100人以上の選手が無所属という異常事態に
日本のプロ野球以上に選手の入れ替わりが激しいアメリカのメジャーリーグ(以下MLB)。ワールドシリーズが終了すると各球団は補強のためにFA選手の獲得に尽力しますが、昨オフから停滞気味になっています。
そのため、2017年オフにFA権を取得した選手たちで今季の所属先が決まっていない選手は2月7日時点でなんと100人以上というまさかの事態に。その中には日本人メジャーリーガーのダルビッシュ有、イチロー、上原浩治らも含まれています(ダルビッシュはその後、カブスとの契約合意の報道がありました)。
いったいなぜ、MLBのFA選手市場がこんなに冷え込んでいるのか……その理由をまとめてみました。
ネームバリューはあるも、総じてイマイチな今季のFA選手たち
例を見ないほど冷え込んでいる今年のMLBのFA選手市場。そのため多くの識者がその原因を探っていますが、中でも最も多くの理由に挙げられたのは「FA選手たちの質がイマイチ」という声。
今年の主なメジャーFA選手たちの2017年成績
- ジェイク・
アリエッタ(カブス):14勝10敗、防御率3.53 - ダルビッシュ有(ドジャース):10勝12敗、防御率3.86
- 上原浩治(カブス):3勝4敗2S14H、防御率3.98
- J.D.マルティネス(ダイヤモンドバックス):打率.303、45本塁打104打点
- エリック・ホズマー(ロイヤルズ):打率.318、25本塁打94打点
- イチロー(マーリンズ):打率.255、3本塁打20打点
※カッコ内は前所属球団
シカゴ・カブスの108年ぶりとなる世界一に大きく貢献したジェイク・
その一方で、来季……つまり2018年のオフにFA権を取得する選手たちが豪華というのも影響していると言われています。
2018年オフにはブライス・ハーパー、マニー・マチャドといったスラッガーや、ヒューストン・アストロズのエースとしてチームを悲願の世界一に導いたダラス・カイケルらがFA市場に登場します。この3人は実力がある上に現時点で30歳以下という若さなので、不作とされる今オフに無理して選手を獲らず、来オフのFA選手たちに賭けようとするMLB各球団が多いのも頷けます。
MLB独自の制度「ぜいたく税」とは?
また、MLBが設定しているぜいたく税と呼ばれる制度も、今年のFA戦線を冷え込ませている原因と言われています。
ぜいたく税とはMLBの「集積分配制度」のことで、球団の年俸総額に制限を付け、それを超えた球団は超えた金額の20%分を課徴金として支払うことになります。ちなみにぜいたく税のラインとなる年俸総額の限度は2017年が1億9700万ドル(約214億7300万円)。この額をオーバーした場合に徴収される課徴金は収入の低い球団へと分配され、戦力を均衡にすることに役立てています。
2017年オフにぜいたく税を支払うことになったのはMLB全30球団中、5球団。その中には、MLBでも屈指の金満球団と言われるニューヨーク・ヤンキースとドジャースが入っていました。高額なぜいたく税を支払ったことで選手補強に使える金額が減ったというのもFA選手たちの動きを停めていると言えるでしょう。
これらの出来事が絡み合った結果、今オフのFA戦線の膠着状態を作り出していると言えるでしょう。
選手会はFA選手のみの合同キャンプ開催も検討
未所属のまま年を越したFA選手たちが多くいる中で、MLBでも間もなく春季キャンプが始まる時期に差し掛かりました。選手にとっては長いシーズンを戦い抜くために重要な期間に調整できないのは大問題ということで、MLB選手会は無所属のFA選手のみで行う合同キャンプの実施計画を進めていると現地メディアから報じられ、イチローも参加を検討していると言われています。
また、カブスとの契約が決まったとの報道があったダルビッシュ有の存在は、他のFA選手たちに好影響をもたらすことに。MLBでは大物FA選手の去就が決まると、連鎖するような形で残りのFA選手たちも動きが活発になる傾向があります。実際にダルビッシュ有の契約が決まってからわずか数日後、イチローもコロラド・ロッキーズが獲得する意向を示しているという報道が入りました。
日本球界以上にシビアな状況になっているMLBの今季のFA選手たち。ダルビッシュ有やイチロー、上原がどこのユニフォームを着ているか……注目して見てみましょう。