2月9日の開会式に先駆けて、平昌五輪の競技がスタートした。フィギュアスケートやスピードスケート、ジャンプやスノーボードなどメダルの獲得が期待される日本人選手やチームは多いが、女子アイスホッケーも「ひょっとしたら」との期待を抱かせる。
大会方式は世界ランク上位国に有利
女子アイスホッケーの五輪競技には、8か国が参加する。世界ランキング1位のアメリカ、2位のカナダ、3位のフィンランド、4位のOAR(オリンピック・アスリーツ・フロム・ロシア、詳細は文末を参照)は、予選なしで出場権を与えられた。
さらに、予選を勝ち抜いた世界ランク5位のスウェーデン、6位のスイス、9位の日本、開催国の南北合同チームが平昌五輪のリンクに立つ。サッカーやラグビーのW杯などに比べると、少数精鋭の争いということが分かるだろう。
五輪を楽しむために理解しておきたいのは、女子アイスホッケー独特の大会方式だ。
予選免除の4か国はグループAに同居し、上位2か国が準決勝へ進出し、下位2か国が準々決勝へまわる。予選グループは順位決定戦のような位置づけで、この時点で敗退する国はない。
一方のグループBは、スウェーデン、スイス、日本、南北合同チームで構成される。こちらからは、上位2か国が準々決勝へ進む。下位2か国は、メダル争いと関係のない順位決定戦へまわる。
“スマイルジャパン”こと日本がメダルを獲得するには、グループBで2位以内に入り、グループAの3位または4位との準々決勝を制することが最低条件だ。
準決勝まで勝ち上がっても、対戦相手は準々決勝を免除されている。消化試合数がひとつ多い日本は、フィジカル的に厳しい戦いを強いられるわけだ。五輪の女子アイスホッケー競技は強者に優しく、波乱の起きにくい大会方式となっているのだ。
スウェーデンとの初戦で勢いをつかめるか
グループBを勝ち抜くのも簡単ではない。
カギを握るのは2月10日の初戦だ。予選ラウンドは中1日で3試合を消化する。初戦に勝って勢いをつけるのは大事だ。
対戦相手はグループ内の世界ランク最上位のスウェーデンで、奇しくも4年前のソチ五輪と同じカードとなった。当時はクロスゲームに持ち込みながらも、0-1で敗れている。初戦でリズムに乗り損ねた日本はロシア、ドイツにも屈し、最終的に1勝もできずに大会を終えた。
現在の力関係は、ほぼ互角と見ていいだろう。15年の世界選手権では4-3と競り勝っており、昨年12月は延長戦の末に1-2で敗れている。
第2戦はスイスが相手だ。
スイスは4年前のソチ五輪で銅メダルを獲得しており、日本は15年、16年の世界選手権で合計3度対戦し、すべて敗れている。実力的にはスウェーデンと同レベルだけに、勝機を見出すことはできる。そのためにも、第1戦で勢いに乗っておきたいところだ。
第3戦では南北統一チームと激突する。
世界ランク22位の韓国を中心とした南北合同チームには、絶対に勝たなければならない。合同チームの核となる韓国には、17年2月のアジア冬季競技大会で3-0で勝利している。女子は98年から実施されている五輪に、韓国は予選を突破して出場したことがない。客観的な実力の比較なら、2大会連続出場の日本が優位に立つ。
しかし、相手は熱狂的な応援を受けるホームチームだ。これまで以上に難しいゲームとなるだろう。
南北合同チームから確実に勝利をつかみ、スウェーデンかスイスの牙城を崩す──それこそが、決勝ラウンド進出へのシナリオである。
ロースコアの攻防なら日本の思惑どおり
より具体的な戦略としては、「得点の少ない僅差の攻防へ持ち込めるか」になる。
アイスホッケーは1チーム6人の選手が氷上に立ち、20分×3ピリオドの合計60分で争われる。同点の場合は延長戦が行われ、それでもタイスコアの場合はゲームウイニングショット(GWS)で決着をつける。
GWSはサッカーのPK戦のようなものだ。リンクの中央からパックを持ち込んだ選手が、GKとの1-1で得点できるかどうかを競う。
そこで、日本の戦略である。山中武司監督が語る。
「五輪の対戦相手は強国ばかりです。ロースコアの攻防へ持ち込んで、少ないチャンスで得点をすることが大事だと考えています」
0-0や1-1の攻防で試合が進んでいけば、日本にとっては決して悪くない──そう思って観戦すればいいだろう。
相手に走り負けない体力作りに取り組んできた日本は、延長戦やGWSまでも視野に入れる。クロスゲームをモノにして、メダルを引き寄せるのがチームの青写真だ。
※OARとは
ドーピングスキャンダルにより制裁指揮下にあるロシアの選手たちに、個別に参加資格を与える救済措置により編成されたチーム。