映画『めぐりあう日』公開記念、来日中のウニー・ルコント監督と衆議院議員・野田聖子氏のトークイベント開催

ウニー・ルコント監督と野田聖子さん

左から、『めぐりあう日』監督ウニー・ルコント氏と、衆議院議員・野田聖子氏。養子として海を渡った養子縁組の当事者と、特別養子縁組の普及に取り組む2者が、知られにくい養子縁組制度について語り合った。

飯田橋・神楽座にて、ウニー・ルコント監督作品『めぐりあう日』の公開を記念し、来日中のウニー・ルコント監督と衆議院議員・野田聖子さんによる対談トークイベントが6月24日(金)に開催された。

この対談イベントは養子として海を渡り、波乱に満ちた実人生をもとに映画をつくり続けるルコント監督と、自身の不妊治療や出産・子育ての経験を公表し、長年日本での特別養子縁組に取り組む野田さんが、『めぐりあう日』で描かれるフランスの養子縁組と日本の抱える課題や、子どもたちの幸せについて語ったもの。当日は、日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト協力のもと、日本の養子縁組活動に取り組む方々が招待され、『めぐりあう日』の前作であり、ルコント監督の子ども時代をもとに各国で賞賛を浴びた鮮烈なデビュー作『冬の小鳥』の特別上映後、ルコント監督、野田さん揃っての登壇となった。
 

女性が匿名で出産する権利と、子どもが自分の出自を知る権利の齟齬

『めぐりあう日』

母を知らず養子として育ち、パリを後にして生まれた港町へ向かう主人公、エリザ。映画『めぐりあう日』は7月30日(土)より岩波ホール他にて全国順次ロードショー。(c)2015 GLORIA FILMS PICTANOVO

フランスでは、合法の堕胎期間を過ぎてしまった女性が望まぬ出産を終えたのち、子どもを適切な養護施設に預けるなどして、母親としての自分の情報を一切秘したまま歩み去る権利が法律で保護されている。それが匿名出産制度だ。それは、合法の堕胎期間を過ぎて育ってしまった胎児が、無事に生まれ落ちる権利を保護するものでもある。だが、その子が長じて母が誰であるかをどんなに知りたいと願っても、母親側が公表を拒否する限り、母について知らされることはない。孤児は、自分がどこから来たのかを知ることができないまま、存在の不確かさを抱えてただ浮遊し流されていくようにして生きていくしかない。

映画『めぐりあう日』は、自身も養護施設で育った”養子”当事者である女性監督、ウニー・ルコントが孤児と養子縁組というテーマで取り組む3部作の2作目。韓国人として生まれ育ちながらも9歳でフランス人牧師夫婦に引き取られ渡仏し、その後フランス人として育ったルコント監督が「過去と現在を和解させることは可能なのかという問いに挑んだ」(映画パンフレットより)。主人公であるエリザとその母アネット、二人の女性を不確かで不安定な存在に規定し、”過去と現在”を分断したもの、それは皮肉にも、このフランス特有の権利を保障する「出産女性が匿名で歩み去ることのできる権利制度」だったのだ。映画ではフランスの有色人種への差別意識を絡めて、母と娘がそれぞれに人生の失われた部分を取り戻していくさまが描かれる。
 

ルコント監督「韓国で生まれ、養子としてフランスに渡った私自身の感情的な記憶が出発点」

ウニー・ルコント監督

ウニー・ルコント監督。韓国に生まれ育ち、9歳でフランスへ養子として渡った経験を持つ。

韓国の養護施設に預けられた9歳の少女がフランスの養父母の元へ渡る第1作『冬の小鳥』と、今作『めぐりあう日』がともに親との別離や養子縁組をテーマとすることに関し、ルコント監督は「自伝的な意図ではなく、自分の感情的な記憶を出発点に、映画製作を行ってきた。親との別離を経験した人間にある普遍的な感情ーー愛、怒り、絶望、幻想などの感情の足跡を描くことが目的」と語る。フランス国内で調査を進めるに従って匿名出産制度は「フランス国内でも賛否両論。子どもが自分のルーツやアイデンティティを失い、母親側にも子どもに会う方法が完全に断たれてしまう。出産するところまでは制度で保障されているが、当事者達にはその後に葛藤がある」と、匿名出産のもう一つの側面を指摘する。
 

野田聖子さん

衆議院議員・野田聖子さんは、不妊治療を経て養子縁組の可能性を模索した自身の経験から、特別養子縁組の普及に取り組む。

自身も不妊治療の末、特別養子縁組の可能性を探った経験のある野田さんは、「(日本では申請から養子縁組の成立まで)まず2年は待たねばならない上、母親が仕事をしているのも、年を取っているのも養子縁組を成立させるための要件として難しいと言われ、諦めざるを得なかった。本当に子どもを欲しいと思っている人と子どもたちが出会えない現状に、国会議員としてこの国には養子縁組のためのしっかりとした法律がないことに気づいた」と振り返り、「きちんとした段取りを日本としても作っていきたい。日本の特別養子縁組には、児童相談所を通した斡旋と民間の斡旋団体による方法があり、民間の実力は取り残されていると感じている」と語った。
 

養父母であっても長期の”育休”が認められるフランス

また両氏の話題は、養子縁組先進国であるフランスと、養子縁組制度に課題が残る日本との違いにも及んだ。産んだ親は育休を取得できるが、養父母には育休は認められにくい日本に対し、ルコント監督は「フランスでは産休や育休に関しては出産したか養子縁組かにかかわらず同じ権利が保障される。養子縁組でも父親でも育休を保障した法律があり、養子縁組の育休では試し育児や海外での養子縁組のために産んだ親よりも長い場合もある」。野田氏は「一度実の親に手離されるという困難から始まる育児だからこそ、養子縁組の親子には長い期間が必要だ」と意見を述べ、民間養子縁組活動を積極的に応援する姿勢を示した。

映画原題『あなたが狂おしいほどに愛されることを願っている』とは、アンドレ・ブルトン著『狂気の愛』にて、ブルトンが困難で激しい恋愛の末にもうけた愛娘へ宛てた最後の一文を引用したもの。それぞれの子ども達が生まれ落ちたことは必然であり、すべての命が祝福されて欲しいとの願いが込められている。映画『めぐりあう日』は7月30日(土)より岩波ホール他にて全国順次ロードショー。



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© 2015 – GLORIA FILMS – PICTANOVO

7月30日(土)より岩波ホール他にて全国順次ロードショー

監督:ウニー・ルコント
出演:セリーヌ・サレット、アンヌ・ブノワ、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン、フランソワーズ・ルブラン、エリエス・アギス
脚本:ウニー・ルコント、アニエス・ドゥ・サシー
音楽:イブラヒム・マーロフ
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
製作:ロラン・ラヴォレ

2015年/フランス/104分/カラー/ヴィスタ/フランス語
原題:Je vous souhaite d'être follement aimée(英題:Looking for her)
提供:クレストインターナショナル、朝日新聞社
配給:クレストインターナショナル 

公式サイト crest-inter.co.jp/meguriauhi

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