インフルエンザや感染症を食い止めろ!
インフルエンザの本格的な流行が始まりつつある2017年末、厚生労働省は、単行本の発行部数累計7100万部(2017年12月現在)を突破している人気漫画『進撃の巨人』とコラボレーションして、咳エチケットを啓発していくと発表しました。
コラボレーションでは、ポスターやリーフレットを作成。その内容は、咳き込む巨人に対して、キレイ好きのリヴァイの「指導」のもと主人公のエレン、ミカサ、アルミンが咳エチケットを実践する、というもの。
なお、厚労省は1月10日、インフルエンザの発生状況を発表しており、それによると平成29年第52週(平成29年12月25日~31日)定点当たり報告数は 17.88(患者報告数 85,976)と、前週に比べて増加中とのこと。また参考までに、昨年同時期は(平成28年第52週、12月26日〜1月1日)の定点当たり報告数は 8.54(患者報告数 41,438)で、今年の方が多いと言って良いはず。インフルエンザの感染を広げないためにも、リヴァイが呼びかけるように咳エチケットを守ることから行動に移してほしいものです。
セーラームーンにガンダム…厚労省がコラボを仕掛ける理由とは?
厚労省では、この2年ほどの間に人気漫画・アニメとのコラボレーションした啓発活動を盛んに行っています。2016年にはセーラームーンとコラボし、「検査しないと おしおきよ!!」と主人公の決めぜりふに乗せて性感染症予防の啓発。強烈なキャッチフレーズにはセーラームーン世代である筆者も驚きましたが、まさにセーラームーン世代である20〜30代女性に梅毒患者が増えているということもあり、性感染症予防や検査をより身近に考え、行動につなげるきっかけになったのではないかと思います。
その後も、マジンガーZにかけた「みんなで目指そう『麻しんがゼロ』」、機動戦士ガンダムとは「AMR対策 いきまぁーす!」と、名セリフ「アムロ、いきまぁーす!」を彷彿とさせるキャッチフレーズのもと、AMR(薬物耐性)の啓発を行っています(AMRに関しては、厚労省が国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターに委託)。厚労省に、立て続けに仕掛けた企画の意図について伺うと「感染症などの予防は、問題が顕在化しにくいので他人事になりがちです。問題意識を持ってもらうために広報をするならば、その広報をまずは見てもらわなければ意味がありません。そのために、身近なキャラクターとコラボレーションすることが有効だと考えました」とのこと。
厚労省では、啓発したい患者や関係者などターゲットを定めた上で、コラボをするキャラクター候補がターゲットとする人々に受け入れられているのか、といった検討を重ね、結果的にセーラームーンやガンダムが選ばれたのだそうです。さらに、漫画やアニメにはそれぞれファンがおり、彼らにも快く受け入れてもらえるようにキャッチコピーなども工夫したといいます。
Twitterで反響の一方、議論が起こったケースも
これらのコラボレーションの“効果”は実際にあったのでしょうか。厚労省に尋ねると、「啓発をしてから、実際に予防接種や検査を行うといった『アクション』につなげるまでには時差があります」と前置きしつつ、「Twitterでは反響があり、厚労省のアカウントでも、その他のツイートに比べてたくさんリツイートやいいね!がつき、反響がありました」と手ごたえを感じているようです。また、海外メディアに取り上げられ、WHOでも紹介されるといった反響もあったといいます。
話題となれば、一方で議論を呼ぶ場合もあります。厚労省の担当者は賛否両論となったコラボレーションもあったといい、今回の咳エチケットに関する啓発についても、「咳エチケットをしなかった人に対して否定的な反応が起こってほしくない」という懸念をしていました(もし、周りに咳をしている人を見かけたらティッシュやマスクを差し出し、優しく咳エチケットを促すような状況ができれば理想的かもしれません)。
もちろん人気漫画やキャラクターに頼らずに、それぞれの感染症を自分事として捉え、感染を防ぐために行動できることが望ましいですが、コラボレーションがなければ他人事としたまま、理解や議論が深まる機会を逃していたかもしれません。薬に副作用があるように、思惑通りではない反応があったとしても、それが理解を深めるための第一歩だと考えれば、厚労省のコラボレーション企画が意義あるものだと受け止めて良いのではないでしょうか。
参考資料:
性感染症の予防啓発で「美少女戦士セーラームーン」とのコラボレーションポスターなどを作成