今月下旬にベルギーでテストマッチを行なう日本代表メンバーが発表された。6月にロシアW杯開幕を控え、今回の遠征は最終的なメンバーの絞り込みの機会となる。果たして、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はどのような選手を選んだのか。
ディフェンスリーダー吉田が不在
チームは3月19日にベルギーで集合し、同日からトレーニングを開始する。23日のマリ戦と27日のウクライナ戦はもちろん、日々のトレーニングも重要な意味を持つ。
発表されたメンバーをポジション別に見ていくと、GKはすでにW杯を想定した3人と言っていい。過去2度のW杯に出場し、フランスのメスでプレーする34歳の川島永嗣(※20日に35歳になる)がレギュラーで、31歳の東口順昭(ガンバ大阪)、23歳の中村航輔(柏)が控えである。年齢バランスのとれたグループだ。
DFは現時点でスタメン出場が濃厚な右サイドバック酒井宏樹(マルセイユ/フランス)、左サイドバック長友佑都(ガラタサライ/トルコ)、センターバック槙野智章(浦和)の3人が順当に選ばれた。一方で、ディフェンスリーダーのセンターバック吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)が負傷で参加できない。代わって14年のブラジルW杯に出場した森重真人(FC東京)が、昨年3月以来の復帰を果たしている。
その他のDFでは、センターバックとして昌子源、植田直通(ともに鹿島)、左サイドバックとして宇賀神友弥(浦和)と車屋紳太郎(川崎)、右サイドバックとして遠藤航(浦和)が選出されている。植田は右サイドバックで、遠藤はセンターバックやMFで起用されるかもしれない。
香川と井手口も招集外に
6人がピックアップされたMFでは、主将の長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)、山口蛍(セレッソ大阪)のふたりの主力が選出されたが、昨年途中からレギュラー格だった井手口陽介の名前がない。1月に移籍したスペイン2部のクルトゥラル・レオネサで、この21歳は出場機会が限られていることが理由だ。
また、ケガで戦線離脱中の香川真司(ドルトムント/ドイツ)は、昨年11月の欧州遠征に続いて招集外となった。
長谷部と山口とともに選ばれた4人のMFは、チームの戦い方によって起用されるかどうかが決まってくる。守備に軸足を置いた戦いでは、ボールを奪う力に優れる三竿健斗(鹿島)の存在がクローズアップされる。逆に攻撃的に戦うなら、ベルギーで好調な森岡亮太(アンデルレヒト)が先発に指名されるはずだ。攻守にバランスのとれたプレーヤーの大島僚太(川崎)と柴崎岳(ヘタフェ/スペイン)は、どのような戦略でも生きるタイプだ。
本田の復帰と中島の初招集
FWでは本田圭佑が復帰した。在籍するパチューカ(メキシコ)で得点に絡むプレーを見せており、昨年9月以来の招集は妥当である。右ウイングのポジションを巡って、久保裕也(ヘント/ベルギー)とレベルの高い競争を繰り広げるだろう。
センターフォワードのポジションでは、W杯のレギュラーにもっとも近い大迫勇也(ケルン/ドイツ)、昨年のJ1リーグ得点王の小林悠(川崎F)、同2位の杉本健勇(セレッソ大阪)の3人が競う。小林は右ウイングでの出場も想定される。
センターフォワードにも、代表の常連の名前がない。岡崎慎司(レスター/イングランド)がケガで選考外となっているのだ。また、右ウイングのポジションで浅野拓磨(シュツットガルト/ドイツ)も外れている。こちらはケガでなく、クラブで試合に出ていないことが理由だ。
左ウイングは原口元気、宇佐美貴史(ともにデュッセルドルフ/ドイツ)、中島翔哉(ポルティモエンセ/ポルトガル)の争いだ。宇佐美は昨年6月以来の代表入りで、中島は初選出となる。
W杯の登録メンバーは23人だが、今回は26人でチームが編成された。ハリルホジッチ監督の思いを代弁すれば、テストをしたい選手、連携を見たい組み合わせが、それだけあるということなのだろう。
現状は楽観できるものに非ず
おおむね順当と言っていい選考のなかで、驚きがあるとすれば乾貴士の落選だ。所属するエイバルでは主軸の働きをしているだけに、彼を呼ばない理由はない。乾は昨年11月に招集しているので、今回はクラブで調子をあげてきた宇佐美を見たい、というのがハリルホジッチ監督の狙いなのだろうが……。
ただ、W杯開幕を3か月後に控えたこの段階で、なおもテストをする余裕が日本にあるのか、という考えも成り立つ。
左サイドからの仕掛けが鋭く、守備意識の高まりも顕著な乾は、W杯でもチームの力になれる選手だ。彼を加えたコンビネーションの確認や熟成も、今回の遠征のテーマに含まれていい。
さらに言えば、経験と実績のある吉田、香川、岡崎をケガで招集できず、W杯出場決定の試合で得点をあげた井手口と浅野を呼べない現状は、決して楽観視できるものではない。今回の遠征が終われば、次はもうW杯直前の5月下旬にしか集合できないのだ。