完成検査不正問題で「けじめ」を取る
3月2日、SUBARUの吉永泰之社長らが記者会見し、新社長として中村知美氏(現執行役員専務)が就任することが発表された。これは同日午前の取締役会において決定された役員人事に基づくもの。なお、吉永泰之氏は、代表権のある会長(代表権のない会長に退くのではない)に就くこととなり、その理由について、「完成検査で逃げない、また2トップ的な体制にはならない」と明言している。
なお、吉永泰之氏の会長就任、中村知美氏の新社長就任は、6月の株主総会をもって決定される予定となっている。
今回の社長交代は、完成検査不正問題の「けじめ」を取るためだとされる。吉永社長は、完成検査行程でデータの書き換えが実際に行われていたようだとも説明した。
中村氏とはどんな人物?新体制の狙いは「若返り」
中村知美社長(現専務執行役員)以下、若返りが図られた新体制の狙いは下記の4つ。
1:経営陣の若返りと組織活力の強化、チャレンジ精神の強化
2:経営全体の質の向上
3:市場対応力の強化
4:技術と技術マネジメントの向上
中村知美氏(現専務執行役員)は、1982年(昭和57年)4月にSUBARU(富士重工)に入社し、販売店での営業などを経てから、2004年(平成16年)スバル国内営業本部マーケティング推進部長などを歴任。営業畑を歩んできた次期社長ということになる。
また、2009年(平成21年)以降は吉永社長のもと、戦略本部経営企画部長として、リーマンショック、そして2011年の東日本大震災からの復興にかかる業務を担当。その際は「苦労した」とコメントしている。
そして、2014年(平成26年)4月からは現在の常務執行役員スバル海外第一営業本部長兼SOA(スバル・オブ・アメリカ・インク)会長に就任し、同社の最重要市場でSUBARUの業績を支えてきた。
SUBARUの抱える課題は多いが……
現在のSUBARUは、完成検査不正問題によって傷ついてしまった国内での信頼性の回復、吉永社長が会見で挙げていた「実力以上に販売台数が伸びている」という課題、また、トヨタとのアライアンスを今後どうするか、といったクリアすべき問題が山積みだ。これらについて、アメリカの最新事情に精通している中村新社長のもとで解決していくことになる。
吉永現社長は会見で「SUBARUは、きちんとしていることを何よりも大切にする、信頼されるブランドでなければならない」とコメントしていたが、こうした姿勢が中村次期社長就任後も引き継がれ、SUBARUの抱える課題を解決していく「原動力」になっていくことを願う。