ANAが出資する両LCCの統合で海外勢に対抗

LCCのピーチ・アビエーション(上)とバニラエア。いずれもANAホールディングスから出資を受け、国内線と国際線を運航する。使用機材は同じ「エアバスA320」 / 筆者撮影

「LCCのピーチ・アビエーション(以下、ピーチ)とバニラエアが2020年までに統合する」というニュースを、全国紙などの大手メディアが3月16日から17日にかけて一斉に報じた。ピーチはANAホールディングス(以下、ANAHD)が株式の67%を保有する連結子会社、バニラエアはANAHD100%出資の完全子会社。


この報道後、ANAHDは週明け19日に「検討中」であることを認めていたが、22日にプレスリリースおよび記者会見にて、2019年度までにピーチを基盤に2社が統合することを明らかにした。
 

ANAHDは、統合の目的について、2020年以降にピーチが50機を超える機材と国内線・国際線合わせて50路線以上の規模で路線拡張を図るとし、さらに東南アジアへの就航拡大といった狙いなども明らかにした。
 

2社が統合すれば国内LCCで売上高、搭乗者数ともトップに

日本でのLCCは現在5社あり、そのうち、先に紹介した国内LCC2位のピーチと同3位のバニラエアのほか、日本航空(以下、JAL)などが出資する同首位のジェットスター・ジャパン(以下、ジェットスター)の3社がリードする。


もし、ピーチとバニラエアの2社が統合した場合、売上高と搭乗者数で現在国内LCCの中でトップのジェットスターを上回ることになる。


ANAHDは約1か月前の2018年2月、新たな中期経営計画を発表した際、ピーチとバニラエアの2社について、独自性を維持しながら路線を拡大し、連携を強化していく考えを明らかにしていた。
 

関西空港が拠点のピーチ、成田空港が拠点のバニラエア

日本初の本格LCCとして2012年に運航開始したピーチ・アビエーション。大阪・関西空港を拠点に運航する / 筆者撮影

ピーチは、大阪・関西空港を拠点に、2012年3月に国内初の本格LCCとしてデビュー。国内線と国際線を運航し、那覇空港を第2拠点化するなどして就航ネットワークを着実に広げている。現在は国内線15路線、国際線14路線が運航中。


一方、バニラエアは、成田空港を拠点とし、LCCがもともと得意とするリゾート路線に特化して国内線、国際線を運航する。もともと、ANAHDとマレーシアのエアアジアが共同で出資して2012年8月に就航した「旧エアアジア・ジャパン」から始まり、双方の提携解消で2013年10月に運航を一時休止した後、11月にANAHDが改めて100%出資する形でバニラエアとして再スタートするという紆余曲折した経緯がある。なお現在、国内線7路線、国際線7路線(季節運航含む)が運航している。
 

ANAがLCC2社の統合を進めた理由と今後の動き

 バニラエアは成田空港を拠点とする「レジャー」に特化したLCC。旧エアアジア・ジャパンから新たなブランドとして再出発した経緯を持つ / 筆者撮影

いずれもANA傘下のLCC同士の統合は、勢いある海外のLCCと対抗することが狙いだとされる。「連携強化」の発表から1か月余りで「統合」が発表されるという「動きの速さ」も、今も拡大を続ける他LCCの勢いに対抗したいという思いの表れだろう。


なお、両社の拠点空港が関西空港、成田空港と異なるうえ、重複路線は現在3路線のみ。使用機材が両社ともフランス・エアバス社の「A320」であることや、航空業界全体で近い将来に「パイロット不足」といった人材確保の問題も懸念されており、運用の効率化ができるという点でも経営統合はプラスに働く。


日本でLCCが本格始動してから6年あまり経った。LCCの路線ネットワークが広がり、関西空港や成田空港などにLCC専用ターミナルができるなど、やっと日本でもLCCが定着した感がある一方、先に紹介した旧エアアジア・ジャパンの件、運休や減便する路線も出るなど話題は尽きない。


ANAHDによると、経営統合した後の20年度には売上高1500億円、営業利益150億円を目指すという。アジアにおけるLCCのシェア拡大は目覚ましく、今回の経営統合によってピーチに一本化することで海外勢に対抗していく。

※記事中の路線数などは2018年3月現在
 

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