クルマを取り巻く環境が大きく変わってきている
2016年10月12日、トヨタとスズキから「両社の協力関係の構築に向けた検討開始」という発表がされ、自動車業界で話題を集めた。スズキの鈴木修会長が協力関係を構築できないかと豊田章一郎名誉会長に相談したという。
「EVシフト」やAIなども使った自動運転、コネクテッドなど、クルマを取り巻く環境が大きな変革期を迎えている今、トヨタでさえ自前ですべてまかなうのは難しくなっている。トヨタとマツダなどによるEVの新会社設立もその一例だ。
水面下で進んでいたトヨタとスズキの提携
そして2017年2月、トヨタとスズキは業務提携に向けた覚え書きを締結。両社がともに抱える課題の解決に向けて協業が可能な分野について協議してきたというものだった。
なお、スズキがトヨタの傘下に入るのではなく、「課題認識に基づき、両社間で公正かつ自由な競争が行われることを前提」としている。その課題とは、「環境技術」「安全技術」「情報技術」「商品・ユニット補完」とされていて、協業の実現に向け、検討に入ることに合意。その後、トヨタとスズキの協業の進展具合が表に出ることがなく、トヨタとマツダの協業などの陰に隠れていた感もある。
2020年頃にスズキがインド市場にEVを投入
検討開始の報から1年以上がたった11月17日、両社は2020年頃にインド市場向けに電気自動車(EV)を投入するための協力関係構築に向け検討を進めることで合意したと発表。この日公表された「インド市場向けEV投入に関する覚書を締結」のリリースによると、先述した課題(提携分野)のひとつとして、インド市場における電動化技術の普及についても協議を行ってきたそうだ。
気になる中身は、インド向けにスズキが生産するEVにトヨタが技術的支援を行い、さらに、その車両をトヨタにも供給するという内容。
ほかにも、充電ステーションの整備や、販売網におけるサービス技術者の教育を含めた人材育成、使用済み電池の適切な処理体制の整備、インドにおけるEVの普及、定着に資するための活動について、総合的に検討していくという内容が盛り込まれている。今回発表された背景には、インドでは、モディ首相のもと、「EVシフト」を急速に推進しようとしている動きに対応するとしている。
スズキは、すでにグジャラートの工場敷地内にリチウムイオン電池工場を建設することを決定していて、リチウムイオンバッテリーをはじめ、モーターそのほかの主要部品もインドで調達。同国においてEVを生産することにより、インド政府が掲げる「Make in India」をEVの分野でも目指すとしている。