2017年10月に、日本列島を直撃した台風21号により、神奈川県藤沢市の観光名所「江の島」で、ヨットハーバーに被害が出たことは、大きく報じられた。

 

一方で、島内の人気観光スポット「江の島岩屋(岩屋洞窟)」や、磯釣りの名所「稚児ヶ淵(ちごがふち)」も大きな被害を受け、現在も復旧の途上にあることは、あまり知られていないようだ。

 

江の島台風被害の象徴とも言える「第二階段」。鉄筋がむき出しとなり、波の圧力の大きさを物語っている(12月29日撮影)
江の島台風被害の象徴とも言える「第二階段」。鉄筋がむき出しとなり、波の圧力の大きさを物語っている(12月29日筆者撮影)

 

台風による被害状況と復旧工事の予定、現在開催中のライトアップイベント「湘南の宝石」(11月25日~2月18日)や初詣への影響などについて、藤沢市への取材をもとにお伝えする。

 

稚児ヶ淵レストハウスの復旧はほぼ完了

江の島の観光関連施設で、台風による被害が発生している主な施設は、島の南西部の海抜の低いエリアに位置する稚児ヶ淵レストハウス(多目的トイレ等)、岩屋洞窟、および岩屋洞窟の付帯施設である通路などだ。以下、具体的な被害の状況を見ていこう。

 

レストハウス前面道路の再舗装は完了した(12月29日筆者撮影)
レストハウス前面道路の再舗装は完了した(12月29日筆者撮影)

 

まず、稚児ヶ淵レストハウスは、建物前面の市道のブロックが波により破損し、めくれた状態になったほか、建物入口への階段の手すりや建具が壊れるなどした。同施設の所有は藤沢市で、復旧費用の約500万円は現計予算から支出。工事は、ほぼ完了している。

 

復旧工事期間中、稚児ヶ淵の入口にあたる江島神社奥津宮(おくつのみや)からの石段下には、工事用フェンスが設置され、通行止めになっていたが、12月29日正午に、通行止めが解除された。29日午後に、現地を訪れたところ、レストハウス前の道路の再舗装は完了し、男女トイレと展望デッキは使用可能になっていた。ただし、多目的トイレは、まだ使用できない状態だ。

 

レストハウスの多目的トイレは使用不可の状態(12月29日筆者撮影)
レストハウスの多目的トイレは使用不可の状態(12月29日筆者撮影)

 

レストハウスの先から岩場へは下りられるようになったが、岩屋洞窟に向かう「岩屋橋」は、高欄(手すり)が破損した状態のままで、通行止めになっている。

 

なお、江の島の入口に位置する「江の島弁天橋」と稚児ヶ淵を結ぶ遊覧船「べんてん丸」は、被害発生後、運休していたが、藤沢市観光センターに問い合わせたところ、1月1日より運航を再開する予定だ。

 

岩屋洞窟の復旧費用は1億4160万円、さらに膨らむ可能性も

より深刻な被害が発生しているのが岩屋洞窟だ。台風の直撃が高潮の時間と重なったため、波が洞窟の最深部まで流れ込み、現在、洞窟内には波に運ばれたゴミや砕けた岩などが堆積しているという。

 

また、落石防止の防護ネットがはがれたほか、洞窟内を歩く拝観者にロウソクを渡す「ロウソク小屋」も流されるなどし、岩屋洞窟の復旧にかかる費用は1億4160万円に上る。

 

被害を受けた第二岩屋内部(提供:藤沢市)
被害を受けた第二岩屋内部(提供:藤沢市)

 

さらに、岩屋洞窟の入口から岩場に下りるために設置された、鉄筋コンクリート製の階段(第二階段)は、波の圧力により破壊され、折れ曲がった鉄筋がむき出しになる被害を受けた。

 

この階段については、再設置に向け、「構造的に問題がないかという視点での検討も必要だが、壊れたときに復旧しやすい方法や、そもそも現状の位置に階段を設置すべきか含め、総合的に再設計することが必要」(藤沢市観光シティプロモーション課の木村課長補佐)であるとし、再設置する場合の工事費用は上記費用に含まれていないため、復旧費用は、さらに膨らむ可能性もある。

 

岩屋洞窟入口へと続く「岩屋橋」は、高欄が破損するなどし、現在も通行止めになっている。橋の手前から岩場に下りられる(12月29日筆者撮影)
岩屋洞窟入口へと続く「岩屋橋」は、高欄が破損するなどし、現在も通行止めになっている。橋の手前から岩場に下りられる(12月29日筆者撮影)

 

なお、岩屋洞窟の復旧予算のうち、現計予算で対応しきれない部分に関しては、12月の市議会での補正予算審議後、入札対応等行うため、工事着手は早くても年明けとなる。藤沢市観光シティプロモーション課の齋藤課長は、岩屋洞窟の復旧工事の予定について、

 

「年間で最も人が増えるゴールデンウイークまでの営業再開を目指し、補正予算が付いた後はスピード感を持って対応したい。再設計が必要な岩屋洞窟入口付近の第二階段等についても可能な限り早期の工事完了を目指す」とする。

 

岩屋洞窟の入洞料は、藤沢市の観光収入の、いわば“稼ぎ頭”であり、2016年の収入は、およそ1億8000万円に上った。2016年は、「ポケモンGO」の流行による訪問者増があったことなどもあるものの、2016年の収入ベースで単純に計算すれば、半年間、営業を休止すれば9000万円の減収となり、打撃が大きい。

 

ライトアップや初詣への影響は?

ライトアップイベント「湘南の宝石」への影響は、メイン会場の「サムエル・コッキング苑」が島の頂上部であり、台風の被害が発生した場所から離れているため、藤沢市によれば「今のところ、客足に影響はない」という。

 

開催中のライトアップイベント「湘南の宝石」(12月15日筆者撮影)
開催中のライトアップイベント「湘南の宝石」(12月15日筆者撮影)

 

初詣への影響も限定的と見ていいだろう。多くの参拝客が訪れる江島神社辺津宮(へつのみや)は島の入口付近に位置するほか、「べんてん丸」の運航が再開されれば、辺津宮、中津宮(なかつのみや)、奥津宮と巡拝し、海路で帰るルートも確保されるからだ。

 

ただし、不安材料も残る。今回、大きな被害が発生したのは、高潮時に台風の直撃が重なったのが主な原因だが、2018年以降も同様の被害が発生する可能性は否定できない。一方で、稚児ヶ淵周辺は、岩場の地形自体が観光・環境資源であることから、防潮堤の設置など根本的な対策を取ることが難しいというジレンマがある。