「オンラインと実店舗の垣根を超えたサービスに」
家電量販店のビックカメラと「楽天市場」を運営する楽天は4月11日から、家電領域における新サービスを共同で開始する。都内で行われた記者会見でビックカメラの宮嶋宏幸社長は「新サービス楽天ビックでは、オンラインと実店舗の垣根を超えた利便性を高めたサービスを提供していく」と語った。
「楽天ビック」と「楽天市場への出店」の違いは3つ
4月11日からスタートした新サービス「楽天ビック」は、「楽天市場」内の家電ECサイトだ。これまで、楽天市場内には、ビックカメラ、ジョーシン、エディオンなどが出店している。従来の出店と、今回の新サービスの違いは3つある。
◆1. ビックカメラと楽天、オンラインとオフラインの連携
楽天ビックでは、サイト上で、ビックカメラ実店舗45店舗(アウトレット店舗含む)の商品在庫を確認できる。これは、既にビックカメラが運営する自社通販サイト「ビックカメラ.com」で利用できる機能を楽天ビックからもアクセスできるようにしたもの。
ネット通販を利用するお客には「実物をみたい」「急いで買いたい」というニーズがある。店舗在庫が確認できれば、商品の大きさ、色、素材の質感などを確認したい場合に、在庫がある店舗に足を運びやすい。また、急いでいる場合も確実に在庫がある店舗に行けるので便利だ。
ビックカメラによると、同社の店舗受け取りサービスの件数は伸びており、「楽天ビック」でも現在ビックカメラ店舗での取り置きなどサービスを準備中とのことだ。
さらに、ビックカメラの実店舗47店舗(アウトレット店舗含む)で楽天の運営する共通ポイントサービス「楽天スーパーポイント」を導入する。購入者は、ビックポイントと楽天スーパーポイントのどちらかを選んで貯められる。現時点で楽天ポイントの使用はできないが、6月中旬をめどに楽天スーパーポイントでの支払いを可能にする予定だ。ちなみに、ポイント還元率は、ビックカメラが基本10%、楽天スーパーポイントは基本5%だ。
◆2.配送・設置の時間指定も可能に
ビックカメラの宮嶋社長が「楽天市場で売れている商品と、ビックカメラ本サイトで売れている商品には違いがあり、顧客の住み分けがされていた」と話すように、楽天市場内での家電は配送・設置を伴わない小物商品が売れている傾向にある。
楽天の執行役員楽天市場事業長の矢澤俊介氏は「ECでは小さい商品が好調。設置を必要とするもの、アフターが必要なものなどは実店舗で購入するというお客様が少なくない。配送・設置などの問題を解決することで、よりすばらしい消費体験をECできる」と言う。楽天ビックでは、ビックカメラの店舗サービスと同じレベルで配送・設置の時間指定ができるよう整備中だ。
さらに、物流面での連携もすすめる。ビックカメラは埼玉と千葉、楽天は千葉と神奈川に物流拠点を持つが、両者の物流拠点が連携することで、今夏をめどに東京23区で15時までの注文で当日配送できるサービスの提供を目指している。さらに、楽天市場に出店している他の事業者の商品の配送も、楽天ビックの配送で行うかどうかも現在検討中とのことだ。
◆3.オリジナル商品の開発も
現時点では、楽天ビックでの取り扱いアイテム数は家電を中心に60万アイテムで、酒類などの一部非家電は扱っていない。ビックカメラと楽天ビックでは、ポイント還元率の違いなど様々な要素があるため、同じ商品でもビックカメラと楽天ビックでは価格が違うこともある。今後は「ユーザーの声を聞きながら対応していく」(ビックカメラ・宮嶋社長)とのこと。
ビックカメラは、以前から利益率が高いPB商品の開発に力を入れており、家電だけでなく肌着などの非家電の商品開発を行うなど、開発商品の幅は広い。今回、楽天ビックのサービス開始に伴い、双方のビッグデータを活用したオリジナル商品の開発にも意欲をみせている。第1弾としてVRヘッドマウントディスプレイを発売する。
このほか、ソフマップの強みをいかしたリユース商品(中古品)のサービスサポートの導入も検討している。
女性客の流入を期待するビックカメラ、競争力をつけたい楽天
今回の「楽天ビック」設立で、ビックカメラ側は女性ユーザーが多い楽天会員の来店を期待している。一方、楽天側は、楽天市場の中での家電領域のサービスを向上させることで、EC市場における競争力を獲得するという狙いがある。
ビックカメラは、EC事業の拡大および波及効果がビックカメラグループ全体の売り上げに寄与するとして、17年8月期に約730億円だったEC事業の売り上げを21年8月期に1500億円まで拡大したいとしている。