールは、1956年にヨーロッパの年間最優秀選手としてバロンドールという賞を設立した。当初はヨーロッパ各国の選手が対象だったが、95年から欧州でプレーする選手すべてが対象となった。2010年からは国際サッカー連盟(FIFA/フィファ)が選出していた年間最優秀選手と統合され、FIFAバロンドールと改称された。
これは世界ナンバー1の選手に与えられる賞である。W杯でも主役に躍り出ることのできる選手たちだが、奇妙な共通点がある。W杯前年のバロンドール受賞者は、W杯で優勝できないのだ。人呼んで“バロンドールの呪い”である。
20世紀ならヨハン・クライフ(オランダ)やミシェル・プラティニ(フランス)といったスーパースターが、21世紀ではロナウジーニョ(ブラジル)、リオネル・メッシ(アルゼンチン)、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)といった名手が、バロンドールの呪縛に行く手を阻まれた。
16年からはFIFAとの提携が解消され、フランス・フットボール誌によるバロンドールに戻った。そして、ロシアW杯前年の受賞者はC・ロナウドだった。“バドンロールの呪い”が今回も生きているなら、彼がキャプテンを務めるポルトガルは、優勝できないということになるが……
バロンドールとW杯の優勝国には、あまり触れられていない共通点がもうひとつある。受賞対象が全世界の選手に広がった95年以降を見ると、97年のジダン(フランス)と09年のシャビ(スペイン)が、バロンドールの得票数3位で翌年のW杯に優勝している。ジンクスと呼べるほどのものではないが、頭の片隅に置いておくといいかもしれない。
ちなみに、17年の3位はネイマール(ブラジル)だ。言うまでもなく、ブラジルは優勝候補の一角である。
2:開催大陸の国が優勝する
1930年のウルグアイ大会から、W杯の優勝国は開催大陸から誕生してきた。58年スウェーデン大会と70年メキシコ大会でブラジルが優勝したケースを除ければ、2010年大会までこのジンクスは生きてきた。
02年の日韓大会はアジア初の開催であり、開催大陸の代表国が優勝できるはずもないので、南米のブラジルの優勝でジンクスが崩れたことにならなかっただろう。10年の南アフリカ大会はアフリカ初の開催であり、アフリカ勢の過去最高成績はベスト8だった。こちらも、欧州のスペインの優勝でジンクスが崩壊した、とは言い切れなかったはずだ。
状況が変わったのは14年大会である。南米ブラジルを舞台とした大会で、欧州のドイツが戴冠の時を迎えたのだった。
ロシアを舞台とする今回は、ドイツ、スペイン、フランス、ポルトガルらが優勝候補に名を連ねるが、ドイツは後述する「5」の、ポルトガルは「1」のジンクスに縛られている。さて、結果は……。
3:欧州と南米が交互に優勝する
1962年大会から2006年までの12大会連続で守られてきたジンクスだが、06年大会のイタリアに続いて10年大会をスペインが、14年大会をドイツが制したことでジンクスが崩れている。これは古いジンクスと言っていいかもしれない。
4:優勝国は自国の監督に率いられている
過去20会のW杯で、優勝経験があるのはブラジル(5回)、イタリア、ドイツ(いずれも4回)、ウルグアイ、アルゼンチン(いずれも2回)、イングランド、フランス、スペイン(いずれも1回)だ。この8カ国には共通点があり、すべて自国の監督のもとで頂点に立っている。
ロシアW杯で上位進出が目される国では、ドイツ、アルゼンチン、ブラジル、スペイン、フランス、イングランド、ウルグアイ、ポルトガル、クロアチア、ポーランドなどが自国の監督に率いられている。日本も西野朗監督への交代によって、この条件を満たすことになったが?
5:コンフェデレーションズ杯の優勝国は、W杯で優勝できない
W杯開催国が大会運営の予行演習として前年に開催するコンフェデレーションズ杯。各大陸の王者とW杯開催国が参加するが、この大会で優勝するとW杯で優勝できないジンクスがある。
97年大会優勝のブラジルは、98年W杯で準優勝に終わった。01年大会を制したフランスは、02年W杯でまさかのグループリーグ敗退を喫した。その後も05年、09年、13年の優勝国ブラジルが、W杯のトロフィーをつかみ損ねている。
昨年行われたコンフェデ杯では、ドイツが圧倒的な強さを見せつけて優勝した。今回も優勝候補の筆頭であり、「2」や「3」のジンクスの裏付けもあるが……。