「かぼちゃ電車」「みかん電車」などの愛称で半世紀以上親しまれる
2018年1月15日、JR東日本高崎支社は、上越線、信越本線、吾妻線、両毛線など高崎エリアで走っている115系電車の定期運行を、3月をもって終了すると発表した。
115系電車というのは、半世紀ほど前の国鉄時代に、近郊型直流電車として大量に製造された111系、113系、115系のグループに属する車両で、最初は111系が東海道本線に投入され、それまで走っていた湘南電車の新型としてデビューしたため、オレンジ色と緑色のツートンカラーが採用された。
その後、山岳路線や寒冷地向けにマイナーチェンジの上、登場したのが115系電車であり、塗装もオレンジと緑の湘南色が踏襲された。沿線の通勤通学をはじめ日常の足として活躍したので、「湘南色電車」「かぼちゃ電車」「みかん電車」などの愛称で親しまれてきた。
「国民栄誉賞」級!多くの鉄道車両に影響を与えた115系
1両につき3ヶ所にある両開きドアの車内は、4人向かい合わせのボックス席を中心としつつ、ドア付近は窓を背にしたロングシートで、中長距離移動にもラッシュ時にも対応できる設備だった(セミクロスシートと呼ばれる)。その後、多くの鉄道車両の座席配置に影響を与え、旧国鉄を代表する普通列車用車両といってもいい存在である。
国鉄時代は、湘南色のほか、横須賀線塗装(青と白の通称「スカ色」)の2種類がほとんどだった(一部の路線で独自カラーがあった)が、JRとなってからは各地で数多くのバラエティに富んだカラーの車両が登場した。しかし、人気があるのは湘南色であり、独自カラーのものも近年復刻塗装として湘南色に戻されたりしている。
「国民栄誉賞」を与えてもいいほど多くの人に親しまれた113系、115系電車も製造以来半世紀を過ぎ、延命工事を済ませたものもあるとはいえ、さすがに近年は老朽化が目立ってきた。湘南色電車は、東京駅発着の東海道本線(113系)、上野駅発着の高崎線、東北本線(115系)に関しては10年以上前までに引退している。その後、千葉エリア(113系スカ色)や信州エリアの115系(独自カラー)も相次いで引退し、首都圏で残るのは高崎エリアだけだった。引退は時間の問題だと分かっていながら、もう少しは走ってくれるのかと淡い期待を抱いていただけに、今回の発表により、ついに一つの時代が終わったとの感を強くした。
首都圏では引退イベントが開催予定も、首都圏以外ではまだ活躍予定
長年の活躍を称え、高崎支社では、様々なイベントを企画している。115系の車体に「ありがとう115系」シールの添付(1月15日から3月の引退まで)、「Thank you GUNMA115系湘南色スタンプラリー」の実施、115系電車のイラスト募集、さらに3月21日(祝日)には、専用のヘッドマークを付けた115系による団体臨時列車を高崎~横川間と高崎~水上間で運転する。席に限りがあるので、抽選により当選者を決定し、チケットを発売することになる。そのほか、115系グッズもいくつか発売し、引退を盛り上げる予定だ。
高崎エリアでの運転終了により首都圏から姿を消す115系だが、JR東日本の新潟エリアでは、もうしばらく残りそうだ。また、JR西日本、JR四国の113系、115系も今のところ引退の発表はない。また、高崎から遠くない第3セクターしなの鉄道では、観光列車「ろくもん」をはじめ全車両が115系で、昨年からは会社創立20周年を記念して、初代長野色、湘南色、スカ色など復刻カラーに塗り替えた電車を走らせている。115系ファンにとっては楽しみな路線であろう。
「ありがとう115系」ヘッドマークと車体シールの画像提供=JR東日本高崎支社